「いらっ しゃい!いらっしゃい~!!」
白衣を着た父は、
いつも威勢のいい声を出して
鰻をいっぱい焼いていた。
生まれた時から鰻屋だった私は、
“お菓子屋さんだったら、よかったのにな”と
小さい頃よく思ったものだ。
だけど、大人になったいまは違う。
朝早く車で仕入れにいく父の姿や、
鰻を焼きすぎて皮の厚くなった父の大きな手や、
お客さんと楽しそうに会話をする父や、
生臭い魚の匂いが染み付いた白衣を着た父。
どんな場面の父も
いまは、誇らしげに思える。
コトバに発しなくても、
背中でいろんなことを
わたしたちに見せてくれた。
今日ぐらい、
素直に“ありがとう”って
伝えられたらいいな。