「さて今週はいかがでしたか」

「だいぶ落ち着いてきました」


(診察メモを見せる)

「(読みながら)うんうん。あ、これは?

興味深いんだけど詳しく聞かせてくれる?」


そこにはパニック発作が起きたけど

「平気、大丈夫。すぐに治まる」

と考えたら発作が15分で治まったと

書いていました。


「自己暗示みたいなものです」

「でもパニック発作の最中だったんでしょ?」

「動悸、発汗、手の震え等がありました」

「うんうん、そうだよね」


「パニックになってる純さんと

それを冷静に対応している純さんが

居たわけだよね?」

「そうですね」

「すごいなぁ、素晴らしい!」


「寝る前にエチゾラム2mg飲んでるから

昼間はなるべく飲まないようにしてます」

「睡眠はどう?」

「十分に眠れてます」

「落ち着いてきたら減らしていこうね」

「はい」


「『苦しい解離現象』とは?」

「んー、上手く言えないんですけど

私の中に一回り小さな私がいるんです。

交代じゃなく同時に存在していて・・・」


「ガンダムみたいな感じ?」

「あ、そうですね。ガンダムみたいな。

中の人は感情も無いみたいで人格とは

言えないのかもしれないです」


「10月11日に渡しているメモがあると

思うんですけど」

(カルテをめくる先生)

「あった。確かにクロってある」

「人格っぽくないからクロって

名付けてたんですけど」


「離人感もあって、視界もレンズを

通したように見えて」

「どう苦しい?」

「離人感も苦しいし、視界の見え方もだし

何より小さな私が胸から飛び出しそうで」


「共存してるんだよね?」

「(二人揃って)同時に存在している!

そうそう!」


「小さな純さんは何を考えているんだろ?」

「うーん・・・」

「・・・え?(苦笑)」


先生は机から椅子を引いて、

カルテを膝の上に置いて

カルテ1ページいっぱいに書いた

図や情報を見ながら悩んでいました。


出た結論は・・・

「純さんが強くなったんじゃないかな。

今までは何かあると『はい、交代~』と

言う感じだったけど、今は本来の純さんが

そうさせまいとしてるんじゃないかな」

「なるほど、それなら納得出来ます」


「本当は今日は『躁鬱も落ち着いてます』

『解離も落ち着いてます』と言うつもり

だったんですけど、1週間振り返ったら

これか苦しかったんだと書き足しました」

「だから手書きなんだね」

「はい」


「他に僕にそうじゃないんだよとか

伝えたい事、聞きたい事無いですか?」

「いえ、ありません。十分です」


「それではお薬は4週間分でいいですか」

「はい、お願いします」

「来月の10日までありますね」

「一応、手持ちに1週間分あります」

「いいですよ。ではお大事に」

「ありがとうございました」