さきしまコスモタワーでのイベント中止のみならず、ライブハウスやライブ活動自体が悪と見做される社会の風潮、先の見えぬ不安と畏れが日本中を包んでいました。


たった1つだけ許された、そして活動を行う上で自己責任の範疇ではありますが生まれた文化がありました。昔からなかったわけではありませんでしたが、コロナ禍で唯一のカンダタの糸のような活動のあり方。


配信無観客ライブ。


思い返してみても、異質で、奇妙な表現方法。


無人の会場に向けて、画面の向こうにいるであろう観客に向けてのライブステージ。表現者や我々イベンターは、そこに活路を見つけるしかありませんでした。


多分に漏れず、僕も配信ライブの企画に乗り出しました。さきしまが使えない以上、他に手立てがあるわけでもなく、ただ、さきしまでこそのイベントをとの大義から外れるであろうことには、僕のイベンターとしての存在意義も含め、葛藤がありました。


初の配信無観客イベントのタイトルは、「dの純情 #1」。小文字のdは、いつものDの純情とは違う、配信ライブだというのを意識してdigitalのdから命名しました。会場は、いつもお世話になっている堀江Goldeeさんに協力していただきました。


堀江Goldeeさんとのお仕事の繋がりは、また別の機会に話しますが、僕にはRe:birthを見送った思い出深い会場です。今でも本当にお世話になっている大切な場所の1つです。


開催は2020年5月23日。前年の同じ頃に船出したDの純情ですが、まさか1年先に無観客配信ライブをしているなんて誰が想像したでしょう。この日の出演は柊ゆうさん、BBBzzさん(現在は解散)、Magic Timeさん、MaleeNaさんはこの時、WOMBAT大好きIDOL MaleeNa名義でしたね笑、以上4組での配信ライブでした。


今でも思い出します。関係者しかいないGoldeeのフロア。無人のカメラの向こうを相手に手探りながらも懸命に努めてくれた演者様、反応の返ってこないライブの満足度はいかほどのものだったのか?不本意なステージではなかったか?それでも何とかライブが出来る喜びを感じてくれているだろうか?


空虚な無機質さの中で奇妙さを覚えもする感覚、パフォーマンスの素晴らしさ、色んな感覚が湧き起こり、初めての無観客配信ライブは、懸命な演者様と、何処か他人事のようなリアルさを見失った僕とには埋めがたい時差のようなものがあったと今でも感じています。簡単に言えば、手応えのなさ。


今、配信ライブは新しい観客層とニーズを生み出し、1つの分野としての新しい地位を得たフェーズにあります。有観客が解禁となっても、遠方の方や当日足を運べなかった方にアーカイブとして楽しむ文化が確立し、プラットフォームの充実や、新たな商業的環境の整備がなされ、配信勢なんて言葉も当たり前に定着しました。文化は成熟し、画面の向こうの見えないあなたを見通す演者側のスキルや意識の向上は、この黎明期には考えられなかったムーブです。


しかしながら、いつまでも僕自身が配信ライブにあまり心が振れないのはこの時の物悲しさが少なからずマイナスに働いているからだと思います。試行錯誤は続いていきます。


(時代は配信へ、続きます)