. 腕輪の特殊な機能
世界の諸民族を概観すると、腕輪が老幼男女さまざまな種類の人々の腕を飾り、また社会全般に広く愛好されていたり、あるいは単なる装飾品にとどまらずにそのほかの多様な意味を有している状況に出会う。たとえば20世紀のなかばごろブラジルのアマゾン奥地に住むシャバンテの男女は、ヤシ類の繊維で編んだ縄紐(なわひも)状の腕輪をしていたという。彼らは同様の縄紐を足首や首、あるいは腰にも巻き付けており、これらが彼らが伝統的に日ごろから身につけていた唯一のもので、服はまとっていなかった。彼らにとってこれらの装身具は飾り以上の意味をもっていたかもしれない。
人間の身体の各部分のうち、四肢や突出部あるいは節目は、古来、しばしば霊魂や悪霊などの出入口として神聖視されることがあった。手首や腕もそういう部位にあたり、したがって、そこにつける腕輪は、宗教的、呪(じゅ)的な威力をもつと考えられることが多い。つまり、腕輪をすることにより、自分自身の霊魂を肉体内に定着させたり、あるいは悪霊の侵入を阻止したりして、病魔から逃れるのである。近代医学の発達以前の社会においては幼児死亡率がとりわけ高く、病害に冒されやすい幼児期にのみ着用される腕輪というのもあった。東南アジアのタイなどでは子供用の金製や銀tiffany rings 製の腕輪がかつてはよくみかけられた。この場合の腕輪は一種の御守りであると同時に、さらに着用者が人生の成長過程のどの段階にあるかを示すものにもなる。この後者の腕輪の機能は、社会的地位を表現する機能としてまとめられる。中国雲南省徳宏地区のタイ()系の男子が子供から若者になると、かつては銀の腕輪を左手首にはめたというのもその一例であるtiffany silver 。
また、入手しにくい貴重な材料によってつくられた腕輪を所有することで、所有者の特権的地位が誇示されることもある。あるいはまた、ニューギニアの東方および北方の島々の間で繰り広げられた交易システムとして有名な「クラ」においては、白い貝の腕輪「ムワリ」が儀礼的交換の媒体として首飾り「ソウラバ」とともに重要な役割を果たした。「ムワリ」を所有することは名誉なことであるが、長期間手元に置くことは許されない。それが一定の方向で島から島へと巡回していくことによって「クラ」は維持され、その際に各種の日用品の交易が行われたのである。
日本では縄文弥生(やよい)古墳の各時代にみられる。縄文時代は貝輪が顕著で、ほかに木製などもある。アカガイ、サルボウガイ、ベンケイガイなどの二枚貝に孔(あな)をあけ、周縁部分を残して環状につくったもの、アカニシなどの巻き貝を縦に切ったものなどがあり、埋葬人骨に着装されたまま出土することも多い。朱彩のものもあり、呪術(じゅじゅつ)的意味がうかがわれる。弥生時代になると、ゴホウラ、イモガイ、オオツタノハガイなど南海産の貝が好んで用いられ、また新たに銅釧が出現する。いずれも祭祀(さいし)的意味合いが強い。まれにガラス製釧もある。古墳時代になると、前期は貝製釧とともにその系譜を引く碧玉(へきぎょく)製の石釧(いしくしろ)、車輪石(しゃりんせき)、鍬形石(くわがたいし)の石釧などが現れる。これは実用品ではなく、呪術的意味をも有す宝器、儀器とみられている。後期には金属製(銅、青銅、金、銀製)の腕輪(釧)が発達し、数個の鈴をつけた鈴釧(すずくしろ)やガラスの釧もみられる。ほかに丸玉、小玉などの玉類を連ねたいわゆる手玉(玉釧)も多く、多種多様化してくる。これらの着装法は、人物埴輪(はにわ)などからその実際を知ることができるTiffany Bracelets。