令和5年(2023年)2月13日 第589回

文庫本4冊購入、堂場瞬一「夢の終幕」(書き下ろし)、下村敦史「ビィクトリアン・ホテル(単行本は2021年)、早見和真「ザ・ロイヤルファミリー」(単行本は2019年)、小杉健治「風烈廻り与力・青柳剣一郎 61巻、桜の下で」(書き下ろし ・・・60巻が無い、買い忘れだ)、 Oさんから単行本の相場英雄「覇王の轍」を借用。 5冊とも読み応えがありそうだ。

 

欧州ツアーは川村、星野、岩崎亜具里が予選落ち。 蝉川泰果だけが決勝戦へ。 結果は予選通過70人中、60位(5千€)だった。 PGAは松山が決勝へ、しかし、29位(137千$)に沈んだ。 アジアンツアー(オマーン)は予選通過78人、日本人は岩田だけが予選落ち、金谷、久常、香妻、木下、谷原、稲森、比嘉、大槻、堀川の9人が3日以降もプレーを続けている。 ・・・驚いた、金谷が海外初優勝!(360千$)、以下、久常・木下が7位タイ、比嘉13位、香妻・谷原が17位タイ、稲森43位、堀川52位、大槻62位と健闘していた。

 

 

香納諒一「新宿花園裏交番 坂下巡査」(単行本は2020年、図書館から借用)

四谷中央署管轄の「新宿花園裏交番」は、新宿ゴールデン街近くにある。 だから、どうしても酒絡みのトラブルが多い。 坂下浩介巡査・27才はトイレ掃除をしていた。 先程、タクシー運転手と口論になっていた泥酔した会社員が事情聴取の最中にゲロしたのだった。  所長・重森は60才近いベテランでこの交番勤務は自らの希望で、もう、20年以上になるらしい。 重森所長は、主任山口・30才と、ゴールデン街から歩いてきて交番の前で倒れている巨漢なサンタクロース姿を起こそうとしているが、二人じゃ手を余しているようだ。 浩介は助勢を求められて、三人で何とか交番に運び込んだが、しかし、被った赤い帽子を脱がせるとベッタリ血がついている。 →救急車を呼べ、と所長が叫ぶ。 同時にサンタの耳に、→大丈夫ですか、聞こえていますか、と呼びかけるも応答が無い。 そんな時に、一番若い内藤・20才から応援要請が無線で届く、→女二人の猛烈な喧嘩です、手が負えません、坂下さん、来て下さい、片方は金を盗まれたって喚いています。 重森所長から指示された、→行け、本当だとすれば強盗事件だ、こっちは救急車が来る。 浩介が自転車で現場に着くと、片方はマリ・20代、片方は早苗・40代の女が甲高い声で喚いている。 →あいつの居場所を教えなさい! →何も知らないわよ、トオルとは無関係だから! 何だ、痴話喧嘩の男の取り合いか、と浩介は思ったが、早苗が、→私のお金、12、700万円アイツに取られたのよ、取り返して、私の全財産! 昔の男だった彦根沢徹よ、今は別れているけど!と叫んでいる。 →私の部屋の窓ガラスを割って侵入してクローゼットの金庫から盗んでいったの、と言うから、浩介は、→そんな大金を部屋に隠していたんですか、と訊き返すと、マリが、→そうよ、その女はお金フェチなの、毎晩素っ裸になってお金の上で寝転んでいるのよ、早苗さん、そうよね、と言い切った。 マリを内藤に託し住所・フルネームを聞いておくように指示して、早苗の部屋に確認に行った。 徒歩10分、三階建のマンション1階の奥から二番目、中村早苗の名前が集合ポストにあった。 成る程、ベランダのガラスが割られている。 クローゼットの中に金庫があった。 →一時間半前に無くなっているのに気付いて徹の部屋に飛んで行ったの、けど留守だったのでマリのマンションに向かったら丁度マリが帰って来たの、昨日の朝、お金を確認してから店の子と泊りがけで伊豆の温泉に行ったの、今日のお昼に戻って来たの、徹は先週ここに泊めてやったから金庫がある事を知っているの、借金取りに追われて逃げ込んで来たから可哀想になっちゃって・・・ 伊豆に行く事もその時話しちゃったし、前はつき合っていたのに酷いじゃない、けど、どうやって金庫の四ケタ番号を知っているんだろう? 絶対メモしないし、一週間毎にと番号を変えているし、例えば実家の番号下四桁、次週はその逆とか、本人以外には絶対わからないもの、鍵だってこの通り、部屋の鍵と一緒に肌身離さず持ち歩いているし、と彦根沢徹が犯人と断定出来ない事も言い出してきた。 ペンライトで金庫を照らすと上蓋の部分に真っ黒い粉が付いている、早苗は、知らない、そんなモノ初めて見たと言う。 管理人はすぐ隣にいるので呼んでもらった。 上品そうな押塚という老人で70才前後だろう、浩介の問い掛けに、→手前の部屋は20代のOL、奥は40代の会社員の方ですよ、よ飄々として答えていた。

