以前、泌尿器科でエスプレッソ禁止を言い渡された私。しかし、せっかく買ったマキネッタをお蔵入りにしたくはない。


マキネッタ使いたい…

優雅な私を気取りたい…

エスプレッソ飲みたい…

でも石ころができるのはイヤ…

痛いのもイヤ…。


どうしようかと考え抜いた挙げ句閃いた。そうだ、とりあえず1カップ用のサイズを買い足そう。これで1日1杯までの制限は守れる。


そこで問題になるのは既にある3カップ用と6カップ用の存在意義だ。6カップ用は元々2人の時用なので特に心配ない。どちらかと言うと1人の時用に買った3カップ用の方が必要性を問われてしまう。


旦那が私の買い物にダメだと言うことはないが、さすがにちょっと後ろめたい。それに、道具は使ってこそ輝くはず。使われるために作られた物を使わずして何とする。


何日か悩んで気がついた。あれ?そういえば旦那、仕事行く時いっつもコンビニでコーヒーと菓子パン買うよなぁ…。これは…もしやチャンスなのでは?

スーパーで10枚切りの食パンとマーガリン、ジャム、あんこを買って翌日の朝、早起きした。


旦那が起きる前に台所でエスプレッソを淹れる。

そう、使うは3カップ用のマキネッタだ。それを氷たっぷりのマグボトルに入れ、水を少し足してアイスコーヒーにする。そして、ジャムサンドを2つ拵えて冷たい麦茶のマグボトルも用意する。


普段なら朝食は用意せず布団の中から " 行ってらっしゃい " をする私が起きて朝ごはんとコーヒーを用意しているのを見た旦那は初め、ちょっと驚きながら少し嬉しそうに「ありがとう」と言った。


旦那から見れば俺のために朝ごはんとコーヒーを早起きして用意してくれた嫁。私も


「コンビニで買うと高いでしょ?かばんは重くなるけど、世の中どんどん物価高だし財布には優しかろ?」


と、いかにも旦那のためであるかのように振る舞う。そして玄関まで見送りをしてみせる。しかし、実際の思惑はこうだ。


『よしよし、これで3カップ用の使いみちが出来たから1カップ用を堂々と買えるな(ニヤリ)しかしあれだな。今日だけだと、ただの気まぐれで終わって不信感を抱かれてしまう。発言と行動に整合性を持たせねば私のささやかな計画が破綻してしまう…。かと言って2、3日で止めてしまえばコーヒーが用意されていることに期待をし始める頃だからガッカリさせてしまう。それは、ちょっとかわいそうだな。仕方ない、これはしばらく続けて実績を作らねばなるまいよ』


その日から私の打算的な作戦が始まったのである。


作戦を開始して数日が経過した頃、いつもは目覚ましアラーム3回目でようやく起きてくるのに、その日は1回目で起きてきた。


「おはよ、今日起きるの早いね。寝れんかったん?」


「はよ。ううん、寝た。何で?」


「アラーム1回で起きるなんて珍しいなと思って」


「あぁ…、匂いで…目、覚めた…」


「ふーん」


「うん…」


作戦通りに見送りまで済ませてスマホを取り出す。

ビアレッティ マキネッタ1カップ用

ポチっとな。


数日後、届いたマキネッタをこっそり棚に仕まい、タイミングを見計らう。


ある日、焼きそばを作る旦那に新入りのマキネッタを取り出して見せる。


「見て見て~。新入り」


「なに?それ」


「1カップ用のマキネッタ」


「まき、、何?」


「毎朝あなたにコーヒーを淹れるために使ってる道具のサイズ違い」


「あぁ、それで淹れてるんだ?サイズ違いってのは?」


「そう。サイズ違い。大は小を兼ねない道具だから買ったの。泌尿器科でコーヒーは1日1杯までって言われたから、1杯だけ入れられるサイズ買ったの。あなたに朝淹れて渡してるのは3カップ用でね、2人の時に使うのが6カップ用」


「なるほど。飲みすぎたら、また石ころ…フフッ…石ころできちゃうからね。痛いもんね(笑)分かったよ」


「おい、バカにすんなよ?なったことないくせに笑うなや」


「なったことないから笑える」


「黙れ。良いでしょ、これでコーヒー飲める」


「分かった分かった。はい、もう、ごはん出来たよ。持ってって食べな」


「お、ありがと。いただきまーす」


「はいよ」


「うん、美味い。おかわりある?」


「それ、食べきってからね」


「はーい」


斯くして作戦は成功したのである。