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                                           ( 特急あずさが松本駅ホームに入る )
午後5時18分発の特急あずさ30号の一番後ろの車両の位置には特急電車は来ていませんでした。発車10分ほど前に電車が入線したので乗り込みましたが、隣の席は下山時にずっと私の前を歩いていた男でしたので驚きました。添乗員さんは適当に割り振ったつもりだったのでしょうが偶然とは思い白いものだと思いました。
この男は弁当を注文してなかったので私が「電車出る前にホームで買ってきたらどうですか」と質問すると面倒に思ったらしく「私は数分でホームで弁当やお茶を買うという芸当は出来ないたちでして」と答えていました。「社内販売ですかね」と私が言うと「そうだね来るまで待ちます」と続けて私は「申し訳ありませんが私は弁当を頂きます」と言って添乗員が配った弁当を食べました。先日の槍ヶ岳登山で注文した弁当がひどくまずいものだったので心配しましたが、先回よりは高い弁当を注文したせいか普通に食べられてこれも一安心でした。
社内販売が来るのをずっと待っていた隣の男は途中で我慢が出来ずに「行動食でも食べるか」と言って、ザックから山小屋でもらったあんぱんを食べていました。そのほかに自宅から持ってきたらしい漬物をたべていたので驚きました。行動食は四角いポーチに入っていましたが、ソーセージとかもあってそれなりに重量があるようでしたが、そんな事も気にかけずこれを持って登山している体力には驚かされました。私よりは年齢も上で71歳と聞いて再び驚かされましたが、この人曰く「先日もお婆さんがとんとんと登山していくので話を聞いたのですが、子供の頃から登山しているというので合点が行きました。所詮登山は経験でたやすく登れるのでしょう」と言っていたのには私も納得したのでした。それに「私は登山では7・8時間歩くというのは普通にしています」と言って自分の脹脛を私に見せて「ほら、ここが登山を始めてから随分と成長しました」と自慢していました。
社内販売は電車が動き出して甲府に近くなって漸く現れました。この男は待ってましたとばかりに「ビール2本」と言うと違う銘柄のビールが2本差し出されました。私が「銘柄が違うね」と言うと「もう最後の2本です」と答えて「ビールを補充するには少し時間がかかります」とも言っていました。
 
ここで突然小太りの30代の女が現れて「おつまみをどうぞ」とその男に差し出しました。この女は途中でこの年配男と意気投合したらしく休憩の度に何かを話していましたし、最後の休憩の時には少し離れた場所で一緒に煙草をふかしていたのを見ていたのでした。女は我々の前の座席に寄りかかって男と話をしていましたが、男はつまみをもらったのでお返しにビールを1本を女に渡していました。
少し離れた座席でこの女と帰る方向が同じだというメンバーの話をしていましたが、自分に関係のない他人の話などは聞いても仕方のない事だというのが分からないようで、ねちねちとした調子であれこれ話しかけるのでした。私は嫌な女だと思いながら我慢して少しの時間を過ごさなければなりませんでしたが、ツアーではこういう変わり者がいるというのが分かりました。
電車が新宿に到着すると早々にザックを背負って、電車の一番後ろにいた添乗員のSさんとホームに先に出ていた登山ガイドのSさんに挨拶をして、午後8時過ぎの休日の混みあうホーム中を自宅に急いだのでした。
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                                         ( 休日の昼下がりのJR穂高駅舎内 )
マイクロバスは直ぐ近くの穂高の駅まで送ってくれたので下車して再びここで待ち時間が出来ました。午後4時29分発上諏訪行に乗車するまでに15分前に穂高駅に入場するということなの、約30分ほどの休憩時間がありました。
添乗員のSさんは穂高神社・蕎麦屋・土産物屋がありますと紹介して解散となりました。行くところも」無いので駅の隣にあったギャラリーに立ち寄ったのですが私好みの物は何も置いてないので仕方なく駅舎の中のベンチで時間まで休んでいました。
 
午後3時15分に再び集合して穂高駅のホームに行くと木陰の無いホームは嫌だなと思いながら電車を待っていると案外早く電車は現れてほっとしました。来るときは満員電車で混雑状況が心配でしたが電車はガラガラで安心して座ることが出来ました。考えてみれば日曜日の午後も遅い時間なのでこの時間に移動する人は少ないと乗車してから思いつきました。
