「失礼します、村長様。お世話になりました」と、ハルモニア。
「よし、手がかりができた!あとは、そのユルングとかいう虹蛇を探すだけだな!!」と、ハルモニア。
「やったわね、この本さえあれば、そしてプラトンの知恵と合わせれば、なんとかなるかも!!」と、ファニタ。
*
「ノア、本当に来ないの」と、ナスターシャが言った。
ナスターシャは、これから、婚約者・アルヴィンの運転する車で、首都モーリシャスまで長旅に行く予定だった。
だが、ノアは、あれからすっかり落ち込んでしまい、勤め先にも行かず、ナスターシャとも連絡をあまりとらず、家に引きこもっていた。
「もうヘーゼルは自発呼吸ができないらしい。機械につながれている彼女は、見たくないんだ」と、ノアが言った。
「そう」と、言って、ナスターシャは涙が出てきそうになるのを抑えて言った。
「ならいいわ、後悔しても遅いのよ、ヘーゼルとは婚約したいと言ってたじゃない!ノア、しっかりして!」と、ナスターシャ。
「そうだね」と、ノア。
「だけど、僕はそばにいながら何もできなかった・・・。もう死にたいよ」とノアが言った。
「ノア、あなたも天使の生まれ変わり、って聞いたわ。(その頃には、ノアがナスターシャにも事情を話していた)その話が本当なら、あなたは双子の妹さんの最期を看取る義務があると、私は思うわ」と、最期涙声になって、ナスターシャが言った。
「・・・そうだね、ナスターシャ、君の言うことは正しい」と、ノア。
「おい、もう出発しないと。ノアさん、ここは勇気を出して!」と、アルヴィンが車から降りて言う。
「・・・・」
――ノアの下した決断とは。
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「ユルングは、イサベラ高原の湖の奥底に住んでいる、古い神である。その存在は、今世を生きる我々の知る領分をはるかに超えている」と、ラインハルトが古文書を読み上げた。
「古くは、流星群を期待し、祭りを起こした人々が、天を泳ぐ姿を見たのが始まり、と言われている」と、ハルモニアが覗き込む。