レヴィル死亡後のお話。
夢の中でルヴェイルがレヴィルと再会したときの!








ふと、ルヴェイルは深い眠りから覚めた。暗闇の中、ただ独りで眠っていたらしい。
体を起こし、辺りを見渡すと、向こうから何か人影がこちらに向かってくるのが見えたが、彼はそれをぼんやりと見つめるだけであった。
向かってくる人は、紅い目と黒髪、たった今目覚めた男と同じ顔立ちの―そう、亡くなったはずの彼のクローン…彼はオリジナルであるルヴェイルの前に立ち、「よぉ」と気軽に一声かける。
生前と同じ態度で迎える。
今までならルヴェイルは彼に対して敵対心を抱いていたが、今は何やら様々な気持ちが糸が複雑に絡んでいるかのような、そんな気分であった。
顔を俯け、黙っているとため息が聞こえてきた。

「んだよ、黙り混むなよ…折角この俺が出てきてやったのによ」

そう吐き捨てるように、レヴィルは言う。

「なんだよ?まだ引きずってんのかよ、俺を殺して、補食したこと」
その問いが心に深く突き刺さる。いくら自分のクローンとはいえ、彼は自分のいる世界に"生きて"いた。同じように心を持った人間だった。
深い罪悪感が今だに自分の中から消えない。ルヴェイルはそのことで苦しんでいた。
その問いに答えられずに黙って俯いていると、問いを投げかけたもう一人の自分は黙ってドカッとルヴェイルの横に座り込んだ。
こんなに近い距離に彼がいるのは、彼を殺めた、彼を埋葬したあの時以来ではないか。
そう考えてた自分に、さらに嫌気がさす。

「…ったく、これだからてめーは…」
「…!」

隣に座った彼は面倒臭そうに言うと、急にルヴェイルの肩を掴み体を自分の方へと向けさせた。
いつものあの不敵な笑みはそこにはなく、真剣な顔でその紅の瞳でルヴェイルを見つめていた。
彼の意外な態度に顔を背けるわけにもいかず、こちらもじっと見つめた。

「俺はお前と一つになりたかった。だから補食して欲しいって言ったんだぜ?俺が望んだことであって、お前は悪くない」
「だが…」

反論するのを遮るように、彼は言葉を付け足す。

「俺の肉体は確かに失くなった。だがな、俺はお前の中で生きてる。その証拠が、その右目ってわけだ」

彼を補食してから、ルヴェイルは右目が紅く染まっていた。時にその目がたまに疼くことがある。
消えない記憶と同じように、消えない跡がまた一つ増えたような、そんな感じがして右目を眼帯で隠していた。
眠っていたため、今は眼帯を外していて、紅い瞳はさらけ出された状態である。

「あんま隠すなよ?それが証拠なんだよ、俺がお前の中に生きてるってことなんだからな」

右頬に彼は手をそっと添えて、愛おしむかのように見つめた。ルヴェイルは返す言葉が見つからなかった。
複雑な気持ちはさらに増し、どこか切らないと絡まりが解けないのではないかと感じるほど入り組んでいく。

「オリジナルである俺を…お前を殺した俺を、恨んでないのか…?」

気になっていた。ただそれだけ。

「あのなぁ…何度言えば解るんだお前は!面倒臭ぇ奴だな…」

そう声を荒げたレプリカである彼は、肩から手を離して、暗闇に包まれた空をを仰いだ。

「言ったろ、どの道レプリカはオリジナルには敵わない…ってな。所詮俺はレプリカ。大量生産を先駆けて生み出されただけの兵器。なのにお前はあの時俺を"レプリカ"じゃなく、"一人の人間"と言った。完全にアラガミ化しかけている俺を、苦しみから解放したのもお前」

「あーあ、皮肉なもんだよなぁ。レプリカがオリジナルに結局救われるとかな。どの道一つになれたわけだしいいが、本当は今すぐにでもお前の体乗っ取ってやりたいぐらいだがな」

そう彼は笑いながら言う。いつものあの雰囲気とは違う、彼も丸くなったのだろうか。前より人間らしくなったようにも思えた。
返事に困っていると、知らず知らずの間に表情に出ていたらしい。レヴィルは呆れたような顔をしながら言った。

