私の最初の恋は、今から10年くらい前のこと。
その日はキッシュが食べたい気分だった。
職場から少し離れたところにある小さなカフェにAさんはいた。
5月の暖かくて気持ちのいい陽気の中で、ちょっと遠出してランチがしたい気分だった私はそのカフェに足を運んだ。
「いらっしゃいませ」
可愛い店員さんの女の子に案内されて席についた。
カウンターの奥に立っていたのは、長髪でひょろりとした体の男の人。
この人が店長さんかな。
鋭い目元に、うすいくちびる。
横から見たら三角定規みたいに尖っている鼻。
猫背気味の背中が何だか寂しそうに見えたのを覚えている。