私が作る料理は9割が魚で、そのうちのまた7割ほどがイワシ、サバ、アジのいわゆる「青魚」です。
 

その次くらいに来るものの一つが、イナダでしょうか。何しろ安いもので。その姿も格好いいと思っています。あの見事な紡錘形の力強い形と、隈取のように目の横を走る黄色の線。惚れ惚れします。

いつも行く魚屋さんでは、大体1尾で300~500円、それで分量としては十分です。


イナダは、ブリの少年時代です。よく知られているように、ブリは「出世魚」として、大きくなるにつれて呼び名が変わります。
関東では、ワカシ → イナダ(40cmくらい) → ワラサ → ブリ
関西では、ツバス → ハマチ → メジロ → ブリ 
が一般的なようです。
 

個人的な印象では、関東においてですが、イナダを丸ごとで売っているか、ブリを切り身で売っているかで、それ以外のワカシ、ワラサという呼び名はあまり見かけた記憶がありません。多分、眼中に入っていないだけだろうと思います。おぼろげに、小田原の魚屋でお惣菜のフライで売っていたかもしれません。
 

イナダは、ブリと違って脂はあまり乗っておらず、その分あっさりした味でしつこくなく、刺身で食べてもとても美味しいです。


頭や骨などの「アラ」は、それなりの大きさなので、味噌汁にしたりします。しかし、やはり脂があまり乗っていないせいか、正直なところあまりおいしくはありません。この点はタイなどのアラに比べると格段に劣り、私以外の家人など、見向きもしません。

 

私がこれを食べるのも、おいしいからではなく、もったいないから、というのが大きいです。それは、お金がもったいないというよりも、海の中の熾烈な生存競争をここまで生き抜いて、外の生き物を食べてここまで大きな体を作ってきたのに、これをそのままゴミにするのはあまりにしのびない、という思いからです。

これは私が特別慈悲の心にあふれているからではなく、多分私でなくても、こうやって切り身ではなく生きている時と同じ姿の魚を手にすると、多くの人がそういう思いにとらわれるのではないかと思います。


ついでに言うと、最後はやはりごみが出るのですが、夏場など、加熱してある方が腐敗臭を減らせるという、かなり現実的な利点もあります。
 

それにしても、毎回毎回生活感ばかりがにじみ出てしまうブログです。