「何言っても無駄そうだな…まぁいい、今日はこの辺にしといてやるよ」

彼は立ち上がり、ルヴェイルに背を向けて歩きだした。

「な…っ待て!」

その背中を追おうとして立ち上がろうとした。
するとレヴィルは立ち止まり、何かを思い出したかのようにルヴェイルの方を振り返り一言。

「あぁ、そうだ。カゲロウはどうしてる」

その問いにまた、言葉が詰まる。
彼には本当に悪いことをしたと、彼が自分を許しているとしてもずっと感じながら今は付き合っている。
大切なものを奪ったに過ぎない。

「また黙るか…せめてそれくらい教えろよ」

レヴィルのその言葉に押され、ようやく返事を返した。

「生きてる、お前の分まで…」

すると彼はいつものあの笑みを浮かべた。

「そうか、ならよかった。また構ってやらねーとなぁ。今度夢に出てきてやるか」

そう答えた彼の顔はどこか穏やかであった。

「さてと、そろそろ目覚める時間だぜ?起きろよ」
そう彼は言い、また背を向け歩きだした。
「ま、待て!まだ…」ルヴェイルは焦った。
聞きたいことが、話したいことが山ほどある。彼と解り合える気がしたからだ。
今からでも遅くない。彼と向き合う時が来たと感じ、ルヴェイルは引き止めよとしたのだ。
だが彼は足を止めずに言い放った。

「そうそう、うちのカラス達にもよろしくな、じゃあまた次回っと」

手を軽くあげて、レヴィルは暗闇へと消えていった。







「―ッ、レヴィ…ッ!」

ばっと、彼は起き上がった。いつもの、自分の部屋のベッドの上。
少し動悸がする。彼は呼吸を整えるためにしばらくベッドの上で深呼吸を数回行う。気付いたら、無意識なのか右目を抑えるかのような仕種をしていた。
何か疼くような、そんな感じがしていた。

「夢…か…」

夢の内容は、いつも以上に鮮明でリアルだった。
今まさに起こった事のように頭に焼き付いて離れない。
顔を上げて鏡を見ると、やはり右目は紅い。その自分の瞳を見て「…生きている、証…」と独り言を広い部屋に吐き捨てた。
一人物思いに更けていると、ドンドンと扉を叩く音と大きな声が聞こえてきた。

「おーいルヴェイル!起きぃやー依頼きてんでー!!」

ツキトの声だ。相変わらずの騒がしさには慣れたが、いい加減周りにも迷惑がかかることぐらいわかってほしいものだ、と彼は呆れる。
すぐさま彼は着替え、眼帯を手に取った。
いつもなら躊躇なくつけるのだが、今日は違った。あの夢の言葉が頭を過ぎる。
生きている証、彼は自分の中にいる。共に彼と生きていく。

「俺は…」

生きる。そう彼は心に誓った。その後、眼帯を付け気持ちを切り替える。
ようやく罪悪感が、少しは軽くなった気がしたが、やはり消えることはない。
だからこそレヴィルの分も生き抜いていこうと考えた。
それが少しでも償いになれば、という綺麗事を考えた自分に自嘲しつつも、それが存在意義の一つとなったのだ。
そうして彼は内なる部分にそのような思いを抱きつつ、いつものように依頼へと向かう。
アラガミと戦う。

もう一人の彼と共に。
というわけで京都GEオフ開催の詳細が多少決まったので報告します!

■開催日
8/1(日)

■集合時間
11:00

■開催場所
現在検討中(恐らく四条河原町付近)

■内容
カラオケでGE、お絵かき、食べたりぶらぶらしたり

また詳しく決まりましたら報告します。
参加したい!という方がいらっしゃいましたら随時ツイッタやDMにてご報告下さいませ!
急な開催となってしまいましたが、参加希望者様が多くいらっしゃったので開催することにしました。
現在はまだ仮となっています。日程も詳細もまだ決まっていない状態ですが、今のところこうなっております。
大まかな仮予定なので変更になる場合がございます。ご了承ください。

■京都GEオフ
日程:7/31~8/6の間の一日。
場所:京都、四条河原町付近。
内容:京都の観光地散策、カラオケ、随時お絵かき大会etc...