添乗員さんは終点が松本ではないことに心配があって、松本駅前では車両を歩いて「次で降ります」と触れ回っていましたが、それほどに電車はのんびりした風情が漂っていました。
 
午後5時過ぎに、大糸線松本駅のホームで全員集合してから松本駅の特急電車の出るホームに向かいました。階段を上がって歩くと土産物屋があるスペースには未だ弁当が積んであるのが見えたので、今日は観光客は少ないのかなと思いました。
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                                         ( 休日でにぎわう温泉の玄関 )
一ノ沢登山口からマイクロバスで30分ほど下り穂高の町の温泉まで移動しました。これで登山は終わりだと思うとほっとして本音は温泉なんかどうでもよくて早く帰りたいという気持ちが募るばかりでした。
ツアーは全て時間通りに進めなくてはいけない団体行動なので自分の気持ちは納めなくてはいけないと思いました。
「ほりでーゆー」という温泉に到着すると、ザックは登山者用に準備されたらしい空いた大部屋に置いてくださいと言われて、その部屋にザックを投げ出してから温泉に行きました。このザックを置く部屋には既に他のツアーのメンバーらしいザックも少し置いてあったので、温泉が混んでいると嫌だなと思いながら風呂場に行きました。
しかし幸いにこの風呂場は洗い場も多くて、私が入った時には一つ空いていたので直ぐに体を洗うことが出来て一安心しました。頭から足先までの登山の汗を洗い流すと湯に入らなくてもすっきりとするのが分かるので、電車に乗る前に体をすっきりさせるというのは効用は有るものだと思うと、マイクロバスに乗っていた時の早く電車で帰りたいという気持との矛盾に我ながら笑ってしまうのでした。
大きな風呂はジェットバスがあって体を泡の出る場所に合わせても疲れるが取れるという風には感じられないので早々に出てしまいました。風呂場はこの近辺の家族の時間つぶしの場所になっているらしく、子供連れの男も沢山いたのが印象的でした。
 
風呂場を出ても午後2時過ぎで出発時間まで1時間以上もあるので困りました。最初は土産物で土産を購入してから、土産物をつぶさに一個一個を丹念に見て回っても時間はなかなか過ぎていきないので、仕方なく大きなテレビ画面のある場所で見たくも無いテレビ番組を呆然と眺めていました。
下山中に私の前を歩いていた男が私の横に来て「何時出るんですか」と聞いてきたので「3時20分には出なくてはいけないでしょう」と返事をしました。「時間は30分以上ありますよ」と付け加えると、その男は「蕎麦でも食ってくるか」と言って食堂に行ったようでした。私はその場にじっとしていると再びその男が私の横に座って「蕎麦を食べてきました」と報告したので「美味しかったのですか」と質問しても明確な返事は有りませんでした。
27名のツアーメンバーは風呂を上がってどこに行ったのかなと思いながら、午後3時20分にザック置いてある部屋に行くと大勢のおばさん連中がこのザックを置いてある大きな部屋に座り込んでいました。私は自分のザックとお土産のビニール袋を持ってさっさと外に出て、迎えに来ていたマイクロバスに乗り込みました。私は来た時と同じマイクロバスの同じ席に座ったのですが、殆どの人は自由気ままに乗り込んでいたので、私の乗ったマイクロバスにも一ノ沢登山口で乗り込んだ人とは違う人が乗っていました。
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                     ( 危ない道も沢山ありますが・・・ )
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                      ( 川音も少しは癒しになるのか )
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                         ( 清流を見ながらの下山 )
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                                                ( 木が岩を突き抜いて生えている )
下山も相当に下ると岩がごろごろする道から土の道に変わって歩きやすくなりました。その代わりに木の根っこをよけながら歩くということにもなりました。森の中なので一年中湿気があって乾いているような場所はなくじめじめとした道が続きました。その上眺望も無いので早く到着したいという気持ちばかり焦るようになったのは私ばかりとは思えませんでした。
