子どものころ、長い間憧れだった食べ物がありました。


レストランや喫茶店の店頭のウィンドウに見本で置いてある、「パフェ」。
何ておいしそうな食べ物なんだ・・・。
その豪華な外見は、子どもの心をつかむには十分過ぎるものでした。

 

後年知りましたが、「パフェ」とは「完全な」という意味のフランス語だそうで、完全なデザート、ということから名付けられたそうです。
 

私の家では外食は滅多になく、たまにあっても、そんなものを食べさせてくれる家ではありませんでした。きょうだい4人だったので、全員に食べさせていたら結構な出費になったというのもあっただろうと思います。

私も、これは無理だろうという意識があったのか、これについては親にしつこく頼んだ記憶はありません(私の記憶の限りでは)。

いつか、あれを食べてやるぞ。店先に展示されている見本のパフェを見ては、そう心に思っていました。

その長年の夢が実現したのは、高校3年の3月、大学受験が終わった日でした。受験会場でたまたま会った友人と帰る途中、パフェでも食べよう、と話し、駅の地下の喫茶店に入りました。

頼んだのはチョコレートパフェ。
これがパフェか・・・。
感想としては、「普通においしい」と言ったところでした。
安っぽい店でしたし、多分、パフェとしてはごく普通か下ぐらいのものだったろうと思います。
それでも、それなりの満足感が心を満たしていました。

そして、その月、堰を切ったように、合計6回パフェを食べました。あほかと思われそうですが、こんなに食べたのは人生でもこの時だけで、それ以降は数か月に1回程度、それも段々減っていきました。

今では、前回いつ食べたか覚えてないくらい滅多に食べません。(イワシやサバの方がよっぽど食べてます)
 

そして、かつてはパフェを食べる姿も様になっていたであろう豊頬の美少年(であったと信じたい)の面影は、今やどこに求めようもありません。

もう憧れの食べ物ではなくなってしまいましたが、それでも時々街角で昭和な感じのパフェを見ると、昔のアイドル歌手でも見るような気持になります。

最近見かけた、昭和な感じのパフェ(令和2年7月、小田原市内にて)。