お身体が弱いと謂うのに、今日は気分が良いからと謂って、貴方は軒先に出て流れ行く雲を見上げていました。

今日はお天気も良く、薄水色に恵まれた空に、ぽつりぽつりと浮かぶ雲がなんとも気持ちよさそうでした。


私は日向で温かくなった貴方の横に座り、同じように晴れ渡る空を見上げました。

とても幸せな気持ちでした。


貴方が身体を壊したのはもうかれこれ数年前。

身体を壊すまでは、日曜になると屋根に昇って瓦の修理をしてくれたり、庭木弄りをよくしていました。

仕事場で突然倒れたと聞いて病院まで駆けつけたところ、お医者様から病状を聞いて私は心臓が止まる思いでした。


末期癌だ、と。


まだ医学の発達していない時世でしたし、入院するだけのお金もありませんでしたから、一先ずは安静に。

そして、お医者様から頂いたお薬を続けて飲むようにとのことでした。


あれから何度となく病状の悪化と回復を繰り返し、奇跡的にも貴方はもう数年もこうして生きてくれています。

幾度と無く覚悟を決めた私の決心を何度も裏切る貴方に、これはもう、神様があなたに生きてもらいたいに違いない。

そう思うようになりました。

いつ途絶えるかわからない命です。だけどこうして確かに私の横で波打つ心臓の音は存在するのです。


貴方には良く晴れた空がとても似合いますね。

少し痩せてすっきりとした横顔が、青空にむかってそっと微笑む瞬間が私は好きでした。

その貴方の目にはきっと、生きることを赦してくださった神様が見えていたに違いありません。