なお、今回初主宰、初幹事を務めますので至らないところも多いと思いますがよろしくお願いします。

何か希望の日時などありましたらご連絡いただければ助かります。
ついったのDMででも送ってやってください!よろしくお願いします。
その他何かございましたら随時連絡いれてあげてください。
よろしくお願いします。
続き!
















しばらくの沈黙。その沈黙を破ったのは、黒いコートを着た人物であった。
「へぇ…ホント、俺と同じなんだな」
その声を聞いて、男だと言う事が判明した。言っていることの意味はいまいちよくわからなかったが、ルヴェイルは違和感に襲われた。なぜなら、その男は自分の声に酷似していたからだ。それと同時に、何かビリビリとした空気を感じた。自分では気付かなかったが、少し表情が変化していたらしく目の前の男はクスッと笑う。
「おいおい、そんな驚くことか?お前の"記憶"は知ってると思うんだがな」
そう一言かけると、彼はケモノ道から飛び降りた。黒いコートが風になびく様子は、まるでカラスが羽ばたいているかのように。肩に乗っていたカラスは、ディアウス・ピターの亡骸に止まってこちらを見ている。
「記憶…だと?」
記憶と言う言葉に過剰反応したのか、記憶喪失者であるルヴェイルは顔をしかめ、目の前にいる謎の男を睨みつけた。やはり相手の言っている意味が分からないままではあったが、何かが自分の中で疼いている感じがした。睨みつけられた男は、困ったように頭を掻くような仕草を見せた。
「ったく、お前本当に記憶喪失になってんのか…仕方ねぇな…」
そう言った瞬間、男が急にルヴェイルの方へ向って走り出し、神機を振りかざしてきた。
すぐさまルヴェイルは神機を構え、男の振りかざした神機を刀身で受け止める。協会跡に剣と剣が交わる音が響き渡った。ギリギリと、刃が擦れる音と共に、相手から伝わってくる殺気の様なもの。ここでようやく男の風貌が少しは明らかになった。
やはり顔は分からないが、男は漆黒のような黒髪の持ち主であった。男はニヤリと口元を緩める。
「ちょっと、俺の遊び相手になってもらうぜ。それで思い出せばいいことだ」
「……ッ」
この状況はマズイ、と彼は感じていた。神機を通して伝わる男の力は予想以上のものであり、力で押されそうになる。それにこの殺気――いや、殺気混じりの狂気が、彼を襲っていた。そして記憶の奥底にある"何か"を疼かせるような…。
ルヴェイルはすぐさま男の神機を振り払い、後ろに一旦退く。正直なところ、あまり戦わずに退却したいところだがそうもいかない。表情は変えてはないが、彼は内心混乱していた。何故同じゴッドイーターである者が切りかかってきたのか、自分自身の記憶に関して首を突っ込んでくる、まるで自分を知っているかのようにふるまう目の前の男。明らかに危険であることは分かっている。
全身黒に身を包んだ男は、神機を肩に担いでこちらの様子を窺っている。実に楽しそうであるが、彼の醸し出す殺気混じりの狂気はそのままだ。
「おい、逃げる気か?せっかく俺が遊んでやるっていうのに」
「貴様…何者だ…」
「ハハッ、何者ねぇ…」
そう言った瞬間、一笑した男が目の前から消えた。そして次の言葉は、自分の後ろから聞えてきた。
「お前のこと、俺は全て知ってるんだぜ?」
「!!」
ルヴェイルはすぐさま後ろを振り返り、神機で男をなぎ払う。しかし男は軽々とその攻撃を避け、リーチの長い細身の刀身で攻撃を仕掛けてくる。それを受け止めはするものの、ルヴェイルはかなり動揺していた。
(コイツ…速い…!)
あの一瞬でどうやって自分の後ろに回り込んだのか、ということだけではなく、どうも男に攻撃を見破られているような気がすることも、その動揺の原因だった。それどころか、どことなく行動パターンが似ている感じがする。まるで自分の影が目の前で実体化して、動いているかのように。
(とりあえず…隙を作れば…)
目の前にいる黒コートの男はロングブレードを軽々と片手で振り回し、連続で攻撃してくる。やはり口元は笑っている。ルヴェイルは男の攻撃をかわしつつ、刀身だった神機を銃身に変えた。そして一度大きく後ろに下がってから、銃身を構えてバレットを放った。連射機能のあるバレットは勢いよく男に向かって発射され、爆発していく。それと同時に砂煙と床の破片が飛び散る。
男は硝煙と砂煙が口に入らないよう、口元を腕で押さえた。
「…くっ、煙幕か」
そう、ルヴェイルはわざと銃弾を足元に向けて発射した。混乱と動揺に襲われつつも、彼らしい冷静な判断だった。煙幕により、男はその場から迂闊に動く事は出来ない。これを狙っていたのだ。
「くそ…これじゃ前が見えねぇ…」
チッ、と男は舌打ちし、そう吐き捨てるように言った。その声を聞き、ルヴェイルは動き出す。神機を刀身に戻し、煙幕の中を突き進む。
煙幕が消えかかってきた時、相手の背後をとらえた。男は気付いていない。
(そこだ!)
ルヴェイルはグッと神機を握り直し、構える。その時、男は気配に気づき、後ろを振り返った。
その一撃は、スローモーションで流れていく様に見えた。ルヴェイルの神機は、男に吸い込まれていくかの様に。男は咄嗟に攻撃をかわすが、完璧にはかわしきれず、神機が脇腹付近に刺さる。その動きと同時に、深く被っていたフードが外れ、漆黒の髪がバサッと露わになる。

