(俺は今回は見学役・・・あくまでもな)

しっかり前をみやり、アーサーは父から譲りうけた剣を手に、武具を身につけに別の部屋へと向かった。

 

「よう、アーサー」

 部屋で、召使いから鉄の鎧をつけてもらったアーサーは、廊下で、同じく武装したクラウスに会った。

「む、アーサー・・・」クラウスの隣には、ヴィンセントもいた。

「もう時間だ、出陣まで時間がない」と、クラウスが言った。

 クラウスもヴィンセントも、鎧に、リダインというエルフの使う金属を使っていた。軽くて丈夫な金属で、人間界には流通していない。

 アーサーも、護衛の兵10名とともに、馬に乗って、ミスト・ロードを越えて行った。この白いもやの世界を抜ければ、そこは人間界だ。

 人間界(リラ)に出て、アーサーはまず角笛の音を聞いた。敵軍が高らかに鳴らしているのだ。すでに、戦の喧騒の音が聞こえる。

「アーサー様、これ以上前に出ないようにお願いいたします」と、護衛の召使いが言った。

「お、おう・・・」アーサーは、自然と、目で父の姿を探した。

「アーサー様、これを」と、召使いが望遠鏡のようなもの(小型)を取り出して渡した。

「遠くまでよく見えます」

 アーサーはありがたくそれを受け取ると、必死になって父の姿を探した。

「エッケハルト様のお姿は、10時の方向前方です。今のところ、化け物軍の劣勢です」と、召使いが喜びの声を上げる。

「分かった」と、アーサー。

 エルフ軍400名に対して、死霊の国からの刺客は1万兵ほどだった。アザトゥースやイグ・ハンの青や緑の血が、大地を濡らす。エルフ軍は、ほぼ死者は出ていない様だ。負傷者も、後ろに下がり、手当を受けている。人間と違い、エルフは、剣を使う人でも、医療魔術が使える。自分自身にも。

(いた、父上だ・・・!!!)と、アーサーの望遠鏡が、エッケハルトの姿をとらえた。

 馬に乗りながら、剣を振り回して、アザトゥースの首を斬り殺している。

「続け、続けーーーーっ!!」と、口の動きを見て、父が部下にそう叫んでいるのが分かった。

(父上・・・・!!)

「アーサー様、ここも次期危険になります、弓矢隊のところまで下がりましょう」と、アーサーの召使いが言った。

 アーサーは、普段温厚な、父の背中を、ここまで頼もしく思ったことはなかった。

(父上、ご武運を・・・!!)と思いつつ、部下に先導されて、アーサーは馬を操って、崖上の弓矢隊のところまで移動して行った。