最後にはツアーの隊列に後ろから早足の若者の10人程の2組が割り込んできましたが、結局追い抜けずそのまま下山したので、50人ほどの長い下山する列が蛇のように続くのでした。山の神が出てくると手を合わせる人もいましたが一人二人で、殆どは駆け足で歩いていました。たぶん皆そんな余裕なんかは無かったし、最終目的地点が近いというのが頭にあると、どうでもいいようなことには時間を割かれたくないという心理もあったのではないかと思いました。
 
午後1時少し過ぎて一ノ沢登山口に到着すると、最初に先ず冷たい水で顔を洗いたいという気持ちが出て、水場で冷たい水で顔を洗うとほっと一息つけたのでした。
この時ベンチにザックがずらりと並んでいるのを見た登山ガイドのSさんが「これは誰のだ・・・」と少し怒っていましたが、それは全てツアーの女性達のザックでした。
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                  ( 川沿いの坂も段々と緩やかになるのが分かります )
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                   ( 川沿いの緩やかな坂をどんどん下る )
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                                        ( 下山の半分くらい来たところ )
ツアーの隊列が3組が順番に入れ替わって歩くのですが、途中で私の二人前に見知らぬ男が歩いているのに気付きました。下山する最初から、私の一人前の男の前にはおばさん連中が並んで下山していたのですが、突然その男がおばさん連中の後ろにいたので不審に思ったのでした。一人で登山に来て途中から割り込んできたのかなと勘違いをするほどに違和感がありました。
その男は薄々そういう状況を感じたのか休憩の時に突然「ここで休憩です」と後ろを振り返って大きな声を出していました。その時、初めてその男はツアーのメンバーだったと認識した位に影が薄かったのですが、昨日は同じ部屋で寝た男でした。かようにツアーというのは他人の集合なので顔なんぞは直ぐに忘れるものだと思いました。
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                  ( 胸突八丁まではだらだら坂を下山する )
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                     ( 急坂の胸突八丁を下山する )
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                                              ( 胸突八丁を下山する人たち )
昨日グロッキーになったつづれ折れの道が終わって、胸突八丁の急坂が現れるまではだらだらした坂を下山するだけでしたが、下山で足を踏ん張ったせいか体中に汗が出ていました。そろそろ休みたいなと思ったら胸突八丁の急坂になり、そのまま胸突八丁の急坂の下りはなんのためらいもなくどんどんと軽快に下りました。登山ガイドのSさんが胸突八丁を下りたところで登山道とは反対の川の上に行ったので、どうしたのかと思ったら休憩ですと言われてやれやれという気分になりました。
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                   ( 常念岳がすっかり雲に隠れてしまった中を下山 )
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                    ( 猿がぞろぞろ下山する人を見物している )
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                                           ( つづれ折れの道が終わった場所 )
そんな登山者と下山者が行きかう狭い登山道を一匹の野猿が 我々の方を見ていました。誰かが「猿がいる」と叫んだので松の枝で休んでいる猿を見つけました。それは、猿を見たのでは無く悠然として何かを食べながら、枝の上から猿が我々を見物しているように私には思えました。