「…ッ!?」
銀髪の男は目を疑った。深く蒼い瞳が珍しく見開かれる。
脇腹付近に突き刺さったと思われた神機は、コートとを引き裂いただけであって、実際には体には触れていなかった。黒髪の男はルヴェイルのその隙を見て、一旦後ろへ引き下がる。黒髪が揺れ、周りにいたカラス達が鳴く。
フードで顔を隠していた男の顔が明らかになった。漆黒の髪に、瞳は紅い。何より…
「なん…で…」
ルヴェイルと顔が――酷似していた。
双子かの様に…それどころか、双子以上に顔が似ている。顔だけじゃない、声も似ている。
黒髪の男は先ほどまで着ていた黒コートを脱ぎ捨てる。脱ぎ捨てたコートば朽ち果てたアラガミの上にかぶさり、一体化する。コートの中から現れたのは、これまた同じ、ルヴェイルの服装。
「油断した、もう少しで斬られるとこだったぜ…ったく」
男は手首の関節を鳴らしながら、ニヤリと笑みを浮かべる。目の前で唖然としている、もう一人を見つめながら。
「俺が…っ、二人…?」
目の前にいる男、どうみても自分である。髪と目の色が違うだけで、顔は本当に鏡を見ているかのように瓜二つであり、この状況を冷静に捉えろと言われても無理な話である。わけのわからないモノが自分の中で暴れ回っている気がした。混乱しているのはとっくに分かっていた。だがもう、制御する事は出来ないらしい。
動悸が激しい。息がしにくい。
流石に今回ばかりは何が起こっているのか、分からなかった。
そんな様子を、男はニヤニヤと笑いながら見つめている。
「俺を見ただけじゃ、思い出せないか。まぁそんなもんか」
「何を…」
「そのうち分かることだ。あー疲れた…。おい、お前ら帰るぞ」
そう言うと、男は周りのカラスに呼び掛けた。アラガミの亡骸に止まっていたカラスは飛び立ち、主人の肩に止まり、不気味に鳴く。妙に懐いているらしく、他のカラス達は彼の呼びかけに反応し、外へと飛び立つ。男はルヴェイルに背を向け、歩き出す。朽ち果てたアラガミを踏み台にして、ケモノ道に飛び移る。
「っ、待て!!」
混乱しつつも、ルヴェイルはその男を追おうとする。すると、その呼びかけに、自分に酷似しているその男は足を止めて振り返る。赤い目のカラスと共に、彼を見下ろす。
「…あぁ、名前言ってなかったな」
何者だ、と問い詰めようとしたルヴェイル。だが問いかけるまでもなかった。彼は不敵な笑みを浮かべながら言う。
「俺はレヴィル。レヴィル・ダークネス。また遊んでやるよ」
そう言い残し、彼はバッと光の中へと消えた。
飛び去ったカラスの羽が舞い散り、自分の足元へと落ちる。
レヴィルと名乗った男は、何者かハッキリとしないまま目の前から消えてしまった。
だがルヴェイルは感じていた。彼が何かを知っていること、彼が自分の"記憶"を知っているらしきこと。あの男は、自分にとって何かであることを。
ただ――
「…何者なんだ…レヴィル…」
胸騒ぎがする。頭痛がする。
分からない、分からない。
胸をぐっと押さえ、彼は足元に落ちた黒い羽を見つめる。
これから振りかかるものにも、これからこの疼くモノの渦に飲まれてしまう事にも気付かないまま。

