行ってきました。
豊田市コンサートホールでのポゴレリッチさんのリサイタル。

曲目は…、

ショパン: 
バラード第2番
スケルツォ第3番
シューマン:
ウィーンの謝肉祭の道化op.26
1.アレグロ
2.ロマンツェ
3.スケルツィーノ
4.インテルメッツォ
5.フィナーレ
モーツァルト:
幻想曲ハ短調K.475
ラフマニノフ:
ピアノソナタ第2番 変ロ短調op.36

凄かったです~。
終わってみれば、異空間の音の世界だったような…。

1980年のショパンコンクールで落選させられてから、鬼才とか、異端児などと呼ばれながらも、世界的に認められる個性派ピアニストとして、根強い人気を得つづけている彼。
ラッキーにもこんな近くに、リサイタルをしに来てくれる。
どんな音を聴かせてくれるの…、期待とちょっぴり不安を抱えながらも、待ち遠しいこの日がやって来たのです。

ステージに現れた大柄なポゴレリッチさんは、燕尾服を着ていた。(ちょっと以外でした。)
楽譜を持ち、譜めくりの女性の方と共に。

ショパンバラード第2番は、以外と、驚くほどの変わった解釈ではなかった。
でも、音は独特。
吸い込まれるような音色と、嵐のような低音のうねりのコントラストが凄かった。

スケルツォ第3番。
低音のフォルテが地響きのように体に伝わってきた。
なんだか緊張感のある空間の中で、ピアノの端から端まで物凄く厚みのある響きが渦巻き、鬼気迫る感じだった。
圧倒されました。

ウィーンの謝肉祭の道化。
1曲めのアレグロで涙が出てしまった。
なんでなのかわからないけれど…。
私はシューマンのこの曲が好きで、2年前に発表会で、ロマンツェとインテルメッツォを弾いたのです。
その分、思い入れが強かったからか…。
演奏会で取り上げられることは少ない曲だけに、本当に嬉しかった。

アレグロの冒頭のfからpに移る部分があんまり美しかったから、涙が出たんだと思う。

2年前の発表会のとき、第1曲は難しく長いので、第4曲インテルメッツォに決めて、でもそれだけでは短いからと第2曲ロマンツェも弾くことにした。
ところが、このロマンツェが短く簡単なわりに、とっても苦労した。
長~い息で伸びる音にたっぷり音色をつけなければならず、発表会直前まで「この曲がわから~ん」と、悩んだものでした。

ポゴレリッチさんの音は違いました。
長く伸びる音は、消えるまでそこに意思があり…音色ってこういうものなのね…、と思いました。

インテルメッツォは、ちょっとびっくりで、フォルテ、フォルテ、ずーっと迫力あるフォルテでした。
私が弾いたとき、もっと強弱つけて歌うように随分言われたけれど。
(家へ帰って楽譜を調べたら確かにずっとfだった。最後の3つの和音だけp。)

ポゴレリッチさんの手は大きく厚みがあって、見るからに強固な音が出せそうなんだけど、その指は本当に力強いフォルテを鳴らせる。
シューマンの終曲も、凄い迫力だったわ~。

5曲ずっと感動しっぱなし。
うわ~って、ブラボーも叫びたいのに言葉を失う感じだった。

後半はモーツァルトのハ短調幻想曲と、ラフマニノフのソナタという面白い取り合わせ。
モーツァルトも既成の形式にとらわれない自由な曲だし、ラフマニノフもソナタとはいえ、楽章に途切れがなく自由で大胆な発想の曲。
どちらもインスピレーションの赴くまま…という点で共通点があるのかも。

ポゴレリッチさんの音の世界にどっぷり浸かりました。
いろんな部屋を探して迷路を歩くような、そんな気分にもなる…。
あまりちゃんと聴いたことのない曲だったので。

ポゴレリッチさんの音には、「意思ある音」みたいなものを感じました。
フォルテにもピアニッシモにも迫力があって、こちらの感情をグイグイ動かす力がある。
ピアニッシモも、綺麗で繊細な音というのでなく、何かヒヤリとさせる冷たさを感じる。

とにかく、普通じゃない。
聴きながら頭に思い浮かんだのは、デフォルメ…という言葉。

対象の特徴を誇張、強調させて表現する人物画みたいな感じ。

ちょっと滑稽だったりするんだけど、でもその人の特徴をよく表していて、一目でその人と理解できるように。

ポゴレリッチさんの音楽は何の飾りもとりはらった、音楽の奥深くにある魂そのものなんじゃないかなって、思いました。

 

アンコールのシベリウスの悲しきワルツも普通じゃなかった。

なんて、ゆっくりなワルツ…。

最後の音が消える瞬間、本当に悲しみがそこにありました。

 

サイン会があると聞いて、お姿を近くで拝見したくて持っているのに、CDを買っちゃいました。

可愛らしいボンボンの付いたニット帽をかぶり、物腰柔らかな方でした。

手をガン見しちゃいましたが、やはり大きな手、太く長い指でした…。