私が生まれた9月30日の誕生花は、チョコレートの香りがするチョコレート色の花、チョコレートコスモス。
そして、今日が私の誕生日。
ーー誕生日おめでとう。
みんなが声をかけてくれる。
ーーありがとう。
もう今日は口角が上がりっぱなし、嬉しくて仕方ない。
放課後。
忘れ物を取りに今日に行くと、
君とあの子が仲よさそうに話してた。
咄嗟に教室から離れた。
雰囲気だけでわかった。あの2人付き合ってる。でも。信じたくなくて、夢中で走った。降り続いていた雨なんかどうでもよくて、ただ夢中で走った。
高一の夏からずっと君が好きだった。
ずっと片想い。好きとは告げられなかった。関係が壊れることをただただ恐れて。
馬鹿だ。突然訪れた恋の終わり。
私の君への恋の終わり。遣る瀬無い気持ちをどこに向ければよかったのだろうか。
17歳になったばかりの私はただ今にも溢れ出しそうな涙を忘れるために必死に走ることしかできなかった。
今日が私の恋の終わり。
誕生花のチョコレートコスモスの花言葉は皮肉にも「恋の終わり」だ。私は生まれたその日から今日君への恋が終わることが決まっていたのかもしれない。
もしも恋に終わりが決まっているのなら、
切なくて、儚いそして一瞬で訪れる恋の終わりが決まっているのなら、恋なんてしないほうが幸せだ。恋が始まらなければ終わりだってやってこない。
なのに。人は人に恋をする。人は知らぬ間に恋に落ちてしまう。例え、いつか来る恋の終わりがあるとわかっていても。
チョコレートコスモス。
凛と美しく咲き、儚く散る。誰も寄せ付けないその佇まいはまるで恋の終わりを知ってしまった淋しい独りの人間。だから人はこの花に可愛らしい名前を付けたのかもしれない。この花に似て恋に終わりがあると知った独りの人間にもチョコレートのような甘くてほんの少し苦い恋が訪れますようにと願いを込めて。
ひとりごと。