「俺の…何を知ってるんだ…」










「ようやく見つけた」
アラガミに喰われて穴だらけになったビルの最上階に、彼は座り込んでカラス達と戯れていた。
夕焼けに生える黒髪と黒い鳥。この街を支配した者の様に、街を見つめる。
徘徊するアラガミ達、いつものように見える光景。
それを嘲笑うかのように、彼は微笑し、当たり前の光景を見つめる。
「まさか、こんなとこにいるなんてなぁ…。よく見つけたなお前ら、よくやった」
そう言って彼はカラスを撫でる。嬉しいのか、鳥たちは彼の近くで鳴いたり、飛びまわったりしている。彼を完全に主人だと認識しているようだ。
そんな気まぐれな主人は、楽しげにトランプを混ぜ、側に置いて一枚引いた。
彼の引いたカードは――ジョーカー。それはこれからの「彼」の行き先を示しているかのようだった。
「さてと、楽しくなりそうだな…」
そのカードを口元に持って行き、レヴィルはニヤリとまた一笑した。

「これから俺のゲームに付き合ってもらうぜ、ルヴェイル」

廃墟となった街に沈む夕焼けにそう吐き捨て、彼はカードを空へと放った。
ルヴェイルとレヴィルの小説。ルヴェイルの記憶が戻る前、レヴィル初登場の話的な。














贖罪の街。
風の音が響く廃墟と化した街に、轟音が響き渡る。
何か大きなものが倒れる音と、鳴き声。
倒れたものの正体はプリティヴィ・マータ。その側には神機を持つ一人の男が立っていた。男性としては少しばかり華奢な身体をしており、肌は色白。銀髪に深く蒼い瞳。ルヴェイルという男は、ロングブレードを装備しており、超電磁ブレードを補食形態に切り替えて朽ちたアラガミに喰らわせた。肉を剥ぐ音が静かな街に響き渡る。色白な頬についた返り血を、彼はぐっと拭う。
「………」
彼は黙って、アラガミに喰らいつく神機を見つめていたが、内心では強い違和感が彼を襲っていた。
(おかしい…さっきまでいたアラガミの気配が消えた…?)
戦っている間は相手に集中していたため気付かなかったが、プリティヴィ・マータと戦闘前、もう一体巨大なアラガミの気配を感じていた。依頼にも"2体"討伐と書いてあったはずだが…。
「…逃した…?」
と、彼は独り言を呟く。勘が鋭い方である彼には悪い予感しかしていなかった。十分捕食が完了した神機を元の刀身に戻し、辺りを見渡す。現在彼は東部のビル跡の中にいる。やはりアラガミの気配は感じない。風の音がどことなく不気味に聞えるだけ。すると突然、背後から何か鳴き声が聞こえた。バッと、警戒して武器を構えて振り返ると、そこには一匹の鳥がこちらを見つめていた。
カラス―今では珍しくなってしまった鳥の一種で、全身真っ黒で目が赤い。ガァガァと、不気味に鳴く。なんだ、と彼はほっと胸を撫で下ろす気持ちにはなったが、まだ油断は出来ない。もう一体のアラガミがこのエリアにいる事は確かである。
(そういえば…教会跡には行ってなかったな)
いるならそこか…と、彼はゆっくりと歩き出した。彼の行く先にいたカラスはそれと同時にバサバサと荒い羽音を立てて飛び去った。黒い羽根が彼の足もとに舞い落ちる。その羽を見つめながら、彼は歩みを進める。

