令和4年(2022年)9月5日 第544回

LPGAは、畑岡7位(44千$)、古江29位(12千$)、笹生38位(9千$)、欧州は、川村が22位(29千€)だった。

日本女子第26戦は、首位だった勝みなみがtodayイーブンと振るわず、today-6と追い上げた無名の中国人と、today-2の大会連覇を狙う吉田優利が、共に-12でP・Oに突入し、2ホール目でバーデイ決着した。 24才の中国人の初優勝にあっ晴れ! これで23勝3敗、手強い相手が出て来たのかも知れない。 それにしても、途中で首位に立った小祝がショートホールの池ポチャで+3と崩して-10の5位に落ちたのは残念でならない。 タラればじゃないが、アレがなければ優勝だった。 それでも菊池絵理香を始め、20代の阿部未悠、成澤裕美らの道産子が予選通過してイイ成績を残してくれたのが頼もしい。 

男子プロも、39才・韓国人とのP・Oで23才の若人・中西魁斗が競り勝って初優勝! モンスターコースと言われる山梨・富士桜ccの4日間で、優勝は-11の難コースである。 アメリカ留学で腕を磨いたと言うから、前回の22才・河本力と同じに、若い力が頼もしい。 男子プロも若い芽が出て来たか!と興奮する。 

 

リブ・ゴルフ第4戦は、日本人メンバーがいない。 限定12チーム・48人の人数に、また新しい世界ランク上位の加入者があって、そっちの方が優先招待されたのだろう。 日本人は、リブ・ゴルフ立ち上げの人数合わせと賑やかシにされたとしか思えない。 以後は、松山クラスのビックネームしか日本人の名前を聞く事にはならないと思う。 これまでに2回出場した4選手は、カネは稼いだがPGA主催の日本大会にも出場できない指示が来ているという。

 

 

原宏一「佳代のキッチン② 女神メシ」(単行本2015年刊)

・・・第一話・港町へ、第五話・ママンのプーレ、は第540回にUP済み。

第二話 女神メシ

「いかようにも調理致します」の木札を下げたキッチンカーの佳代は下田市にいた。 「落合の湧き水」は往復30分の距離である。 若い男が爆音を響かせて原付バイクでやって来た。 伊豆急下田駅近くの駐車場を借りて商売中だが、早くも地元の地回りが因縁か、と一瞬怯んだが、サングラスを外した顔は穏やかな目付きだった。 →エンジン故障していない?と、出鼻をくじくと、→済みません、これ、中古で煩くて・・・、と頭を搔いている。 →鶏モモ肉、これ焼いてタレとかかけてくれっかナ、あと、この魚介メシも貰う、待ってるから・・・、とレジ袋を差し出して来た。 こんがり焼き上がった肉片をタレもかけずに、ひとつ、口に放り込んでパリッ、パリッと小気味よく噛み砕いている。 旨そうに平らげてから日焼け顔を綻ばせて、→ねえ、この調理屋ってやつ、浜でやってくんない? 海斗と名乗った若者はプロを目指しているサーファーだというが、ここから更に南下した場所だという、彼の懇願には応えられなかった。

 

翌朝、魚介を仕入れに行く準備をしていると、海斗がやって来た。 バイクの後ろに大きなポリタンクが積まれていて、→落合の湧き水は俺ン家の直ぐ傍だから汲んできた、ウチらの浜「多々戸浜」でやってくれたら、毎日俺が汲んで来るから・・・、と懇願が続く。 もし、海斗に手伝って貰えたら、と考えて、→ちなみに料理は好き?と尋ねるも、無言で首を横に振られた。 佳代は改めて断わった。 ところが、営業を始めた途端に10台ほどのバイクや車が押し寄せて来た。 暴走族じゃないが、道行く人々が何事かと見ている。 先頭の海斗がレジ袋を4つも下げて、肉がビッシリ詰まっている。 ポニーテールの若い女性が野菜の詰まったレジ袋を差し出してきた。 →野菜嫌いな男でも食べられる料理をお願い、と注文されて、ちょっと嬉しかった。 更に海斗は、魚介メシも人数分欲しい、お昼までに取りに来ると、追加注文だった。 どうにかお昼に間に合った、と一息ついていた時、四輪駆動車に日焼けした男二人とあのポニーテールがやって来た。 →味見しようぜ、とローストポークを摘まみ食いすると、→マジ柔けェ! 肉汁半端ない! 凄ェ!と嬌声が上がる。 佳代は少し誇らしい。 一方で女性は、野菜料理を見るなり、→これ、エッグべネディクトの野菜版? こういうやり方もあるんだネ、と言い当てて感心してくれた。 三人の満足そうな表情を見て何時にない達成感を覚えた。

