令和4年(2022年)12月27日 第580回

約3年振りのマアジャン、+2だった。 飲食・卓代が20だったから、実質+7である。 よって来月の参加も約束させられてしまった。 我が小遣いで賄いきれなくなったら、ごめんなさい、と言って退くしかあるまい。 そんな和やかな付き合いの仲間である。

Oさんから新刊単行本2冊借用。 柚月裕子「教誨」、堂場瞬一「風の値段」、図書館から単行本1冊・文庫本1冊を借用。 これで正月が持つかなァ。 ・・・全部読了した。 よって、文庫本4冊を購入した。 山口恵似子「ゆうれい居酒屋② スパイシーな鯛」(書き下ろし)、山本文緒「自転しながら公転する」(単行本は2020年)、小野寺史宣「まち」(四六版は2019年)、中山七里「騒がしい楽園」(単行本は2020年)である。 これで正月明けまでは大丈夫だろう。 

 

 

小杉健治「邂逅」(2021年書き下ろし文庫、U内科より借用)

・・・邂逅とは、思いがけず出会う事、の意。 さて、この題名がどんな物語になるのか。

志賀川真二と詩緒里(旧姓・城野)夫婦の「離婚式」に、函館迄の航空券とホテル宿泊券共に招待状が送られて来たのは、7年前の結婚式に出席した友人、親友の鶴見京介(東京、柏田四郎法律事務所の居候弁護士)、井原正人(埼玉・笠間市の陶芸家)、増岡(札幌)と、詩緒里友人の笠原めぐみ、田所美樹の5人だった。 函館市内・柳町のイタリアンで会が始まったが、志賀川が集まってくれたお礼を皮切りに、→二人は7年間の結婚生活を経て、先日、離婚届を提出した、と切り出した。 →全て俺の不徳の致すところで責任は一切俺にある、この7年間、俺は幸せだった、詩緒里さんに感謝している、これから別々の人生を歩むことになるが、君達との友情は変わらない、これからも同様に付き合って貰いたい、と深々と頭を下げ、傍らの詩緒里を促した。 詩織里が会釈をして、→私は志賀川から城野に戻ります、まさか、このような形で終わるとは想像もしていませんでした、半年前までは本当に幸せでした、半年前に二人の間にヒビが入り、割れてしまいました、改めて新しい門出を大事な方々に見届けて頂きたく、このような会を催させて頂きました、と深い悲しみを堪えて言った。 乾杯してくれと言われて、京介が難色を示していると、増岡が、→よし、俺がやる、二人が前向きになっている証拠だろ、これからも俺たちは友人であることに間違いない、二人がイイ人生を歩めるように、ここにいる皆の未来も明るいものであるように、乾杯! と全員で唱和し合った。 会食が始まったがまるでお通夜如きの昏いモノだった、それを見越したかのように志賀川は、→別れる理由を恥を晒すから聞いてくれ、俺を非難してその分、詩織里さんを守ってやってくれ、離婚の原因は俺の女性問題だ、銀座のクラブの女にどうしようもない程、惹かれてしまった、このままじゃ、詩織里さんを不幸にしてしまうと考えた結果だ、実はその女には金銭面でかなりな援助を受けている男がいてオレが横取りする事になる、と言った途端に、遅れて来た井原が志賀川に掴み掛った、→きさま、よくも詩織里さんを傷付けるような真似を・・・、一生守っていくという硬い約束を忘れたのか、と、憤怒の顔付きだった。 増岡と京介が必死になって止めた。 帰る!と部屋を出て行った井原を、京介は追いかけて、→帰るナ、志賀川を怒る気持は判るが詩織里さんが悲しむ、此の儘帰ったら後悔してしまう、と宥めてやっと戻ってくれた。

 

・・・10年前、鶴見京介、志賀川真二、井原正人の三人は、函館観光を楽しんでいた。 立待岬で城野詩織里と笠原めぐみと偶然出会い、更に別々に向かった大沼でまたもや再会したのだった。  五人で湖畔のレストランで昼食を摂り、改めて紹介し合ったのだった。 函館地元の短大を卒業する二人の、詩織里は東京のIT会社、めぐみは函館のホテルに就職と知った。 東京の大学出の三人、鶴見京介は司法試験に合格して司法研修所、志賀川は三藤物産、井原は不動産会社に決まっていた。 詩織里に一目惚れした志賀川と井原は詩織里を挟んで楽しそうだったし、必然的に残った京介とめぐみの会話も結構楽しく弾んでいた。 一年後、鶴見と増岡は新橋の居酒屋で吞み出すと、増岡が、→志賀川と井原が仲違いしている、銀座で女連れの志賀川と会って立ち話だったが、井原には会った事を言わないでくれ、と口止めされた、その後に井原と会った時、さり気なく志賀川の事を聞いたら、吐き捨てるように、アイツは裏切り者だ!とキツイ言い方をしたので吃驚した、結構、以前は気が合っていた二人だったのに京介は心当たりがあるか? →君は都合で来れなかったが、俺たち三人で函館旅行した事があっただろう、その時出会った彼女・城野詩織里さんだろうナ、志賀川が抜け駆けして接近したのか、それで裏切り者かな?

