ぼくの通勤は徒歩である。1.7キロの道のりをだいたい20分ぐらいかけて歩いている。この往復だから毎日3.4キロは歩いていることになる。健康維持のためにはひじょうによい運動量だと思う。仕事が忙しくない日は、之に加えてフィットネスバイクをこいだり、筋トレしたりもしている。
さて、政府からマスクの着用を緩和する考え方が発表されて以降、まだまだマスクを手放せない人は多いと思う。これを揶揄する言い方なのか「顔パンツ」と言われている。
今週になってから25度以上の夏日が続くようになった。梅雨なのにあまり雨は降ってはいないが蒸し暑い。口の前に鎮座しているマスクが息苦しく感じる。自分が見えないので周囲の人がマスクを着用しているかはわからないが最近は外して歩きたくなっていた。

朝の通勤時、自宅の周囲は三密にならない地域なのでマスクを外すことに決めて歩き出した。すると、いつもの横断歩道を過ぎて歩いていたところ、後ろから「ちょっとお兄さーん」と女性の声が聞こえた。
声は少し離れたところから聞こえたのでお兄さんではない自分ではないだろうと思っていた。そのまま歩き出したところ、後ろから駆け寄ってくる人がいた。ちょっとびっくりして持っていた白杖を自分の足に引っかけて落とした。
落としたままの白杖を横目に女性が「靴の紐、ほどけてますよ。」と教えてくれた。横断歩道を渡ったときになんとなく右の靴紐が緩んでいるのには気づいていたが、職場まではこのままでも大丈夫だろうと思っていたところだった。
「ありがとうございます。」と返答して白杖を拾って立ち去ろうとしたら女性が「結びますね。」と言った。
「わざわざすいません!ありがとうございます!」。なすすべも無く、底に棒立ち。こういうシーンではどうにもこうにもむげには断れない。
女性がしゃがみ込んでさっと結んでくれて落ちたままの白杖も拾ってくれて渡してもらった。ぼくは感謝を告げて立ち去った。

その後、歩きながらふと思ったこと。
もしかすると、ぼくは気がついていないけれど、朝の通勤時、よくみられているのかもしれないな。だからあんな気さくだったのかもしれない。それから、マスクを外していたからこそ声をかけてくれたのかもしれない、と。顔を出して歩けば声をかけられやすくなるのかもしれないと思った朝のひととき。


ちなみに、

その女性の年代は……

ご想像にお任せします。