「帰れる場所」はある。
今の私にとってはありがたいことに。
夫が亡くなってから自宅にいるのが辛くてたまらなかった。
いつもここに座ってたな。
ここに立ってこんな話してたな。
ここから見える姿をいつも眺めてたな。
もう元には戻らない日常の風景を思い出すのが辛かった。
いつもの場所が自分の居場所ではないような気がした。
夫の実家に行っても当然だけど私の居場所ではない。
みんな良くしてくれるし優しいけれど…
「帰りたい場所」とは違う。
自分の実家は「帰れる場所」ではあるけれど
「帰りたい場所」かと聞かれたらそれもやっぱり違う。
夫が亡くなった日からずっと、どこにも居場所がない。
いろんな事情があり引っ越した今も「帰りたい場所」ではない。
たぶん、きっと、「帰りたくなる場所」は…
「夫が存在する場所」だったんだと思う。
どこへ行っても、どんなに楽しかったとしても
辛い時でも悲しい時でも
家に帰り、夫と子供と過ごす空間が私にとっての「帰りたくなる場所」だったんだなぁ。
そして逝ってしまった夫にとっては私と子供が待つ家は「帰りたくなる場所」ではなくなってしまったんだね。