後ろの70年史 第十七回
今日はおにぎりの日だとか。
お客さんはコンビニのおにぎり以外のおにぎりを最近食べてます?
おれねえ、食べてないわ。
おにぎりの具って、何が好きですか?
おれなんかわさ、コンビニで買うときなんかわたらこ、しゃけこれが一番かな。
だけどさ、おにぎりで一番好きなものといったらナマコ、ご飯が見えないくらいにまぶしたのりたま。
これの右に出るものはないな。
その、のりたまでまぶしたおにぎりなんだけどね。
もう50年も前の話。
おれわよ、寄宿舎に入っていたのね。
そこでさ、寮母先生が時々なんだけど男子寮の生徒におにぎりをくれたのよ。
そのおにぎりがのりたまでご飯が見えないくらいにまぶしてあってさ、それがまたでかいのよ。
おれたちなんかわよ、食ってる先々から腹が減っていくお年頃じゃん。
だからさあ、それはそれはおれたちの腹ペコを満たしてくれる正義の味方。
そんなことをしてくれた先生は一人だけでさ、そりゃあもうありがたかったぜ。
なんかこんな話をするとおれたち相当貧しい生活を強いられていたのかって思われそうだけど。
そんなことはなくて結構買い食いはしてたのよ。
食堂のご飯が余ってたから、先生は食べ盛りのおれたちに、ちょいと失敬してきて食べさせてくれていた。
まあ寮母先生から見れば自分の子どもみたいなもの。
だから、ついつい可愛がってしまう、たぶん。
そんななんでもないおにぎりの味は忘れることはない。
おれの永遠のおにぎりは、でかくてのりたまをまぶしたもの。
のりたまを、しっかりまぶした、握り飯。
心の一句。
こんなところで、おひらき。