 

浩介に警電が響いた、荒木町のマンションで彦根沢徹・32才イケメンの死体が発見され、10数枚の一万円札も発見されたという。 共謀者と仲間割れして殺されたのだろうか?  しかし、部屋から出てきた万札の指紋は、鶴田昌夫・27才、暴力団・仁英会の準構成員で通称・ツル、傷害事件で執行猶予中の男だった。 先程、早苗が頼んでトオルの行方を捜していた相手だった。 早苗が悲鳴を上げる、→まさか、ツルちゃんがトオルを殺したなんて! 刑事は、鶴田から連絡があったら知らせるように、と早苗に言い聞かせている。

 

早苗のマンションに戻って自転車を引き取りに行った時、家主の押塚さんから、→中村さんの友人はやはり亡くなっったんですか?と聞いてきたが、ベラベラ喋る訳には行かない。 そこにマリが小走りで寄ってきて、大家の押塚さんと親しく挨拶を交わしていた。 大家さんが部屋に入ったので、浩介は尋ねた。 →随分親しいんですね、→優しいの、早苗さんの所に来た時に何度か会っているし、房総で自殺した子の部屋を安くするからこっちのアパートに引っ越してこないか、とも誘われていたし・・・ 早苗とは喧嘩をしていたがホントは親しい間柄らしい。 同じ店に勤めていて伊豆旅行も一緒に行った仲だと言う。 浩介と同じ27才だった。 彦根沢徹はダメ男で働くのが嫌い、楽して生きて居られればイイというタイプだとも教えられた。 クラブやキャバクラを転々として、賭け事から抜けられなくて相当な借金もあったみたいである。 しかし、ツルちゃんはイイ奴で、早苗さんも信用しているから事情を打ち明けてトオルを捜してくれるように頼んだんでしょ、早苗さんは冗談で皆に言ってたの、お金が出来たら裸で毎晩その上を転げ回るって、だから、ホントに1,200万円だなんて知らなかったし吃驚したわ、店の誰もがそう思っているわ、と状況を教えてくれた。

 

交番に戻ると、巨大な男と痩身な女が並んでいた。 サンタの服を来ていた男性の身元が判った、長峰安男さん、西新宿の児童養護施設「みずいろ園」を運営している方だった。 彼女が名刺を出して、→みずいろ園の身延と申します、事務長です、と名乗った。 待ち合わせの場所にいらっしゃらないし、携帯にも出なくて、そうしたらこちらの方がサンタの服を着た男性がこの交番から救急車で運ばれたって教えてくれまして、と隣の巨漢に振ってくれた。 →私は渡辺宗雄、二丁目でバーをやってます、で、ゴールデン街のダチから情報があったので、見延さんに連絡したの、あのサンタの服はウチの店用で毎年貸してあげてるの、園長さんが昼前に来てパーテイに出られない子の為に病院に緒見舞いに行くと言ってね、と言う。 →鈍器のようなモノで頭を殴られて気絶していました、鞄とか財布とかお持ちでしたか、と重森所長が尋ねると、見延事務長が顔色を変えた、→銀行で50万円ほどおろしている筈です、と答えた途端に、奥の部屋で防犯カメラを確認していた山口主任が、→見付かりました、と興奮して出てきた。 公園の四季の道をあるいている大柄なサンタの服を着た男に、20才代の小柄な男が、帽子を目深に被り、マスクで顔を隠したジャンパーにジーンズ姿が襲い掛かった瞬間の画像が残っていた。 黒い鞄を奪おうとするが、園長先生は懸命に離さない、男はジャンパーのポケットから特殊警棒もどきの武器で長峰の頭に振り下ろした、2回、3回、耐え切れなくなった園長先生から鞄を奪って風林会館の方へ走り去った。 浩介は防犯カメラの端に映った男を見て愕然とした、そういう様子を悠然と眺めていたサングラスの男は、西沖達哉ではないか、高校野球部の監督だったが、イキナリ、辞めた理由を一切せずに姿を消したのだった、この引ったくりと何かの関係があるのだろうか? ・・・引ったくり男は直ぐ捕まった。 タレ込みがあって警官がフリーターの部屋に向かうと、何者かに縛られて猿轡をかまされた状態で黒い鞄もお金も50万円入っていたそうです、32才のフリーターは、街金の自動契約機から長峰さんを襲ったそうです、見延京子が、→銀行ではなく、街金ですか、と驚いている。 病院に向かう前に本書に一緒にお出で下さい、街金の明細や、現金を確認しましょう、と同行してもらった。 いったい、誰が捕まえたのか、何故、タレ込みしてくれたのか、園長先生は銀行ではなく街金というのは本当なのだろうか? まるで謎だらけである。

