「純さん、今週はどうでしたか?」

「祖母が入院してドタバタしてます」

「入院?」


(診察メモを渡す)


「ありゃ、転倒したかー」

「はい」

「股関節骨折?大変だ」


祖母の容態を話す。 


「酸素とせん妄だね。手術するんでしょ?」
「それが皮膚疾患もあって出来るかどうか
皮膚科の先生と相談しながら検討するって
ことらしいです。輸血もしてるから
手術に至るかどうか・・・」

「夜中に起き上がって動いたりするから
ベッド上安静も怪しいから、手術出来なければ
完治まで時間がかかるかと思います」

「そっかぁ。今は物を持って行ったり
先生との話し合いとかで忙しいのかな」
「それもありますが、祖母は炊事を
してくれていたんです。10人分」

「え?10人?」
「うちが6人と隣の兄家族が4人で義姉が
仕事に行くから夕飯の支度を・・・」
「それをおばあちゃんが。いくつだっけ?」
「89歳です」
「89かぁ、すごいね」

「その炊事を母が一手に引き受ける形になって
母の負担が一気に増えてます」
「なるほど」
「で、『あんたも手伝いなさい』って感じで
と言っても、箸を並べたり、お茶汲んだり、
ご飯よそったりくらいしか出来ないけど」
「それでも助かってると思うよ」
「そうですね」

「眼科。緑内障は開放型だったんだね。
良かった。あとは点眼を継続して
気をつけてくださいね」
「はい」

「入浴後のパニック発作。エチゾラム飲まずに
しのげた。よく頑張ってるね。どうやった?」
「I先生に習った呼吸法でしのぎました」
「どんな呼吸法だったっけ?」
「鼻から吸って、口から吐くやつです」
「なるほど」

「あとは緊張するんで、脱力法ですかね。
一旦ギュッと力を入れて、パッと抜く」
「あー、筋弛緩法?」
「そうです、そうです」

「それで何分くらいかかる?」
「20分くらいかな。エチゾラム飲めば
もっと早く落ち着くんですけど」
「敢えて遠回りしたんだね」

「1年前のパニック発作を思い出して
予期不安に繋がるか。去年はどうだったかな?」
(カルテを捲って入院記録を見る先生)
「不安により行動範囲が狭くなるってあるね」
「はい」

「予期不安のうちならエチゾラム1mgで
効くので飲んでも仕方ないと思ってる、か」
「はい」
「いいと思うよ。必要なら飲んでいいと思う。
CBTする時間が無いって書いてあるけど、
エチゾラム飲んだからCBTしちゃいけないと
いうことはないと思うからね」

「エチゾラム飲んで落ち着いてから
CBTに取り組んでもいいと思うよ。
復習しておけば、次になった時に
『あぁこの予期不安にはこんな自動思考が
あって、こんな修正思考を思ったんだ』って
予習という形にもなるからね」
「なるほどですね。分かりました」

「そういうことしたことある?」
「入院中に過呼吸起こしてたんですけど
その度にCBTしたノートを枕元に置いて
次に過呼吸起こした時にナースコールを
押して看護師さんがきてくれて
薬を飲む前に、そう、先生が言われたように
復習しましょうと言って、CBTノートを
読み上げてくれたりしてました」

「ほうほう、なるほどね。いい事だね。
それを今度は自分でやってみるのはどうかな」
「はい、取り組んでみます」

「今日から生理?しんどい?」
「しんどいです」
「しんどいかぁ」
「痛み止め忘れてお腹痛いです」
「あちゃー」

「他には何かありませんか?あ、LINE広場
(他人格との交流アプリ)はどうなってる?」
「あ、あります」
(スマホを渡す)

「ふむふむ、悠真に諭されてるね。記録する
時間がなかった・・・脳内で交流はあったってこと?」
「はい」
「いいよー、全部記録しなくても」

「娘ちゃんと入院したおばあちゃんは
上手くいってなかったのかな」
「お互いに距離感が掴めなくてですね」
「なるほどね」

「今は悠真とマサトだけかな、出てくるのは」
「あとは郁美ちゃんです」
「郁美ちゃん?」
「16歳の。娘関連で出てくる」
「あーね」

「おばあちゃん、マイスリー飲んでたのか。
あれはせん妄出るもんねぇ」
「家でも夜中に食事したりしてた事があって・・・」
「あー、朝になったら気付くやつ?」
「それがこれ夜中に食べたでしょって言っても
記憶にないって言うんです」

「主治医の先生に家での状態を伝えて
飲まないようにした方がいいよ」
「やっぱりそうですよね」
「はっきり言って良いよ、治療にならないからね」
「分かりました」

「次の予約は15日は入ってるから・・・」
「あ、22日は前日の21日にコロナワクチンの
5回目を打つことになって、たぶん熱が出ると
思うのでお休みにさせてください」
「それがいいね。薬は29日まであるけど
他に必要な薬ある?」
「ありません」

「はい。純さんはよく頑張ってます!」
「ありがとうございます!」
「ではお大事に」
「失礼します」