是非ご覧ください
※これは修正前のものです
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『My Voyage』
私の名前は姫原愛海(ヒメハラマナミ)。
私立白萩学園の二年生。
黒いポニーテールを束ねた。
小さい頃からよく
ものもらいをしてたので、
左目に白い眼帯を付けている。
小さい頃から私はひとりだった。
両親は今はいないと言ってもよいだろう。
今は叔母さんと二人暮らしだ。
人として危ない要素はない。
陰口叩かれることもほとんどない。
どこにでも居そうな高校生だ。
なのになぜか
誰も私に歩み寄ることはなかった。
小さい頃からずっと。
だが、
別に不満ではなかった。
悩むこともなかった。
勉強にも運動にも
困ることは決してなかった。
寂しい、と感じたことはなかった。
……おそらく今日までは。
「……やっぱ落ち着く」
春の昼下がり。
退屈な5時間目の数学の授業を
サボって学校の屋上の影のとこで
レジャーシートを敷き、私は仰向けで
果てしなく広い空を自由に
舞う烏たちを眺めていた。
「烏がうらやましい。
空を自由に飛べるし……」
そう呟いたその時、
「そうか?飛んでばっかも
しんどくない?」
(……!)
私はすぐ体を起こし後を向いた。
目の前には
この学校の男子制服を着た
背の高い青年がいた。
「……誰?」
「なんだ?聞こえてたのか?」
「はあ。で、どちらさんですか?」
「平原和矢。お前は?」
「姫原愛海。平原さんって……」
(この学校にいたっけ……?)
「きゃっ」
突然、和矢は私をきつく抱きしめた。
そして耳元でこう囁いた。
「失敬なやつやな。
同じ組やぞ。それに
平原さんとか、堅苦しいだろ。
……和矢でええけん」
「あ……うん」
私の頭上で和矢がクスクスと
笑っていた。
「何がおもろいん?」
「いつもツンツンした雰囲気なのに
そんな可愛い声出すんやなって
もしかしてツンデレ?」
私は恥ずかしくて
顔を赤くすることしか出来なかった。
「なあ、姫って呼んでええ?」
「え?……うん」
――これが私のつまらない
日々と弱い自分との決別に
なることなんて思いもしないし
思おうともしなかった――
「姫も数学サボり?」
「ヒマの極みでしょ」
「俺も同感だ。正直何なん?あいつ」
5時間目の終わりまで
私は和矢といろいろと話をした。
教師の愚痴とか世間話、
ホントにくだらない話まで。
「そろそろ教室戻ろっか」
時間の流れが
こんなに速く感じたのは初めてだった。
「うん……」
――私は和矢から一つ学んだ。
時間の流れの速さは楽しい感情の
度合と反比例することを――
それから昼休みには必ず
屋上で密かに二人で弁当を
食べるようになった。
もちろん、雑談しながらゆっくりと。
――その時また、和矢から一つ学んだ。
昼御飯の美味さは
一緒に昼御飯を食べる相手に対する
思いの強さに比例することを。
そして私は和矢に対する
何らかの思いを持ったことを――
和矢は今、陸上部の主将だ。
長距離のエースで三年がいない上に
顧問がなかなか来ないのもあってか
自分にも他人にもかなり厳しいとの噂だ。
それを知ってから
私は教室の窓からそんな彼を眺めていた。
和矢もいつからか気づいていた。
時々和矢が授業中
かわいい寝顔を見せるのはそのせいか。
でも、私の前では
全く疲れたそぶりを見せてくれない。
――私はまた和矢から一つ学んだ。
人の上に立つ者が感じる苦労の値は
その人の精神力から
その人の集団の団結力を
引いたものだと。
そして和矢はその厳しさで
部を引き締めていたこと、
和矢の厳しさが和矢自身を
苦しめていたことも――。
ある夏の日、和矢は突然
こんなことを言い出した。
「なぁ、姫、屋上行かへん?」
「え?」
「行こ!」
「え、ちょっと!」
「見せたいもんがあるんや」
和矢に無理矢理引っ張られながら
私は屋上へ上った。
「見て」
私の目の前には地上では
絶対見えない綺麗な夕焼けが広がってた。
「綺麗……」
「喜ん……でくれて……ありが……と」
和矢は私の隣で突然倒れた。
「和矢!?しっかりして、和矢!」
呼んでも返事がない。
微かな和矢の鼓動が希望だった。
目の前の現実に
頭ん中が真っ白になった。
無我夢中で和矢を保健室まで運んだ。
ベッドの上で眠る和矢。
目覚める気配がまるでない。
(和矢死んじゃったら、私……)
私は10年ぶりに涙を流した。
――今でも覚えてる。
今から15年前、私の両親は
私を叔母さんに預けて
二人で出張で船でアメリカに行った。
けど、途中その船はアメリカの
大型客船と衝突して沈没。
だが、生存する可能性はあったみたいだ。
そん時の国のお偉いさんが
麻雀を止めてまともな対策打ってたら。
その5年後、そのことを知って
思いっきり泣いた。
政府に対する憎悪を自分のなかに
押さえ込むのに必死だった。
『過ぎたことを振り返るな』
いつしかそれが
私のモットーになっていた。
だが、和矢と出会って
和矢から学んでいくうちに
私のなかの何かが変わろうとしていた。
『和矢を失いたくない』
今はそれだけで頭がいっぱいだった――
「和矢……」
泣きながら彼の名を呼んだ時だった。
「お前みたいな
殻に篭った弱虫……
残して死ねるかよ」
涙で滲んでよく見えないけど
何となく和矢が笑ってるのが分かった。
「和矢……」
気がついたら
和矢を抱きしめていた。
保健室の先生は、
和矢は過労が原因で倒れたと
言っていたが、私は
和矢が目覚めたことが嬉しくて
そんなことはどうでもよかった。
一週間入院して和矢は戻ってきた。
「姫、ごめんな。心配かけて」
「何で謝んの?別に心配してないし」
「そっか。部活
あるから行くわ。じゃ」
満面の笑みで和矢は
去ろうとした。
「これだけ言うとくわ。
ツンとした姫も……好きやったけど
素直な姫のほうが……その
……もっと好きや。せやから、
ええ加減素直になれ」
「和矢……」
――私はまた、和矢から学んだ。
和矢の強さは決してもともとじゃなくて、
自分に対する素直さと真っすぐさだと。
そして私は気づいた。
私はそんな真っすぐな
和矢のことが好きなんだと――
「和矢!」
私と和矢は抱き合った。
いつもの屋上で。
――これからも
私は和矢だけじゃなく
いろんなことを学ぶだろう。
私の人生は私だけのための
『一生、勉強』の旅だ――
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いかがだったでしょうか。
皆様の心に響けば本望です。