ミッションは突然に <43> | 電気自動車は仮想現実の夢を見るか?

電気自動車は仮想現実の夢を見るか?

この春から電気自動車の日産リーフに乗り始めました。この電気自動車、夢も感動もない単なる移動手段なのか、はたまた車の未来に福音をもたらす救世主なのか? 車だけでなく、日々感じたことを綴ります。ブログタイトルは勿論、P・K・ディックのあの小説のパロディーです。

翌朝、目が覚めると、まだ昨夜の酒が残っていた。
極度の緊張から解放された安堵感から、
部屋にあったウヰスキーのボトルを一本空けてしまったのだ。


とりあえず喉を潤しにレストランに行き、
深酒でガンガンする頭を抱えるように、テーブルに立肘をついてボーとしていると、
向こうから駆け寄ってくる見慣れた顔が・・・


ああっ!
ろ、六条ひとま!
貴様、なんでここに!
ワシはアドレナリンを分泌し、即座に臨戦態勢に入った。


すると六条、いきなり頭を下げて謝りだした。


「今まで私の分身が大変なご迷惑をおかけしたようで・・・
 本当に申し訳ございません
 私、六条ひとまとは別人の、二条たけしと申します。」


ええっ!
分身?
何言ってんだ?
じゃ、
な、なんで、苗字が違うんだ?


「ええ、そのあたり、私もよくわからないのです。」


はぁ?


まぁ、それにしても瓜二つだ。

で、別人の二条さんが何故ここに?


「ええ、実は・・・ 
 ここからの話、たぶん信じてはもらえないかもしれませんが、
 私もまったく同じ日程で、ドイツに来ていたのです。」


ええっ? ますます意味がわかりませんが・・・


「ですよね。
 私自身、これからお話しする事実をにわかに受け入れ難いのです。」


そこで二条氏は一息つくと、一気に話し始めた。


「実は、先ほどお話したように、

 私も同じ時期に同じルートでドイツに来ていたのです。

 私の場合、経営者の方々を海外研修に引率してきたのですが。


 と、ところが、

 今朝、目が覚めると、みんなどこかに消えていた。
 そこに、梅田さんの別人がやってきて、
 こう言ったのです。


  ここはもう一つの現実、パラレルワールドだ。
  この世界では、あなたはロシアのスパイ。
  昨夜、この世界でのあなた、六条ひとまを逮捕したが、
  我々が目を離したほんの一瞬のすきに、
  異次元瞬間移動装置であなたと入れ替わったようだ。
  あなたが気を失って寝ている間に、
  申し訳ないがいろいろ調べさせてもらったが、
  確かに、あなたは六条ひとまではない。
  一番の特徴である右腕のあざがないし、身長や頭のサイズも少し違うようだ。
  なにより、瞳の虹彩が違う。
  バイオメトリクス識別装置での照合も試みたが、結局は別人だった。
  まったくの別人であるあなたを逮捕することはできない。
  そうはいっても、このままではあなたも困るだろうから、
  我々と一緒に日本に帰りましょう。


 そう言うんですよ。
 別人の梅田さんが・・・」


そこまで話すと、二条氏は頭を抱えてしゃがみこんでしまった。



<つづく>