・・・立待岬で出会った三年後、志賀川と詩織里は函館の教会で挙式した。 井原は欠席、それ以来、彼は京介達の前から姿を消した。

 

井原は札幌の実家に夜行バスで帰ると言うのを、京介は必死で止めて、→志賀川がホテルを取ってある、詩織里さんも、君が姿をくらましたから結婚当初、随分悩んでいたらしい、話をしてくれ、と了承させた。 7年前、井原は不動産会社を辞めて陶芸家に弟子入りした、という。 函館国際ホテルには志賀川、京介、井原、詩織里、めぐみが泊まり、増岡は夜行バスで、田所美樹はJRで札幌に帰ったらしい。 京介、志賀川、井原の三人で展望風呂に入った。 志賀川が井原に、→お前を裏切った事、許してくれ、→俺も取り乱して悪かった、と謝り合った。 そして、→銀座のクラブのママは同い年の32才の市村亜美だ、結婚する積りなので、パトロンに別れて貰うつもりだ、函館の海産物会社の社長で東京に三軒の居酒屋を持って、愛人の亜美にクラブをやらせている、と説明を受けたが、そんな簡単にコトが進むのだろうか?と京介は思った。

翌朝、午前7時、ベッド脇の電話が鳴って、→京介、志賀川だ、すまん、ちょっと出かけてくる、といいながら中々電話を切らない。 何か言いたそうだが言葉が出てこない感じだった。 切られて急ぎロビーに下りたら、今、タクシーに乗り込んだ志賀川が見えたので、→こんな朝早く、誰と会うんだ、ひょっとしてあの彼女か?と言うと、→いや、違う、心配させて済まない、と京介の腕をポンポンと二度叩いて走り去って行った。

 

午前9時、京介は井原、詩織里、めぐみと四人で朝食バイキングを摂っていた。 そこにフロントから呼び出しを受けた。 電話に出ると、→函館道南署の中谷と申します、志賀川さんが立待岬で遺体となって発見されました、と驚く様な事をいう。 ご遺体を確認して下さい、と請われて驚愕の四人で道南署に向かった。 誰もが信じられ無い、と口を揃える。 ホテルから志賀川を乗せたタクシーの運転手が、立待岬の駐車場で志賀川を下ろすと、男と会っていた二人の姿が見えなくなって、暫くすると男だけが自分の車に乗って去っていた、不思議に思った運転手が断崖を覗くと、突き落とされたらしい志賀川の姿を見つけて警察に知らされた、という状況を説明してくれた。 走り去った車のナンバーと車種を覚えているから直ぐに見付かる、と言う。 運転手がホテルを出る時に呼び合っていた志賀川、鶴見という名前を思い出していたのだった。 更に目撃者がいた、→立待岬で朝陽の写真を撮りに来た人が揉み合っている二人を見ていますが、人物は特定できていません、写真に映っていればイイんですが、と中谷刑事が加えてくれた。 ヒンヤリとした霊安室の顔に掛けられた布を外すと、頭の傷口を隠した包帯を巻かれた志賀川が現れ、詩織里は嗚咽を洩らしながら崩れ落ちた。 井原が、→志賀川、どうしてだ!と叫ぶ。 中谷は本人である事を四人から確認したアト、これから司法解剖して薬物の有無も調べます、いろいろお聞きします、と落ち着いた言葉を投げ付けて来た。 四人は志賀川との友人関係、前妻の詩織里との離婚式等々を説明した。 原因だった市村亜美のパトロンの話に中谷刑事は目を光らせた。 函館の海産物会社と東京で居酒屋を経営と言う事であれば、すぐ、誰かは判明します、と確約してくれた。

 