下りは4時間半くらい係りましたが、休憩は1時間毎に休み3回の休憩がありました。下りと言っても楽ではなく岩場の下山は疲れました、それで途中で考えことをしていて3回も転んでしまいました。2回は滑って尻餅でしたが、一回は前に倒れて額を軽く打ちました。幸い帽子があって直接地面に額が当たらなかったのが幸いでした。疲れがでて集中力が無くなって踏ん張れなくなっていたのだろうと思いました。滑ってからは考え事はやめて歩くことに集中したので以後は滑ることもなくなりました
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                                           ( 山小屋を出て下山前に槍ヶ岳を望む )
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              ( 下山が始まると、雲が湧き上がって周りの景色が見えなくなりました )
午前8時40分に一列で山小屋前を雲が上がってくる中を出発しました。昨日ふらふらで上がった道も下るときに見てみるとそれほどの急傾斜でもないと思い、昨日のあのきつさは何だったのだろうと思いました。それでも第一ベンチのある場所では若者がベンチに腰掛けて休んでいたので、やっぱりここまで上がるのはそれなりにきついのだろうというを再認識したのでした。
下りは朝から登山する人たちとのすれ違いで時々立ち止まりながら下山しました。一番困るのは足早に下りるてくるのはいいのですが、途中でツアーの隊列の間に入ってしまう人がいることでした。そういう中に家族連れ4人が私の後に入りこんで何時までも前にも行かないのでいらいらしました。彼らからするとツアーメンバーが邪魔に思えたのか「そのうち休憩で休むのでその時追い抜こう」と親父が言っているのが聞こえました。
又、ツアーは女性が多いせいか登山者が見えるたびに立ち止まる人がいて機転が利かなと思うといらいらしました。さっさと下れば登れるのにずっと立っているだけなので私の前を歩いていた男が「下らないと登れないよ」と声を出すほどでした。女が高速道車の運転で危ないと決めつけてついついスピードを落として渋滞を招くケースと全く同じだと思いました。
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                                       ( 常念小屋の朝食 )
午前7時45分頃には全員が山小屋に到着して朝食を食べました。
ツアーの人数が多いので遅い朝食も許してもらえるというのを添乗員のSさんから聞きましたが、食堂に行くと我々ツアーメンバーの他にも大勢の人達が食事をしていましたので、昨日の宿泊者の朝食の最後の組かとも思えたのでした。それでも件の茶髪のはきはきした女が食堂を取り仕切る年配の男に「3人追加になったと聞いたけれど私は知らないよ」と言ってからその場を離れて、しばらくして再び食堂に現れて「3人分何とかなりそうですか」とも言ったのを聞いていると、食材も結構厳しく数を数えているんだというのを感じたのでした。
食堂に入ると添乗員のSさんから入り口当たりの場所を指定されて座りました。座ったものの目の前の朝食を食べられるかどうかと不安がありました。というのも私はきつい運動をした後では食欲が無くなるし、固いものは喉を通らないという体質なので不安な心持ながら茶碗のご飯を一口口に入れました。口に中ではぼろぼろに感じられるご飯も何とか胃袋まで入るのが分かりました。恐る恐る少しずつ柔らかそうなおかずから口に入れて、名前は不明でしたが固そうな硬そうな甘露煮は最後に残しました。2時間半のきつい登山の後に食べることが出来て自分自身は登山に少しは慣れたのかという感想を持ったのでした。
 
私の目の前にはツアーの女性陣が3人座っていました。私は女性はお婆さんばかりかと思っていたら、3人のうち2人はまだ20代後半の年頃に見えておやっと思い認識を新たにしました。個人の集まった登山ツアーなので誰がいようが私には無関係でしたが、新宿で集合した時はお婆さんばかりの姿が目立っていて若い人は見えなかったし、何といっても女性が16人もいるので訳が分からなくなるのが当然だと思いました。
食事が終わり部屋に戻ってペットボトルを取り出してトイレの手洗いと洗面所で兼用する水の蛇口から水を詰めてからザックを整えて山小屋の外に出ました。外に出ると雲が上がってきてあっという間に常念岳が見えなくなりました。当然常念岳の頂上も雲の中で何も見えない状態になったと思います。山の天気の変わりやすさを肌を持って感じることができました。