「クローズド・ノート」(07年・日本)


監督:行定勲
原作:雫井脩介
出演:沢尻エリカ、伊勢谷友介、竹内結子、板谷由夏、田中哲司、サエコ、黄川田将也、永作博美、石橋蓮司、篠井英介、中村嘉葎雄
上映時間:138分

評価点:8/10

コメント:

<ストーリー>

教師を目指す大学生の香恵は、引っ越し先で前の住人のノートを見つける。

持ち主の伊吹は教師で、仕事や恋の悩みが日記につづられていた。

香恵は日記に刺激を受け、バイト先で出会った青年画家への思いを募らせていく。


週刊誌やスポーツ新聞でその「女王様」ぶりが騒がれている沢尻エリカですが、映画で演じる香恵はいたって普通の女子大生で、ひとりの男性に想いをよせる姿を無理なく演じていました。

とはいえ、日頃の作られたイメージがふいによぎってしまうこともあるわけで、今後、その「沢尻色」を完全に感じさせない演技をするのは大変だと思います。

今のところは作品ごとに与えられた役を上手に演じわけている印象もありますが、本業以外の個性が強くなりすぎるとそれを超える演技をするのは並大抵のことではない気がします。

この作品、沢尻エリカ主演ということもあり、彼女ばかりに話題がいきがちなのですが、一番輝いているのは伊吹を演じた竹内結子ではないでしょうか。

生徒思いの教師という得な役柄とはいえ、それこそ彼女の良さである清楚でいて芯の強さが前面に引き出されていて貫禄ありました。

彼女演じる伊吹先生の映画と感じてしまうくらいですから。

伊吹役を演じさせるなら、竹内結子の他には麻生久美子も面白いかなと思いますね。

香恵から想いを寄せられる画家役の伊勢谷友介はどんな役を演じても似たようなものばかり・・・。

はまり役といえばそうですが・・・、それとは少し違う気もします。

俳優陣ばかりに目がいってしまいましたが、作品自体の雰囲気も良く、観ていて大方の結末が予想できるものの、最後まで興味が尽きない作り方は見事です。

2点ほど残念なところをあげるとするならば、1つは舞台が定まっていない点です。

恐らく、作品を観ている上では描かれている舞台(街)はハッキリとは出てきません。

しかし、画面には京都の風景が映し出されることが多いため、勝手に京都を舞台として感じてしまうわけです。

そうなると登場人物の誰かしらに方言が出てくるのが普通ですよね。

けれども、誰一人として方言を使わずに標準語で話している。

別に京都を舞台にしていると定めているわけではないのでどうでもいいのでしょうが、個人的には興ざめしてしまいました。

そして、2つ目がエンディングテーマ。

YUIが唄う曲の詞はとても作品にあっているけれども、音楽はどうも雰囲気を壊してしまっている気がしました。

ラストが温かな気持ちにさせてもらえたのに、いきなり重苦しいメロディが流れてきたのはもったいなかったです。

それにしても、この作品を観て日記の魅力を改めて感じました。
ネット上でblogが流行しているとはいえ、そこに綴られているのは他人に公開するためのものであって、そこに本当の想いが詰まっていることは少ないのかもしれません。

その点、日記には秘められた純粋な想いが綴られている気がするんです。

だからこそ、作品の中で香恵は伊吹の日記に心を動かされて素晴らしい経験をするのだと思います。