ルシアとローデヴェイクの仲は、相変わらずよくて、典型的な幼馴染、という感じだったが、ルシアは案外、兄の友人や知人と知り合うことも多かった。

「こんにちは、アーサー君」と、その日、おしのびで、剣術の稽古を見学に来ていたオーデル王が言った。

「!?!?!?」斬り合いをしていたアーサーは、突然現れたエルフの王に驚きを隠せず、動揺し、その隙に、稽古をつけてもらっていたギン隊長に一本取られてしまった。

「おやおや、邪魔をしてしまったかな」と、オーデル王がくすりと笑う。

「ギン隊長、アーサー君はどの星々の神と契約を・・?」と、オーデル王が、ギン隊長に向かって聞いた。

「陛下、アーサー君は竪琴座だったと思います」と、ギン隊長が言った。

「そうですか・・・いや、これは邪魔をしました、では」と、オーデル王が微笑んだので、アーサーとギン隊長は、敬礼のポーズをして、回廊を護衛の列と歩くオーデル王が去っていくのを見守った。

 王が立ち去ってしまうと、アーサーは冷や汗をかいて、稽古の続きを行った。アーサーが竪琴座と契約したのは、母からの勧めだった。アーサーも気に入っていた。竪琴座の風の刃の技を受けた相手は、気絶して寝入ってしまうのだ。

 ある日、20歳のルシアが、ウルドの集まりに、見習いとして行っていたとき、ミスティーナ女王陛下が見学にやってきたことがあった。女王陛下は、あえて王族のウルド・ルシアに、私の将来を見ていただきたい、と頼みこんできたのだった。

「ルシア・ペンドラゴンさん、こんにちは」と、ミスティーナ女王陛下が言って挨拶をした。

「陛下!!」と、ルシアの侍女たちが緊張して深々とお辞儀をした。女王は、その時2000歳を超えている、創世の世からいる上古のエルフなのだ。

「女王陛下、見てみます!」と、ルシアが言って、水晶玉を前に、スクライングを行った。

 水晶玉に、通常の人にはできない、銀のもやのような渦が現れ、消えては浮かんでいく。これができるのは、ウルドの証拠だった。

 突如、銀のもやが、真っ赤な血の渦に変わった。

「陛下、危機は差し迫っています、50年もしないうちに、悪が攻め入って来るでしょう、この世界に。イブハールではなく、世界アラシュアに・・・多くの人間の血が流れるでしょう」と、ルシアが言った。

 女王ミスティーナは憂いの顔を崩さず、「そうですか・・・」と考え込んだ。

「ありがとう、小さなウルドさん。また占ってね」と言って、ミスティーナ女王は、他の成人しているウルドたちに、意見を求めに行った。