【再スタートのはなし】


芸能学校を辞めて、アルバイトとして入った『印刷会社兼、広告代理店』で準社員として4年間も働いたのは、年の離れた大好きな友達が2人出来たことと、そこで働く愉快な人達にとても愛されたからだと思う。


平日5日勤務、まるで学生の様な生活だった。

ここでも毎日ゲラゲラ笑い話をして、よく上司に叱られた。


会社からの帰宅は初めて出来た彼の家。

夕飯をゆっくり作って、遅くまで働く彼をTVやゲームをしながら待っていた。


彼とは2年付き合った。

誰からも好かれる優しい人であり、6つ年上だったから結婚を真剣に考えていた。

「ザ・普通」の感性の持ち主の彼は、私のおかしな言動にいつも納得いかないご様子で

私は自分の性格を認めて貰えない!と度々怒りが小爆発を起こし、やがて戦争になった。


小さな戦争が終わりを告げた時、また演技の勉強を始めた。

地元近辺で劇団附属の養成所を見つけ、即応募。

簡単なオーディションを受けて即入学。


また再スタートした。


半年後に劇団への入団試験が受けられ入団。

トントン拍子で事が運んだように思ったが甘くはなかった。


半年に1度舞台のオーディションがあり、その間は実のないレッスンを受ける。

そのオーディションに受からず舞台に立てない。

「ここで役がもらえない様なら、どこに行っても駄目だ。」と嫌味を言われ続けた。

要はオチコボレだ。

その劇団は大手のスポンサーが付いており、ミュージカルや舞台のお手伝いが出来る。

近くでなまの、有名な役者さんや舞台に関われて外部のオーディションも受けられた。

それを餌に生かさず殺さず、永遠に飴と鞭を与え続け、皆辞めたいのに何故か辞められない…

一つの王国のようだった。そして私はド貧民。。


このままじゃ永遠に進歩がないまま、人生が終わってしまう!どうすれば良いのだろう?


私が半分腐りかけていた時、とても気の合う仲間が出来た。

彼女は「ここで駄目だから、他所でも駄目なんじゃない。世界は広い。ここで認められないなら、他所に行くんだ。」と何度も力説し、本当に超難関の劇団に合格し羽ばたいていった。


格好いい!彼女は私の小さな世界を広げた。

彼女の言動は、この時からずっと私のエネルギーになってる。


そして私も、絶対無理だ無謀だ!と言われた「俳優・声優」事務所の養成所に入学。

2年半いた王国を脱出した。

彼女との出会いが無ければ、今もその小さい国の中で互いを非難し合っていたかもしれない。



それからは世界がガラリと変わり、一日一日がとても大切になった。大きく進歩した。そして沢山の技術を吸収していった。


今度は得手を伸ばそうと、半年で声の技術を身に付け、クラスのトップ3には入るようになり、それから全クラスの1番…いつの間にか特別待遇生徒(奨学金生徒のようなもの)になっていた。



それでも私はまだまだ自分に自信が持てず苦しんだ。


毎日、多分誰よりも努力した。


でも技術が身に付いても感情が伴わなくなっている。


感情はどこへ消えたのか?


先生が言ってること、求められていること、更には自分の感情がわからない。。


何を目指し、何のためにここまで来たのだろうか?


全然楽しくない。毎日苦しい。戻りたい。。毎日笑っていたあの頃に戻りたい。


でも逃げたくない。何から?何から?


ほとんどノイローゼだった。


【レッスンのはなし】


総合芸能学校と言っても大きいところではあるが、その頃はあまり有名な人を輩出しておらず


現場ではナメられ(馬鹿にされて)てマネージャーが大変そうだ…と入学して3ヶ月位したら誰もが気付くような所だった。


レッスンは基本科目を一つ受ければあとは自分の好きな科目を選択出来る内容で


私はとにかく得手より不得手を強化したくて体力重視の科目ばかり取った。


クラスメイトは当然、筋肉馬鹿な連中ばかりで元気元気!


先生も元気!汗だくで笑いながら演劇要素を取り入れつつの体力作りをした。


小さい頃から周りからズレていた、感性が違っていた私が受け入れられ、むしろ普通を求められない、居心地の良い所だった。



基本科目の演技レッスンは年齢層や経歴の幅が広く、子役から上がってきた子や他の事務所と兼任してる子、年上がほとんどで同級生と言えどレベルが違い、ついていくのがやっとだった。


今でもよく覚えているのが皆の前に名前を呼ばれた数人が出て、先生が言った物になるという即興エチュード。「ペンギン」とか可愛いのは良いけど、「ゴキブリ」が一番イヤで一番簡単だった。。


半年毎に発表会があり、その後すぐに全生徒の成績発表もあり、だいたい下の方に名前があった。


それでもオーディションの話は毎日のようにあって、仕事をすることで成績やクラスが上がるようになっていた。


エキストラの仕事がほとんどだったけどTVの仕事ばかりで、その裏側や自分のやりたい事との違いに戸惑い、だんだん仕事を断るようになっていった。


「私はTVの顔出しをしたいのではない。今いる事務所じゃ、自分の本当にやりたいことが出来ない!」


ちょうど高校を卒業する頃に事務所も卒業した。


出来るだけ素直に、心のお掃除をします。



【学生の頃のお話】


高校生になったばかりの頃


母が新聞の切抜きを持ってきて「あんた、ここのオーディション受けてみなさい!」


と渡された『総合芸能学校』に入学した。



子供の頃からラジオっ子だった私が『声』の仕事を意識したのが中学生の時。


一度も自分から言ったことが無いのに、なぜかみんな私が「声優」になるんだと思っていた。


アニメは好きだったけれど、その頃はどちらかというとお笑いが好きだった。


「ダウンタウン」に「ドリフターズ」に「ウッチャンナンチャン」


友達と毎日くだらないこと言って、朝の登校時間から帰宅までずっと笑い転げていた。


何でもやってみたくて、でも何にも出来なくて色んなことをしてみた。


多分、お昼の放送をしたことで決定付けたのだと思う。


何を話したのか今じゃ何にも覚えていないけど、放送が終わってクラスに帰ってきたら


クラス全員、担任の先生も「すごく良かったよ~」と褒めてくれた。


ということで、短絡的な私は「イケる! 役者になれたら毎日楽しいし、お金にも困らないし、未来は安泰だ」と思っていた。



それから晴れて高校生としての生活を送りつつ、芸能学校にも通い、プラス空いた時間にバイトもしていた。


毎日忙しかったけどすっごく楽しくて充実していた。