逢えなくなってしまってから、ずいぶんと月日がながれてしまいましたね。

お体に変わりはありませんか。


貴方と最後に逢ったあの日から、一通の手紙も電話もくださらなったのは

貴方が今現在幸せで、私のことなど思い出す必要がなかったから。

そう思っています。


あなたは幸せだったでしょう。


けれども私は毎日のように貴方を想い、毎日のように泣いていましたよ。

それは恥ずかしいことでしょうか。

貴方を愛していたから故の、涙だったと自分に言い聞かせてはハンカチをぬらしていました。


貴方は私を想い涙することはありましたか。





毎日泣いていた私も、最近はもう貴方を想い泣くこともなくなりました。

私にも幸せが訪れたからです。

貴方は不思議に思うでしょう。

自分を一途に想い愛していた女が自分無しで幸せになれるはずがない。

貴方はそう思っているでしょうから。


私はそんな弱い女ではありませんよ。

少なくとも、貴方無しでは幸せになどなれない、そんな考えは持っていません。

そう。あなたと二人で愛を育んでいた時でさえ。


これは当てつけでもなんでもなく、事実を語っているまでです。


私には子ができました。


貴方の知らない男と恋におち、貴方が幸せをかみ締めている間、私も新たな幸せを掴んだのです。

驚きましたか。


私は貴方になんの未練も情もありません。

貴方は貴方で生きてください。

同じように、私は私で生きてゆきます。大切な旦那様と、愛娘の三人で。


この手紙は読み終わったら燃やして灰にしてください。

貴方の奥様にこんな手紙を見つけられたら、貴方の幸せが音もなく崩れてしまいますよ。

貴方のことだから、私のことなど奥様にお話になっていないでしょう。

私は貴方のお荷物の一つなのですよ。

この手紙を燃やすと同時に貴方の中の私も燃やしてください。重荷を下ろして幸せになってほしいからです。


そして、どこか街の中で出会っても、街灯の下で呼び止めたり、お茶に誘ったりしないで下さい。


私と貴方は、一つの点と点に戻ったのですから。

もう一つの線で結ばれてはいないのですから。





煉瓦の石畳の道も雪を被るようになりました。

お風邪など引かぬよう。



敬具

行き場を無くした思いをここに綴ろうと思います。


何かを感じる、感じないは貴方の心しだいです。