イレーヌ姫物語 続き
「“絶対”」の契約。古い魔法、と兄からは聞いていた。それだけだ、「あとは俺に任せて、君は真似してはいけない」、と兄は言っていた。 ヴァールハイトは、「俺をなめるな!!」と低く呟き、昼食のフォークをへしまげた。 周りの人が、びっくりしてヴァールハイトの方を見る。 どうすれば、兄がしていた「絶対」の契約の手順を、見つけることができるだろうか・・・?ヴァールハイトは慎重に考えた。(帰宅して、ミーナにこっそり聞いてみるか・・・・・)ヴァールハイトはそう思い、昼食に出された牛肉に手を付けた。「ミーナ!」まだ、兄・グラディウスは帰宅していなかった。「ん??ヴァールハイト兄さん、どうなさったの??」と、編み物をしていたミーナが顔を上げた。「あのだな、ミーナ、教えてほしいことが一つある。昨日、グラディウス兄さんが君と結んだ契約について、こっそり、兄さんに教えてくれ!君を不逞な輩から守りたいのは、俺も同じなんだ!」と、ヴァールハイトが一生懸命に言うので、ミーナは編み物の手を止め、少しぷっと笑い、「確か、これで、この国にいる限り、俺はいつでも君のもとへ駆けつけられる、とか、グラディウス兄さんはおっしゃっていたわよ、兄さん」と、ミーナは言ったのだった。「!なるほど、そういうことか・・・・・・・」と、ヴァールハイトがメモを取って言う。「分かった、ありがとう、ミーナ、いいな、このことはグラディウス兄さんには絶対ナイショだ!」と、ヴァールハイト。「はいはい」と言って、ミーナが編み物を再開する。(”この国にいる限り“、か・・・・・グラディウス兄さん、俺は負けませんよ!)と、ヴァールハイトが思いながら、メモ帳を手に、自室へと向かったのだった。(それなら、俺は・・・・・)と、ヴァールハイトがメモにあることを走り書きした。その直後、グラディウスたちが帰宅する音がした。「やあ、帰ったぞ、ミーナ、ヴァールハイトはいるかな??」と、グラディウス。「ええ、ヴァールハイト兄さんなら、さっき帰宅されたわ」と、ミーナ。ヴァールハイトとの約束なので、先ほどの会話のことは話さない。「そうか・・・・リユニオンさんと仕事帰りにばったり出会ってな、家にお招きすることにした」と、グラディウスが上機嫌で言う。「そう、兄さん。素敵だわ」と、ミーナ。「こんにちは、ミーナさん」と、リユニオンが片手を上げてやや笑顔で言った。「こんばんは」とミーナも、編み物の手を止めて、微笑む。「お世話になります」と、リユニオンが、ミーナやグラディウスの父・ラデクに挨拶をする。「娘の婚約者の兄君のリユニオン殿下、ようこそようこそ」と、ラデク。「お父様ったら」と、ミーナ。「いいじゃないか、ミーナ。それより、リユニオン殿下、どうぞこちらへ。食事を執事の者に用意させます」と、ラデク。「リユニオン殿下、ようこそいらっしゃいました」と、母・ブランシュ。「どうも、お邪魔してます」と、リユニオン。 リユニオンは、グラディウスとも親しかったし、この一家の家が好きだった。「ヴァールハイト・・・・??どうした・・・・??」と、グラディウスがヴァールハイトの部屋をノックする。「ヴァールハイト、何かあったのか。リユニオン殿下がいらっしゃったぞ」と、グラディウス。 ぎくりとして、ヴァールハイトは心臓の鼓動をおさえ、隠したメモ帳を確認し、戸を開けた。「何でもないんです、兄さん。リユニオンさんには、俺からも挨拶します」と、ヴァールハイト。