「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と、2~30分ぐらいたったころだろうか、二人の部屋を仕切るドアの外から声がした。
カチャリと音がして、ルシアが入ってくる。
「ルシア・・・」
「お兄ちゃん、何してるの?・・・その剣、なに??」と、ルシアが物珍しそうに言う。
アーサーははっとして、その剣をベッドの後ろの方に投げた。
「女の子が見るもんじゃないよ!ルシア!それより、ルシアは今夜のパーティー・・・行くわけないか、そりゃそうだよな」と、アーサーが独り言に近い言葉を言う。
「ルシア、つっ立ってないでこっちおいで」と、アーサーがルシアをベッドに呼んで、座らせる。
「お兄ちゃん、明日から一週間ぐらいかな、ちょっと遠くへ行ってくる。必ず戻ってくるから、ルシアはいい子で待ってるんだぞ」と、アーサー。
「?う、うん、お兄ちゃん・・・」と、ルシア。
「最近勉強の方はどう??家庭教師の先生、怖くない?」と、アーサー。
「聞いて、お兄ちゃん、文字は全部書けるようになったのよ!最近は本の朗読もしてるの!」と、ルシア。
「そう・・・ならよかった」
「変なお兄ちゃん。元気ない。ルシアがキスしてあげる」と言って、ルシアがアーサーの頬にキスをした。
「!!!」
「じゃね、お兄ちゃん」と言って、ルシアは手を振ってドアの向こうへ消えていった。
「・・・誰に似たんだ??」と、アーサーがあっけに取られて言う。
ルシアに、戦争に行くということを言っても、きっとあの年齢ではうまく理解できないだろう、とアーサーは思ったのだった。
そして翌日がやって来た。
身支度を終え、ドアをちらりと見やり、
(ルシア、お兄ちゃんは無茶しないから、絶対帰ってくるからな)と心の中で思ったのだった。
(俺は今回は見学役・・・あくまでもな)