 

それからが大変だった、毎日、日焼け集団の10台以上の車が次々と押し寄せて来た。 一週間経った頃、駐車場の大家さんからクレームが入った、→若い連中のたまり場にしたくない、万一、風紀が乱れても困る。 ここのお客も最初は近所の様々な人々だったが、最近では寄り付かなくなっていたのは事実だった。 海斗に打ち明けると、→だから、浜でやってくれよ、今や、皆、女神めしと呼ぶほど気に入っているし、これからも俺が湧き水を浜まで運ぶから、と押し切られてしまった。

 

多々戸浜は、遠浅の、透明度が優れた浜だった。 浅瀬の沖には結構な波が立っている。 それでも三月の海水はまだ冷たい。 この時期はウエットスーツのサーファーしか来ないらしい。 海斗の実家は民宿だという、祖母と両親と姉の四人で切りまわしている。 海斗も高卒後、魚の下拵えや客室の掃除等を手伝っているが、イイ波が来た、と連絡が入ると多々戸浜にすっ飛んで行くから、仕事の当てにならない状態なので家族のヒンシュクを買っている、という。 ここでやる条件は、→湧き水の運搬と調理屋の手伝いをしてくれる事、と突き付けた。 イイ波が来たら直ぐ海に入る事をOKして、海斗との契約は成立した。 営業時間は朝7時から、日の出前に魚介を仕入れて仕込みを始めると、何と、海斗の手際のイイ事、手慣れた魚捌きだった。 民宿の手伝いはダテでは無かった。 二人でゆっくり朝ご飯を終わっても営業開始に余裕で間に合った。 ここのピークは三回、朝の海に入る前の腹ごしらえの人、午前中で切り上げて来た人の早目の昼食、そして夕方の波に乗ってきた人たちの夕飯である。 地元の有力者、サーフショップ経営の元プロサーファー・佐々木洋さんが空き地を貸してくれた。 洋さんは、50代と思えない惚れ惚れするような鍛えられた筋肉で、実は海斗の憧れの人であった。

 

快調な日々が続いた。 サーファーからの注文が多くて商売が大繁盛である。 そんな時にあのポニーテールの彼女がやって来た。 海斗は早朝からイイ波が来た!と海に入っている。 麻緒と名乗っって、→ここでず~ッとやる積り、海斗はプロサーファーを目指しているのに、どうして無理やり手伝わさせているの、と咎める口調である。 →あなたの商売の為に海斗を利用するのはやめて、そういうやり方はマジで狡い、直ぐ移動して、これ以上、海斗に関わらないで!と切り口口上だった。 途方に暮れた佳代はその日、臨時休業した。 とてもあのまま商売をする気も起きなかった。 そうだ、洋さんに相談しよう。 「サーフショップYOH」へ向かう途中、酒屋で地酒一升瓶を買った。 夕暮れ時、店先にはテーブルとイスを置いたテラスがある。 →ちょっとお話がありまして、と一升瓶を差し出す。 これまでの経緯と今朝ほどの麻緒の話、海斗の事でトラブルになっている、と説明した。 のっそり立ち上った洋さんは、→浜で飲ろうか、と店の奥から摘まみを持ち出して来るなり、一升瓶を掴んでさっさと店を出て行った。 砂浜に並んで腰を下ろした、摘まみはビーフジャーキーよりも柔かい、ハワイの「ピピカウラ」だった。 地酒も旨い! →海斗は素人にしちゃ巧いがプロにはなれんだろう、プロってのはそれ程並外れている、しかし、麻緒は海斗を信じようとしている、家族から反対され、仲間から腐されても、プロになれると信じようとしているのサ、だから海斗を邪魔する奴は許せないんだろう、海斗に対して佳代ちゃんにその気がなくても、麻緒は嫉妬してるんだよ、これだけベッピンさんだと誰だって勘違いするんだろう、だからハッキリその気は無いと麻緒に悟らせる事だ、と空を見上げてはっはっはと笑い声を上げた。

 