ホテルに引き上げてから京介と井原は立待岬に行ってみた。 風が強く津軽海峡の波は高かった。 何故、わざわざここで会う事にしたのか、相手の指定場所だったのか、そんな誘いに何故乗ったんだ、京介の疑問は膨らんだ。 井原は、→志賀川は札幌の俺の実家に問い合わせて笠間の俺の住所を知った、工房迄訪ねて来て、今回の出席を懇願された、というではないか、吃驚である。 京介には知らされていなかった。 →詩織里さんを井原に託したかったのかなァ、と思うも、→人間の感情はそんなものじゃないだろう、と否定的だった。 携帯が鳴って詩織里が、→真二さんが会っていた男を任意で事情を聞いているそうです、警察に来て下さいとの事です。 四人で道南署に向かうと、中谷刑事が待ち構えていた。 →吉池水産の副社長・吉池仁一朗42才です、志賀川さんの携帯記録もありました、会っていた事は認めましたが話し合いが済んで直ぐ別れて先に車で帰ったからそのアト何があったかわからない、揉み合っていたのは自分じゃない、ただ会いたいと立待岬に呼び出された、と言ってます、市村亜美さんの事を尋ねると、弁護士が来てから話すと今、待機中です。 京介は、志賀川は吉池と話し合う為に会う事にしたのだろう、と推測は出来るが、立待岬の断崖絶壁で抉れたらどんな危険な目に合うか考えていなかったのか、と京介は悄然とした。

 

翌日、京介は一人で函館道南署に出かけた。 中谷刑事は吉池を取調べ中だというので待機していると、エレベーターから出て来た吉池を追って、→吉池仁一朗さんですね、志賀川真二の友人で鶴見と申します、警察の疑いは晴れたのですか? 志賀川が立待岬を指定したのは本当でしょうか? 吉池は、→立待岬は彼から、時間はこちらが指定した、彼からは東京のクラブで声を掛けられた、市村亜美は他の男に心を移すような女では決して無い、と決然として車で去って行った。 中谷刑事は、→揉み合っていた二人が志賀川・吉池という証拠がない、但し、崖の方から吉池が走って来たという運転手の証言がありますから、嘘を行ってる可能性はあります、仕事があるから急いでいた、と吉池は言ってます。 そこに別な刑事が走り込んできた、→写真を撮っていた若い男が写真の現像が出来たと来ています。 写真の中に志賀川と吉池とみられる二人が小さく揉み合っている、もう一枚は吉池が一人でカメラの方に走ってくる鮮明な写真、志賀川の姿は見えない。 若い男は紀田大地と名乗った。 翌日、中谷刑事から携帯があった、→逮捕状を取りました、志賀川さんの方から掴み掛ってきて揉み合いになった、そしたら崖下に転落して行った、正当防衛だと主張しています、これ以上、市村亜美さんに近付くなと説き伏せる為に立待岬に行ったが、志賀川さんが崖下に突き落とそうとして襲ってきた、と言ってます。 京介は三人に説明した、→今後の市村亜美さんの証言によっては志賀川が不利になる、死んだ男よりも吉池に付いていった方がメリットが大きいからね。

 

京介は銀座の「あみ」を訪ねた。 一寸前に函館から刑事二人が来ていたので全て正直に話した、という。 吉池に世話になっている、志賀川はお客の一人で口説かれたけど結婚なんて一切考えた事はない、きっと彼は吉池の女だから近付いたのだと思うわ、吉池が「函館の女」を唄ったアト、大きな拍手をして吉池に話し掛けていったわ、名刺も交換してたわネ、この店は私の名義ですけどマンションは吉池のモノです、こうなると取り上げられちゃうでしょうね、養子だから私の事も絶対秘密だったのに、ただ志賀川さんはそれも調べたみたいなので、警察にも言ったわ、と外国曲好きな志賀川らしからぬ話ばかりで京介は驚くばかりであった。 志賀川のこちら側への一方的な話はどうやら胡散臭い。 真実は何だ、京介は親友の為にそれを知らねばならない、と誓った。

(ここ迄、全295ページの内、100ページ迄。 志賀川には、過去に殺人事件の犯人を目撃した、と証言台に立ったことがあった。 その若い男は終始、無実を訴えていたが、決め手になったのは凶器に付いていた指紋、前日に修理で訪問していた事、そして志賀川の目撃証言であった。 死刑判決後、数年後に執行されて獄門台の露となった事件があった。 離婚式の当日、志賀川に誘われて同行した、立待岬、函館山展望台、挙式した教会をじ~ッと眺めていたのは心残りがあるんだろうナ、と思っていたが、もしかして、あれは死ぬことを覚悟していたのだろうか? 物語は驚愕の結末に向かってひた走る。 読了感は何とも言えない気持である)

 

今夕はこの年末で閉店する「スナックM」の最後の訪問である。 ママとは恐らくもう会う事は無いだろうからこれまでの永年のお世話様を心から感謝してこよう。 S先輩と一緒である。

(ここまで、5,300字越え)

 

令和4年12月27日(火)