令和4年(2022年)9月25日 第549回

欧州ツアーは川村も金谷も予選落ち。 PGAはアメリカ選抜と世界選抜の戦い(ブレジデンヅカップ・5組の対抗戦)で、松山がキャプテン的な状態で出場しているが、1~4戦が終わってアメリカ選抜が4ポイントリード。 松山は1勝3敗と不振である。 最終戦はシングルス12マッチ、どんな結果になる事やら? 大逆転を期待したいナ。 LPGAは珍しく3日間試合、笹生が一打差の2位で、アトは、古江、畑岡の順で予選通過、野村、上原、渋野の3人が予選落ちした。 日本女子第29戦は、初日にツアー新記録の、-12を叩き出した山下美優が独走している。 男子は50才の宮本勝昌が予選トップ、石川遼は予選落ちした。

 

 

 

相場英雄「血の雫」(単行本は2018年、この文庫本は図書館から借用)

河田光子・25才、自称モデル、平岩定夫・45才、タクシー運転手、粟野大紀・65才、街のボランティアの3人が何れも文化包丁で刺殺された。 犯行現場は防犯カメラの無い場所ばかりだった。 最寄りの防犯カメラには宅配便や配送のトラックしか映っていなかった。

 

最初の捜査本部は中野署に設置された。 警視庁捜査一課の田伏恵介・46才は所轄署の若宮巡査長と組まされた。 若宮は五分刈りの中々の巨漢である。 河田被害者の鑑取りで彼女の知人・友人から情報を集める。 しかし、50人程の誰もが、恨みを買うような人物じゃないと怨恨を否定する。 職場関係からも、美人なのに気さく、気取らない、思いやりのある人、とすこぶる好感情ばかりである。 一方、SSBC(捜査支援分析センター)に集められた周辺一帯の防犯カメラには、被害者がコンビニの小路に入っていく姿だけで、不審者は一切映っていなかった。 地取り班も芳しい成果が得られていない。 不審者の姿が一向に見えてこない。 事件発生から10日間を第一期と呼ぶが、まもなくそれも終わる。 沈痛な空気の捜査本部に警視庁・上田捜査一課長が入って来た。 弛緩していた空気が一瞬に引き締まる。 大所帯の警視庁捜査一課総員・400人を束ね、凶悪犯を追う警視庁の顔とも言える花形である。 →手懸りがない、目撃者がいない、そんなことで士気を下げて首都の治安を守れるか!と怒声を放つも、→怒るのはここまでだ、調べ残しがないか、徹底するように、と捜査本部の30人を労う。 帰り際、元・SIT(特殊班捜査係)の上司だった一課長が田伏に声を掛けてくれた。 →復帰第一戦だナ、ここは大丈夫か、と胸を指す。 久々の現場で感覚を取り戻しつつあります、と答えた。 家に帰ってノートパソコンに情報を入れ足したり、読み返したりすると、犯人が被害者と揉み合ってブロック塀に刃物が当たり、切っ先が1,5mmほど曲がったという。 司法解剖も最後の創にも曲がった切っ先の創があるという。 訊き込み最中に上田一課長から携帯が入る。 →また、殺しだ、これから杉並署に捜査本部を立てる、中野署の被害者と創が酷似しているそうだ、もし、これが連続殺人ならおまえにやって貰いたい事がある。

 

高円寺駅にほど近い住宅街でタクシー運転手の刺殺体が発見されて、即座に二つ目の捜査本部が杉並署に立つと、やって来た上田一課長が、→創が酷似している事はマスコミに洩らすナ、連続殺人だと都民に恐怖感を植え付けてしまう、早々に被害者の無念を晴らせ、と発破を掛けると、田伏は、上田の目顔で廊下の隅に呼ばれた。 連れて来た若い男を紹介されると、警察手帳を開いて、→生安のサイバー犯罪対策課から移動してきた長峰勝利・巡査長です、と自己紹介する。 上田一課長は、→実は元々民間のIT企業でエンジニアだった、一年前に本部に採用され、サイバー犯罪捜査官で活躍してきた、しかし、捜査の現場経験が無いので、これから捜査のノウハウを養うべきだと上層部が決めて長峰はその第一号だ、おまえが指導役を頼む、生の捜査の何たるかをしっかり叩き込んで欲しい。 そういう最中にも長峰はスマホを弄っている。 普段は雲の上の上司の横で何たることか、よっぽど怒鳴りそうになったが一課長に促されて共に会議室に戻った。 ここの仕切りは30代初めのキャリア管理官・秋山修吾、真っ黒に日焼けしている。 被害者発見の通報から30分後、SSBCによって周辺一㎞四方の防犯カメラの映像が回収されている。 しかし、確認されているのは付近の住民や学生と、宅配便のトラック等々で不審人物は見つかっていない。 中野の本部と一緒である。 一課長が、→少し変則的になるが、この捜査一課の田伏と長峰に中野と杉並の本部を行き来させる、俺が預かることになったので、二人の被害者の鑑取りをさせてくれ、宜しく頼む、と仁義を切った。 田伏が長峰のスマホ弄りを注意すると、手帳代わりに書き込みをしていると言う。 会議の内容や一課長の指示を全て書き込んでいる。 →それよりも田伏さん、大変な目に遭われたんですね、と画面を差し出して来た。 「ネット民の善意の拡散が人質を殺した!」 「警視庁、まさかの事態に困惑=誘拐捜査に限界も」 「拡散希望! これが間抜け刑事の顔だ」 田伏は立ち眩んだ、脂汗が出てきて、呼吸も苦しくなってくる。 →この一件でオレはSITを外された、とパイプ椅子にへタレ込んだ。 長峰が、→生安の上司が田伏さんをケアして欲しいと言ってたのはこの事だったんですね、と呟く。