翌日、昼近く、厨房車の下で目を覚ました佳代は、痛かった背中をさすりながらサーフイン中の海斗を見詰めていた。 上手だと思うがこれでプロは無理だというなら、プロがどれだけ凄いかが想像できた。 濡れた体で、海斗が、→ちょっとイイかな?と、岩場の死角に招き入れた。 高校生の時からの先輩の麻緒とのデート場所だったらしい。 →昨日、麻緒と大喧嘩した、やっぱ佳代さんと出来てるって騒ぎ出すから、違えよ!と怒鳴り付けて、プロは無理かもって、言っちゃって。 もう無理だって自分でも気付いていたし、ただ今まで引っ込みがつかなくなっていた、家族にも麻緒にも、ぜってえプロになって見せると啖呵を切っていたし、と生々しく告白したのだった。 だからこれから麻緒とどうやって生活をするか考えていた時に、佳代のキッチンが現れてこういうやり方があったのか、と光明を見出した思いがしたのだった。 料理は好きじゃない、と佳代に言ったが、あれはプロを断念したと周囲に悟らせないように言っただけだった。 麻緒と一緒に生きて行くには格好の商売ではないか、将来的には下田一帯の浜に数台の厨房車の派遣とか、民宿が厳しくなっている今、稼業を調理屋に切り替える道だってあるかも知れない。 →明日からガチで手伝わせて下さい、調理屋の修業をさせて下さい、と真剣に頭を下げられた。 しかし、佳代は、→ダメ、断わる、と酷な仕打ちをした。 →あたしのやり方で夫婦二人が食べていける保証がないし、自分で試行錯誤して海斗流の調理屋を創り上げる覚悟がなきゃやる意味が無いと思う、すくなくても佳代のキッチンを体験している訳だし、と洋さんの様にポンと背中を叩いてやった。 その晩、松江の婆ちゃんに電話すると、→それでよかったんやないか、これまで好きなように生きて来たんやから、自分で苦労しなきゃ何にも始まらん、下田支店の候補者だと言ってきてもわしは支援せんじゃろナ。

 

翌朝、佳代は早々に下田を発つ事にした、用意をしていると海斗がやってきて、→え、オレのせい?と、驚いているが、→車検なの、改造してくれた東京の整備工場に行くから、と小さな嘘を付いた。 →どうしても調理屋をやりたい覚悟なら本気で頑張って欲しい、困った事があれば全国どこにいても相談に乗る、と言うと、海斗は唇を噛み拳を握りしめた。 ハワイの干し肉「ピピカウラ」という牛の干し肉を洋さんからご馳走になって自分でも造って見ようと、牛肉、豚肉、鶏肉をそれぞれ塊で一夜干ししていた。 海斗にちょっと焼いて貰って洋さんのショップに持ち込む。 店先に麻緒が居て佳代にハグしてきて、→ありがとう、と涙声だった。 洋さんに説明すると、頬張った洋さんが、→旨い!と、声をあげ、海斗と麻緒も、→これッ、ヤバ!と、頷き合っている。 洋さんが、→これ、生ピピカウラって名付けて浜で売れば人気になるナ、と断言する。 佳代は、ウンウンと頷き、多々戸浜名物になればいい、二人が調理屋をやるなら、ぜひ、これを売って欲しいと思ったが、声には出さずにレシピだけを海斗に伝えた。 そうして洋さん、海斗、麻緒の順にハグして厨房車を発進させたのだった。       

(ここ迄、第二話103ページまで、このアト、第三話、第四話、最終話がある、残りも何れ、と思っている)

 

 

図書館から借用の文庫本「煉獄の使徒 上巻」(馳星周、単行本は2012年)は、787ページの長編であり、PR帯には上・下巻1,600ページの作者史上最長編と謳っている(普通の文庫本は300ページ前後)  内容はオウム真理教そのもので、産まれたばかりの赤ん坊と弁護士夫婦を殺害し山中に埋める、教祖が衆議院選挙で大敗を喫した事を、政府の陰謀と叫んで信者を丸め込む。 そこに政治家と、保身に走る公安警察の上層部が絡んでくる。 覚醒剤を使って、出家して来た若者に幽体離脱したが如くに欺き、信者を増加させる手段が、何故、簡単に引っ掛かるのか、と不思議ではあるが・・・。 腹黒いばかりの内容に呆れてサッパリページが進まない。 返却期日が来る迄読破出来なかったら、そのままお返ししよう。 勿論、下巻には出を出さない。 最近では、別な団体の事が騒がれているが、宗教に嵌る人々の何と恐ろしい事か。

(ここ迄5,100字越え)

 

令和4年9月5日(月)