 

重森所長から指示されて、中村早苗の様子を見に行ったが、インターフォン越しでしか顔を見せない。 ちょっとでイイんです、顔を見たら帰りますので、といっても何かとグズグズしていたが、やっと、ドアロックを外した。 早苗の背後を盗み見ると、テレビがついている、缶ビールが二本、グラスもふたつある。 誰か来ているのだ、警官に見られたくない人が、と気付いた途端、男が一人飛び出した、ごつい、大きな男が部屋の奥の引き戸へ走る、スポーツ刈り、太い首、顔は見えなかったが、浩介は叫んだ、→鶴田、鶴田だな、お前は! 早苗に行く手を塞がれた、凄い顔で睨んでくる、→ごめん、ツルちゃん、逃げて、→鶴田、逃げるナ、お前が徹を殺したのか、→俺じゃない、オレが言った時、鍵が掛かっていた、奴の部屋には俺は入っていない、→お前が犯人じゃないのなら逃げるナ、警察にキチンと説明しろ、と怒鳴るが、早苗が後から抱きついてきた、→待っておまわりさん、ツルちゃんはやっていないから、信じて! そうこうしているうちに鶴田は、警察なんか信用出来るか!と浩介に投げ付け、ベランダから飛び下り、マンションの塀を乗り越えてしまった。 浩介が玄関に向かおうとすると、早苗はドアに背を向けて必死に立ち塞がる。 →私のお金はもうイイから、だからツルちゃんを追わないで、ツルちゃんはやってないワ、あの子、怯えているの、警察から疑われている、組や店に警察が来て鶴田を引き渡せ、と脅しているって、動転しているのよ、匿って欲しくてここに来たのに、お巡りさん、ツルちゃんを助けてあげて、と涙ながらに浩介に訴える。 その時、ノックがして、→俺だ、いないのか、ツル、と10年前、二年間聞き続けてきた声がする、浩介はフラフラと立ち上ってドアを開けると、昔の儘の西沖がいた。 瞬間、警戒したヤクザ者の顔になった、→監督、と浩介が呟くと、サングラスをしていない剥き出しの目が気まずそうに瞬きし、気弱げに目を逸らし、体を翻して急ぎ足で遠ざかる。 →待って下さい監督、鶴田昌夫とはどんな関係なんです? あなたの舎弟ですか? 逃げないで下さい、また、何も言わずに俺の前から消える積りなのか! 声を張り上げると、やっと、→ツルは何もしちゃいない、このマンションに住んでいた女が一昨年自殺した、その女の事を調べて見ろ、と言い捨てて車で去って行った。 鶴田の身柄が確保されたが、俺はやっていない、の一点張りでそれ以外、話さないと知らされた。

 

自殺した女のフルネームが藤木奈美であることが判った。 短大卒業後、東京のデパートに就職し、三年後、外房の海に身を投げたのだった。 木沼智久と付き合っていたが、別れたアトもストーカーされていた、ネットに写真を公開するとリベンジポルノの被害も伺わせる訴えがされていた。 しかし、木沼は相当数際どい写真までネットにUPした、その一週間後に彼女は命を絶った。 だが木沼は写真はUPしたが動画はしていない、とず~っと否定し続けていた。 それで盗撮されていないか、と部屋を調べたが何も発見されなかった。 恐らく木沼が持ち去ったのだろうと、証拠探しをしたが無駄だった。

(ここまで全339ページの内、81ページまで。 中村早苗の部屋には盗聴・盗撮機が仕組まれていた、それによって早苗の熟睡の時に金庫の鍵を複製し、黒い粉で4桁の暗証番号も確認し、一泊の伊豆旅行の充分な不在時間を狙ったのだった。 とすると、一昨年、自殺した藤木奈美の動画も盗撮されたのか、一体、誰が・・・ 犯人は意外な卑怯な二人組だった、浩介と同じように考えていたのが西沖だった)

 

(ここまで5,200字越え)

 

令和5年2月13日(月)