 

一年半前、整形外科医の10才の娘の誘拐事件が発生、犯人は一億円を要求し、警察に知らせたら殺す、とボイスチエンジャーで連絡して来たが、父親は110番通報してSITが出動した。 付近のマンションに訊き込み最中に帰宅した高校生の長男が、→それって、もしかして誘拐? もっと広く情報を募ったほうがイイよ、俺のフォロアー600人いるから、と言った途端、写メで顔を撮られツイッターに投稿されたのである。 「大至急拡散希望!小4の子が行方が判らない、今、警視庁の刑事が訊き込みに来ている」  →刑事さん、威力抜群だよ、一分も経っていないのに、もう、45件もリツイートされてるよ、とスマホを向けられた。 増え続けるリツイートのメーターに血の気が引いた田伏は必死に削除をして貰ったのは5分後だった。 案の定、娘を殺して逮捕された犯人は、→ネットで誘拐をバラされたから殺した、と自供したのだった。 ネットに拡散された無能な刑事の田伏の顔、遺族を始め、あらゆる人々からの、怒声、罵声、一生分の非難が襲ってきた。 田伏はSITを追われ、心が壊れた。 一ヶ月間の休養を命じられ、心療内科を受診した。

 

田伏は、→現場100回だ、と「タクシー運転手殺害現場」に長峰を連れ出した。 やはり、犯人は防犯カメラの無い土地勘を持っている。 すると、長峰は、→恐らく、地図アプリのべーター版で、防犯カメラの位置とGPSをリンクさせた優れモノを使っています、誰でも使えるアプリですからネットに詳しい犯人ならそれ位考えるでしょう、と田伏には考えられなかった事を平然と言った。

・・・そして長峰はインターネットの河田光子と平岩定夫の表のアカウンと裏のアカウンとを探り出した。 表は極めて自分や周囲に優しい言葉の羅列、裏では恨み相手への辛辣な攻撃的な蔑みだった。 彼らが攻撃的な相手に共通する事柄があった。 それが東日本大災害に遭って、避難を強制された住民に投げ投げ掛けられた、酷い言葉と、被害者が福島出身と知った時の冷たい接触だった。 何故、彼らが災害民にそんな卑劣な気持や言葉を投げ付けるのか、それは電気会社から補償金を貰って自堕落に生活している、と指摘した渦中に取り込まれて、そこに無責任に賛同したネットの中が異常に燃え上がり、犯人の妹が謂われもなく自殺したのだった。

 

「カリスマモデルさん、福島の支援ってアンタ莫迦なの?」 「放射塗れにさせて、アンタの行為は殺人未遂!」 「福島の産物は放射塗れなの、本当に酷い人!」 これが殺された被害者・河田光子のツイートに寄せられたメッセージだった。 そして平岩の裏アカントでは、「拡散希望!福島産の食物は放射能だらけ、政府は嘘をついている」と、デマ情報を盛んに煽り続けていた。 そして殺された三人目の粟野大紀は、「中央新報は世間を混乱させるアカの手先だ、天誅を!」と叫んでいた。 「ひまわり」と名乗る犯人からメールが流された。 「雑魚三人のゲームはお終い、今度は大物だよ ・・・gos epp ara yak eru」と、最後は誰にも判らないコードだった。 (実は、「ごせっぱらやける」という福島弁で、腹が立っている、怒っているの意味だった) 

(とても書き切れない、ここらでギブアップ。 血の雫という題名は、ゴシップ新聞のようなネットニュース社が犯人の怒りを買って、その担当者がネット上で、実況されながら処刑された。 その時の、毒物を指先から注入されて流れ出る血液の事だった。 さて、今度の大物とは誰か? 防犯カメラを掻い潜ったという盲点は? 最終章は、田伏や妻・娘が災害地の福島支援に全力を注いでいてくれた事を感謝した犯人の思いやりが、大物が処刑最中のギリギリで、犯人逮捕に繫がる大手柄を立てた。 田伏は前回の汚名を見事に晴らす事になったのである。 ここまで、全544ページの内140ページまで)

 

業界紙のコラム投稿が10回となった。 既に書き溜めたモノが7件ほど、頭にあるのが3件ほど、アトはこれから鵜の目鷹の目で探す事になる。 書き溜めたモノを出し切ってから辛くなりそうな予感がする。 このコラムもボケ防止だと思いながら続けているが、きっとその成果はある、と信じてやって行こう。

(ここ迄、約4,000字)

 

令和4年9月25日(日)