〈小さな贈り物〉
〈小さな贈り物〉
歩道のない道を歩くのは大したことではないと思っていた。
駐車している車の影から身勝手に飛び出す行動も、すべて歩行者であったが故のものだと今では思う。
終始、車の動きに目を配り、私は道路の端すれすれを歩いていた。多目の荷物、大学の教科書と夏用の洋服。
時間を潰してきたつもりでも、行き慣れた地元ではそうも取られなかった。駅から自宅まで歩くのはそう面倒なことではない。
まっすぐ一本道の公道はそれなりに距離はあるものの、運動不足の私にはちょうどいいエクササイズになる。両手にぶら下がったものたちが、ダンベル代わりになると考えて、まだ夏には早い照りつける5月の太陽を受けた。
行き交う車の風力と自然の力にそよぐ前髪を一々直すのにも限界を感じた。
どうせ、家に着くまでの堂々巡りが安易に想像できる。
抱え直す鞄から視線をあげると、向こう側に子どもが立っていた。
私はなびいた髪の間から彼を見る。しゃがみこんで、靴の留め具を外していた。暑いから、裸足で駆け回りたいのか。
子どもらしさに笑みを残し、私は前に向き直った。まだ、半分も来ていない。
そういえば、友達が住んでいたのはアパートだった。その近く、あの子どももそこに住んでいるのでは、と浮かんだ疑問と、事故に遭ったら大変だと思ったがために振り返った。
歩いた分の距離が足されたつもりで見た向こう側にあの子はいなかった。それよりも近くに、私の半分ぐらいの大きさの彼がよたよた歩いていた。
横断したということではなく、背後にいたことに驚いた。あ、と小さくもれた声を隠そうとすれば、彼は私と目を合わさず、その瞳さえも伏せていた。
そのままの距離感が勿体ぶっているように感じた。けれど、私も活発な性格ではない。どこへ行くの、と聞くことすらままならない私の内気さは、次第に定まらない焦点から逃げ出していた。あの信号を渡り、あちら側に行こう。
右手に見える住宅地を背に、横断歩道の前で止まった。
その時には、もうあの子は姿を消していた。住宅地に入ったのかもしれない。友達と遊ぶ約束をしていたのだろう。
私の背後に渡ったときも、方向を変えるときも、足音ひとつ届かない私の耳はどうかしていたのか。子どもならもっと、明るくてもいいだろうにと自分を棚にあげて呟いた。
ふと、母の顔が脳内によぎった。母も、私を生むときそう思ったのだろうか。明るい、優しい、笑顔が絶えない子どもになるように、まだ産まれぬ我が子を他人の子と比べていたのではないか。
信じて、願って、決意のようなものを、まだ見えていなかった未来に託す、幼き母の姿が見えた気がした。
あの子の背を、見ておきたかったと思った。下を向いて、俯きながらも前に進む弱々しい、それでも歩いていく力を、もっと焼き付けたかった。
ようやく半分といったところ。歩くスピードが遅いのは、あの子に感化されたせいだと片付けて、私は袋から覗く小さな造花の存在をひしひしと感じていた。
「もう少ししたら、その気持ちが分かるのかな」
これからは毎年、母にカーネーションを渡したいと思った、穏やかな春の日のことだった。
〈完〉
*中傷はお断りですが、誤字脱字などの注意はしていただけると助かります*
初、にして日記
小説を載せるのに、まずはご挨拶!
某大学文学部(ノットメジャー)に通ってる名雪が送るものです。
ちなみに、そういう小説サークルには入ってませんが講座は取ってます。むしろ軽音やろうとしてます(…)
こんなんですが、書くことが大好きで、物書きになれたらいいなぁ。でも無理かなぁ。
とりあえず書くのが一番!
と、思い立ったブログでの小説公開
おそらく載せるペースは激ノロです
自己満足にお付き合いいただけたら嬉しいです
ではでは、この後、初アップを致しますo('▽'*o)
