覚えているのは、2本。
それぞれがとても、ながいながい夢でした。
1つは結婚式をあげる夢。
当日の準備から式が終わって1日が終わるまで、徹底的に映されたもの。
ほとんど身内だけのこぢんまりとした少しさびれた会場での式と披露宴。
夫は純粋に楽しんでいた。
義両親は言う。
「こんな地味な式なら、会社向けと、親戚向けであと2回はやらないとね」
渋い顔で座り続けた。
私は顔に貼り付けた笑顔をとることなく
ただ式次第通りに役目をこなした。
「どうせ離婚するのに式なんてしたって
やっぱり悲しいだけだな」
「こんなしょぼいところで形だけやって、初めてのウェディングドレス、綺麗だけどまったく嬉しくないな」
「義両親がこの調子じゃあと2回はやらなきゃいけないのかな」
そんなことを考えながら。
目が覚めてあらためて
夫との未来をほしがっていない自分を実感した。
おととい義実家で怒られながら催促された式。
やはりらかけらもやりたくないんだな。と。
もう1つは
帰りのホームルームをやっている母校の中高を訪れ、懐かしむ夢。
賑やかな声と風景のなか
私は探していた。
教壇にたつ彼の姿を。
子どもたちにまぎれて、いるんじゃないかって期待しながら。
歩くたび軋む床の音に安堵を覚えながら
廊下からひとつひとつ教室をのぞく。
ーー今は何年生をみてるんだろう。
あたたかい声をきき、ほそめた目をみたかった。
でもどこにも彼はいなかった。
ーーそっか、もうこの学校にはいないんだ。
校舎はこんなにもあのころのままなのに。
キュッと締まった胸を落ち着かせるように
図書館、中庭、体育館……とまわってあるいた。
日も落ちてきた夕方。
もう一度中学校舎を歩いた。
そしたら……
ふとあらわれた彼があまりに自然で
まわりには生徒もいなくて
思わず首に抱きついた。
何も言わず
ただ、ただ、首があたたかくて
髪がやわらかくて
ずっとずっと抱きついていた。
そこで終わり。
20代のうちに私が失くした2つの大きなものを
一晩で徹底的に見せつけられた気がした。
負けね。
ダメな私の負け。
美しい記憶がよみがえるほど
現実はかすんでみえて
現実がかすむほどに
記憶がより美しく完成されていく。
このスパイラルのなかで
平常心を保ち続ける自信がないの。
そんな失望のなかで
つい話しかけてしまう。
ねえ先生。
あのときあなたが「やだなぁ」って言ってた三十路に
今年なります。
やっと追いついた頃にはあなたはいないけど。
私も今年、三十路になります。