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 三日三晩、プラトンは休むことなく、高速スピードで、星のかけらをモーリシャスめがけて飛んだ。ミカエル様との通信から、どの病院の窓かは、知っていた。不死鳥は、早く飛ぼうと思えば、かなりの速度で飛べるのだ。

 やがて、「その日」が来た。夜明けが近い中、薄暗い中、早朝、プラトンはモーリシャスの、へーゼルの入院している病院にたどり着いた。窓枠にうまくとまったプラトンは、窓ガラスを割って中に入ろうか、とさえ思ったが、待機していたナスターシャ、ノア、アルヴィンの姿を見て、ほっとした。残念ながら、3人とも、ヘーゼルの看病に疲れて、部屋の椅子で眠っていたが。

 プラトンは、くちばしで虫取り網の柄の部分を加えていたため、鳴き声をあげることができなかった。

 そこで、頭突きで窓を叩いた。何度か叩いたところで、中のナスターシャが気づいたようだった。目をこすり、起き上がり、窓枠へ寄ってきてくれた。

 ナスターシャがノアを起こす。二人で窓を開けると、プラトンが病室内に入った。

 ノアが、その虫取り網の中の、光る球体のようなものを取り出し、大天使ミカエル様に言われた通り、ヘーゼルの心臓の上にそっと置いた。すると、その光ごと、星のかけらはヘーゼルの心臓部にすっととけるように入っていった。

「うまくいったようだ・・・!!」と、ノアが冷や汗をかく。

『マイマスター、ガデル様』と、プラトンがノアに近付いて言った。

「ええと、君は、プラトン!!」と、ノア。

『お力になれて何より・・・私はもう死にますが、また会いましょう』と言って、過労のせいか、病室内で倒れ、炎で包まれたプラトンは、その炎がなくなった瞬間、燃えカスとなっていた。しかし、次の瞬間、再び炎が燃えあがり、中から美しい不死鳥が出て来た。だから「不死」なのだ。何度でも蘇る。

 プラトンは、自身の命を顧みず、無茶して飛び続けたらしい。ノアが唖然とする。ファニタがこの場にいたのなら、きっと悲しくて泣いていただろう。

「あら、ノア・・・??」と、病室の枕から声がした。ヘーゼルの声だ。酸素マスクを、自分で取っている。そして、少し起き上がる。

「ヘーゼル!!」と、ノアが声を出した。

「ノア!」と、ヘーゼルが微笑む。心なしか、青白かった顔が、ほんのり明るく見える。

「ヘーゼル、気が付いたのね!よかった!!」と、ナスターシャがヘーゼルに抱き着く。

「ナスターシャ、来てくれてたのね、ありがとう・・・私、車に乗ったところまでは覚えてるんだけど・・・」と、ヘーゼル。

 一行はオフェリアを呼びに行って、ヘーゼルが目を覚ましたことを、医者に報告した。

 役目を終えたプラトンは、アルヴィンの知恵で、アルヴィンの持ってきた大きなボストンバッグの中に隠れた。

「ありえない・・・」と、飛んでやってきた医者がヘーゼルの心臓の音を、聴診器で聞いて言った。

「正常です。呼吸、脈、ともに安定。よかった、しかし一体何が・・・・?」

 一同は、星のかけらのことを話した。

「まさかそんなことがねぇ!だが、今のヘーゼルさんの心臓は正常です、それならよかった!これは奇跡だ!」と、医者が言った。

 

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 やがて、ヘーゼルが退院して、故郷・ランカシャーの町に戻る日が来た。文通していたので、ランカシャーの町で、ラインハルト一行とも落ち合う計画だった。