亡国の微笑み | 日暮れて尚道遠し (旧:皐月十五ちばる)

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断捨離と運気アップを図って残りの人生を爆走する

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燃え上がる宮殿の中で、私は、自分の人生を省みた。


子供の頃、蛮族に家族を目の前で殺された。友人も、友人の家族も殺された。飼っていた羊の群れは皆奪われ、一族は滅んだ。その時に私の人生は、すでに終わっていたのだ。


独りぼっちになり、見上げた空は血の色のような夕焼け。

はるか彼方、空の上から、一人の美しい女性が私の前に舞い降りた。

その方は自分を『女禍(ジョカ)』と名乗った。伝説の三皇の一人、そんな方がなぜ私の前に?訝しげに見つめる前で女禍は言った。


「貴女は今、すべてを失った。


でも、


貴女にはこの世のすべての富と地位と栄光と快楽を授けましょう」



何言ってるの?私は両親も、家族も、羊も、友達もたった今失ったばかり、もう何もかも終わってしまったのに・・・・。


「貴女がすべてを受け取る条件はたった一つ、それは笑わないこと・・・」


すべてを失い、もう何も怖くなかった。私はその条件を飲んだ。運命は大きく変貌した。

笑顔の美しい美女は数居れど、笑顔を見せない美女。笑わなくても、私はこの世で一番美しい。


美しい私に取入る者たち、彼らを利用してあれよあれよという間に、私は王の愛妾の一人に登りつめた。

これだけでも凄い事だった。


でも、私はすべてをほしいと望んだのだろうか・・・・・?


王妃様は『申(シン)』と言う国から来た方で、気品があり、優しく、大きな心で私に接して下さった。

今は亡き母のようにお慕いし、失った家族愛に似た感情をもったのに。王妃様の愛は深かった。


だが、女禍との約束は、その甘い希望すらぶち壊した。


王は、笑わない私を寵愛し、私を喜ばせようと、王妃様をその座から引き摺り下ろし、私を王妃に立てた。

私は王妃になんかなりたくない、優しいあのお方の衣装の裾を踏みつけるような真似はしたくなかった。


そして、女禍との約束により、望まずしてこの世をすべてを手に入れた。


それが世間の怒りを買った。「申」公は妹を王妃の座から引きずり落とした私を恨んだ。

王太子も廃嫡された。国は大きくその体制の根幹を揺るがした。


私は笑わなかった。お慕いした王妃様からその座を奪い、この世のすべてを手に入れてもちっとも嬉しくない。でも、王は私の笑い顔を見たいと言った。心から笑う状態でもないのに。笑わないのではなく、笑えなくなった。


「でもあの日・・・・」


あの日、国境守備隊の兵士が間違えて『敵襲』の狼煙を上げた。国中の兵士が武装して首都に集まった。しかし敵襲は無い、兵士のポカンとした間抜け面が数万人並んだ風景を見て、ストレスからくるヒステリックな感情を止める事ができなかった・・・。


「ハハハハハハハハ」


首都に響き渡る、私のヒステリックな笑い声、王は言った、良くぞ笑ってくれた、思ったとおり、笑い顔のお前はこの世で一番美しい・・・。喜劇は悲劇へと転換した。


一度私の笑顔を見た王は、狂気に取り付かれた様に、上げてはいけない狼煙を上げ、その度に私はヒステリックに笑った。騙され続けた軍は、あきれて狼煙を信じなくなりはじめた。もう、滅びは目前にせまっていたのだ。

前王妃の兄『申公』と、昔私の家族を殺した『犬戎』が首都に攻め込んできた。

狼煙を上げても、誰も助けには来なかった。国は私の笑顔によって、滅びの時を迎えることになる。


再び女禍が現れた。

・・・お前はこの世で一番美しい、美しいお前が笑わなければ、王は国を傾けても笑わそうとする・・・お前の笑顔で国が滅ぶのよ・・・と。


女禍は私の目の前で、『九尾の狐』に変化した。

騙された・・・私は前王朝を滅ぼした九尾の狐に騙されたのだ。九尾の狐は私にささやいた。


「この世で一番美しいのは我だ、我を超える美しいお前の笑顔、国と一緒に滅びてしまえ・・・」


九尾の狐の笑い声が木魂した。私は、王の死体の傍で泣く事ができなかった。笑顔で一国を滅ぼした、笑顔のままで死んでいく。


私は『褒娰(ホウジ)』、紀元前770年笑顔を見せることで国を滅ぼした、唯一人の女。






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