松村圭一郎『旋回する人類学』2023、講談社

 

 

おそらく現代人類学の本を読むことは、人文知を愛し更新したい者にとって最も最適な道の一つだろう(と思う)。松村圭一郎さんの(岡山大学に勤務中らしい)著作、『旋回する人類学』という本をほんの100頁読んだだけでも、人類学がこの50年あたりで何回も批判・継承・刷新を繰り返してきたことが書かれている。レヴィ=ストロースや中沢新一の名前を挙げるだけではもう時代遅れなのだ、彼らはクラシカルなものとして未だに再読や研究を重ねる知の偉人であって、特に「存在論的転回以降の人類学」は、人文知の最先端にあるのだろう。ホットなものとしての人類学という言い方は少し嫌だが、「人間とは何か、他者とコミュニケーションする(あるいはしたがる)人間とはどういう存在か」「他者は理解可能か」などといった「倫理学」と直接結びつく重たいテーマ、かつ伝統的な西洋哲学が必死に求め続けてきたテーマが重なるので、なるほど21世紀に生きる私たちにとって最重要な課題の一つなわけである。

 

人類学は未開と呼ばれる人々の共同体に赴くだけではない。むしろ、理系のラボや裁判所に出向いて私たち欧米由来の文化そのものにハンマーを擲つような人類学もあるとのことだ。それってすごくないですか。

 

レヴィ=ストロースや中沢新一への愛から始まって、短期間で以下の書を用意できた。

 

一つ目がさきほどの『旋回する人類学』 ……現代人類学のガイド役になればいいなと思って買った。

二つ目 『現代思想』総特集 『人類学のゆくえ』 ……安定の青土社・総特集シリーズ

 

三つ目 100分de名著シリーズ ……中沢×レヴィ=ストロースという古典の最良解説アンチョコ本(アンチョコ言うな)

 

四つ目 クロード・レヴィ=ストロース『野生の思考』 ……満を持して名著の中の名著を購入。楽しみ。未読のレヴィ=ストロースで積んでいるものがあと二冊ある。

 
他にもいくつかあり、特に、雑誌『現代思想』にハマるきっかけとなった2010年1月号の『特集レヴィ=ストロース』という貴重本を実家から持ってきた。中沢新一もたくさん積んである。が、一番の目的はこれである。
 
五つ目 フィリップ・デスコラ『自然と文化を超えて』
 
このデスコラの著作こそが、現代人類学の「存在論的転回」という潮流を生み出した、ターニングポイントとなった書らしい。松村さんの本にも紹介されてあるに違いない。訳者の小林徹さんの本を依然読んだことがあってそれもすごくよかったので、満を持して(何回言うねん)。
 頑張って1/6くらい読み進めてみたのだが、歯が立たない。実はこれ、発刊された当初からずっとほしくて、いつもお金がないないと言って優先度を下げてきたんだけど、それくらい以前から読みたかった。この本を通読するために、他の本を買っているのだ。
 
というわけで今年の人類学関連の読書は、このフィリップ・デスコラの『自然と文化を超えて』を通読するのが最大の目的。それに応じて、入門書や初心者向けのNHKブックス、そして中級レベルの雑誌や邦訳原著を読んでいこうと思う。

 

他に映画の本の話もしようと思ったがあまりに長いのでここでやめ。