彼は終始無言のまま、協会跡へと足を進める。いくら近づいても気配が全くしない。だが、逃げたという気配は不思議とせず、何かがあるという、根拠のない勘だけが働いていた。そしてその勘を促すのが、カラスだった。飛び去ったはずのカラスが、自分が向かう方向に定期的に必ずいるのである。まるでこちらを窺っているかのように。
(何羽いるんだ…)
今では珍しい生き物になったカラスが、何故こうもこの廃墟にいるのか。今までは見たことが無かったのに。
どうも晴れない不気味なものが自分の中で渦巻いている中、西側から協会跡に入った。
朽ち果てた建物は所々崩壊している。彼は神機を構え、少しずつ間を狭めるように歩く。だが、やはり何も気配を感じないままだった。と、その時だった。
ふと、彼は歩みを止めた。物音はしない、風の吹き抜ける音。だが彼は思った、何かがいる、と。
彼の第六感らしきものが活発に働いているらしく、歩みを止めるように命令してきたような感じがした。数年間イングランドで傭兵をしていた頃も今も、死と隣り合わせであったのは変わりない。故にここ数年で第六感に一層磨きがかかってきたのだろう。
(嫌な予感がする…)
彼はそう感じつつも、再び歩み始めた。何かに引かれるように、何かに手繰り寄せられているような、そんな感じだった。

協会の内部、一番広い場所を彼は壁に寄り添うように、警戒しつつも中を覗いた。
すると、彼は目を疑った。光が差し込む協会の内部には、巨大なアラガミが横たわっていたのである。
黒い毛に覆われた体と金色のマント。そう、それは本来彼が討伐するはずだったディアウス・ピターだった。もう動いておらず、生きている気配を感じなかったため、もう死んでいるようである。
「………」
どういうことだ、と彼は思いながら、アラガミの亡骸に近づいてみると、的確に結合崩壊出来る場所を攻撃していたらしく、結合崩壊が酷い状態であった。さらに、腹部の方を見てみると何かに喰われたような、はぎ取られたかのような傷…まるで神機が喰らったかのような。
(おかしい、今ここにいるのは俺だけのはず…)
今回の依頼はツキトを連れて行かず、一人でひっそりと受けたものであり、誰にも援助を頼んではいない。やはり嫌な予感が的中したのか、と彼は感じていた。その時だった。
ザリッと何かを踏みしめる音。その瞬間人の気配が急に現れた。バッと、彼は顔をあげた。
すると、アラガミの通るケモノ道に一人何者かが立っていた。逆行で顔が見えないのもあるが、黒いコートのようなものを羽織っており、フードを深く被っているようだった。肩には黒い鳥の姿―そう、あのカラスだった。
そして右腕には…赤い腕輪。そしてロングブレードの火刀を持っていた。男性か女性かは分からないが、おそらく男性であろう。
(…こいつ…いつの間に…)
明らかに先ほどまで感じられなかった人の気配。どうやって気配を消していたのか、コイツがディアウス・ピターを討伐したのか、様々な思考が脳内で飛び交っていたが、彼はそれを抑え込んだ。
「お前…何者だ」
「………」
ルヴェイルの問いかけに、黒コートの人は反応しない。ただこちらを見つめているかのようであった。その様子に怯まず、さらに問い詰めた。
「神機を持つ、ということはゴッドイーターだな…?どの部隊所属だ」
「………」
「質問を変える、コレを殺ったのはお前か?」
そう言っても、結果は同じ。目の前にいる人物は無言のままだった。ただ黙って、こちらを窺っているような感じである。その後はルヴェイルも黙って、お互いを見つめていた。