幼稚園も無事に卒業をして、次に来るのは小学校となるわけだが、この小学校6年間にもこの男は色々とやらかしてくれた。

それは、もちろん入学式のときからだ。

なごやかなムードで進む入学式。友達100人出来るかなの歌のように、これから先の毎日に目をキラキラ輝かせていたが、彼は少し違っていた。入学式で、楽しげに参加している生徒の一人に初対面であるにも関わらず、いきなりちょっかいをかけ始める。

最初は小突くところから始まり、次に言葉でいじり、最後には真っ白な上履きを投げ合い、互いに怒鳴りあいながら追い回すほどの喧嘩をやらかしたのだ。

その後、その相手の子とはとても仲の良い関係を築けたから結果オーライだったのだろうが、入学式くらいはまともに出来なかったのだろうか。

彼の父親も高校の入学式に10数人との喧嘩で病院送りも出して、いきり停学を喰らったりしたらしいから、蛙の子は蛙ということで歴史は繰り返されるものだと言うことだろう。
幼き彼に対して両親は、無謀にも学習院に入学をさせようとしていたらしい。

学習院と言えば、皇族も通うような学校である。彼の家柄程度ではとてもではないが入れるわけがない。

しかし、彼の両親は彼に対しては何かを期待していたらしく、幼き彼に随分と早い時期から読み書きはもちろんのこと、算数も小学校に上がる前に教え込み、更に英語まで教えようとしていたのだ。

ドラえもんを題材にしたカセットテープ付きの教材だった。英会話の基礎的な内容で、子供に大人気のドラえもんということもあり彼も興味を示し、良くテープを聞いていたのだが、残念なことにその後の両親からのフォローがなかったがためにそれは継続することはなかった。

それが、彼の中では英語嫌いのきっかけになったのではないかと思われる。再度、触れることになるとは思うが、その後彼は2度も英会話スクールに通い挫折をすることになるのだから。
良いことをすれば褒められる。

悪いことをすれば叱られる。

当たり前の話ではある。
これは、そんな彼が良いことと悪いことを理解する為のいいきっかけになった出来事である。

ある日彼は道端で10円玉を拾った。幼き彼が両親から、

「落とし物は交番に届けなさい。きっと困っている人がいるはずだからね」

と、落とし物は交番に届けること教わっていたので拾った10円を教えの通り交番に届けたのだ。もちろん、お巡りさんからは褒められ、両親からも「良いことをしたね」と褒められ、彼はとてもいい気分になった。

決して大きなことをしたわけではないが、

「良いことをしたら褒められる」

それを彼はこの時に学んだわけだが、それだけでは終わらないのがこの男だ。

彼はガンプラの次に夢中になったのはレゴブロックであった。レゴブロックとは、小さな組み立てブロック玩具であり、ブロックを自分の好きな形に組み合わせて遊ぶことが出来た。想像力しだいで無限に遊ぶことが出来る玩具で彼は様々な形を作っては壊し作っては壊しと夢中になっていた。
当時、同じような組み立てブロック玩具にはダイヤブロックという物あったのだが、彼はレゴブロックがとりわけ好きだった。その理由としては、レゴブロックには人を模した人形があったことだ。この人型のブロックがあったことでより世界観に浸れたのだと思う。

そんな夢中になるレゴブロックには様々な種類があり、彼は良くオモチャ屋に行っては売り場を眺め、帰ってきては両親に一生懸命ねだった。だが、決して裕福とはいえない彼の家ではなかなかおいそれと買って貰えることはなかった。

しかし、彼の欲求は日を追うごとに大きくなり、とうとうそれが行動へと移されてしまったのだ。

彼はいつものオモチャ屋に友達を連れて行った。向かうはレゴブロックの置いてある棚だ。棚にはいつものようにレゴブロックが積まれている。

次の瞬間、なんと彼は驚くべき行動に移った。彼は、友達を壁役に仕立てあげ、店員の一瞬の隙にレゴブロックを鷲掴みにして店から飛び出したのだ。

いわゆる「万引き」である。なんたる、馬鹿げたことを彼は考えたのだろうか。

レゴブロックを盗み出した彼と友達は一目散に走り逃げた。更に彼は盗んだレゴブロックをすぐに家まで持って帰れば親に怪しまれると思ったのか、自宅とオモチャ屋の間にある人気のない場所に隠して帰ったのだ。自宅に帰った彼は、ほとぼりがさめた頃にレゴブロックを回収に行くつもりだったのだろう。

とても幼稚園児が考えることではない。ただ、所詮は子供がやること。罰はすぐに訪れることになったのは言うまでもない。

自宅に帰ってまもなくオモチャ屋の店員がやって来たのだ。そう、彼は逃げたつもりがしっかりと後をつけられていたのだ。店員から事情を聞いた母親は当然のことながら平謝り。彼はそのまま母親と一緒に交番まで行って涙ながらに反省をしたのであった。

この時に彼は、

「悪いことをすれば叱られる」

ということを学んだのだ。

そうそう、この話には続きがあり、盗み出した品物を返す為、隠した場所へと行くも隠した場所には既に品物はなかった。
後日、彼がふと友達宅に行った際に見覚えがあるレゴブロックがあったとかなかったとか。