《ドラマウォッチャー座談会》「主演陣を食う存在感」”2~3番手女優”の演技が凄い!

 

 

 

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市川実日子(46)《親友役の好感度が高い》昨年3月、映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』のイベントに出席。同作で坂口健太郎(32)の恋人役を演じた

 

田幸和歌子(ライター) 2~3番手で活躍している女優といえば、市川実日子(みかこ)(46)の名前を挙げずにはいられませんね。彼女は脇役としての存在感が半端ない。松たか子(47)主演の『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)や朝ドラ『カムカムエヴリバディ』などで主人公の親友役を演じてきました。媚びない、空気を読まない、嘘をつかないような役柄ばかりで好感度が高い。

市川と親友というだけで「芯があって素敵な人なんだろうな」と思っちゃいます。彼女が親友だと主人公の株が上がりますね。 

【納得っ!】彼女たちが2~3番手のドラマは面白い!バイプレイヤーを紹介(写真9枚) 

 

大山くまお(ライター) 市川は石原さとみ(37)主演の『アンナチュラル』(TBS系)での親友兼バディ役で一気にそのイメージを確立しましたね。彼女と同じくらい頼もしい親友役を演じてきているのが古川琴音(27)。

 

『この恋あたためますか』(TBS系)では森七菜(22)の中国人ルームメイトのスーちゃん役、映画『今夜、世界からこの恋が消えても』では、福本莉子(23)が演じた記憶障害の主人公を支える親友・泉役を好演。彼女が親友なら安心感がありますね。 北川昌弘(ドラマウォッチャー) 親友役と同じく重要なのは姉妹役です。最近は木南晴夏(38)の活躍が目覚ましい。

 

『セクシー田中さん』(日本テレビ系)で主演して注目を集めましたが、名脇役のイメージが強い。4月クールは『おいハンサム!!2』(フジ系)と『9ボーダー』(TBS系)の二つの連ドラに出ています。三姉妹の長女という役柄が被っていますが、どちらもリアリティのある自然な演技でついつい惹かれましたね。 大山 2~3番手で活躍する役者は、作品と現実を繋げる役割を果たしているのかもしれません。主役は誰が見ても「かわいい」「素敵」という雲の上の存在。

その隣に、華やかな世界と現実の世界を繋ぎ、ドラマにリアリティを与える人たちがいるわけです。 北川 確かにそうかもしれません。小野花梨(25)も、童顔でかわいいんですけど、本当に存在していそうな感じがして目が離せません。

 

『罠の戦争』(フジ系)ではしっかり者の秘書役で、草彅剛(49)が演じる主人公の政治家を支えました。かつて自分がパワハラを受けていた上司が失脚した時に「ほんと救いようがないよなぁ、自覚のないクズって」と吐き捨てるシーンは、ネットで「気持ち、わかる」と激しく同意されました。 

田幸 小野は演技が上手いからどんな役でもハマりますよね。この前『初恋、ざらり』(テレビ東京系)で主演したけど、軽度知的障害の女性の役がリアルすぎてドキュメンタリーを見ているようでした。 大山 木南も小野もそうですが、少し前まで脇役のイメージが強かった女優たちが最近は主演に抜擢されている。近年は多様性という考え方が浸透してきて、軽度知的障害やコミュ障など様々なバックボーンを持つ人が主人公となる作品が増えてきています。

そこで主役に選ばれるのは、難しい役柄に馴染む名脇役の方たち。

 

 北川 『セクシー田中さん』や『あたりのキッチン!』(フジ系)もコミュ障の人が主人公でしたね。今の世の中、コミュ障の人のほうが多いと僕は思います。「我々の代表」というような役柄を、誰がどう見ても人生勝ち組の役者が演じると説得力が欠けてしまう。そこで2~3番手女優の出番というわけです。

 

 ◆主演を食う「存在感」 大山 「我々の代表」といえば、『虎に翼』で主人公の親友・花江役を演じている森田望智(みさと)(27)がまさにそうですね。日本初の女性弁護士が主人公の物語ですが、誰もがそんな存在になれるわけではない。家庭に入って家族を一生懸命に支える″普通″の女性を代表するのが花江です。おっとりしていて、少しクセのある話し方で「したたかにいきなさい」という名言を生み出した、人気の高いキャラクターです。

 

森田は、リアリティがあるというより、憑依型女優ですね。『全裸監督』(Netflix)では伝説のAV女優・黒木香、『恋する母たち』(TBS系)では仲里依紗(34)の夫の不倫相手など、クセありまくりの役を演じてきました。『全裸監督』での体あたりの演技は言わずもがなですが、『恋する母たち』では、不倫相手なのに本妻のところに行って「奥さんの顔を見に来ました」と言ってのける。強烈すぎて、主演陣の木村佳乃(48)や吉田羊などを完全に食っていました。

 

 田幸 その一方で森田はクセのない役もできるんですよ。『妻、小学生になる。』(TBS系)では、主演の堤真一(59)に恋する上司役で、普通にかわいい女の子でした。彼女は本当にどんな役にもハマるからあらゆる番手で活躍できます。

 

 大山 もう一人、『恋する母たち』で活躍した瀧内公美(くみ)(34)も憑依型ですね。瀧内は華があって笑顔もかわいいのに、嫌な女役もしっかりハマる。このドラマでは、木村佳乃が演じる主人公の夫の元妻役で、主人公の前で元夫にくっついたり、主人公に「あんた子供いるでしょ?」など嫌味を言ったりする。一方で『新空港占拠』(日テレ系)では正義感の強い警部補役を好演しました。 田幸 瀧内はやはり嫌な役のほうが印象的です。意地悪をした時に、あの三日月形の目で嬉しそうに笑うのが――気味が悪くて大好きなんですよ(笑)。対照的なのが、特定の役にハマる田中みな実(37)。

『最愛』(TBS系)では、ワケありの地味なフリーライター役が「違和感がある」と盛大に叩かれていたけど、『あなたがしてくれなくても』(フジ系)でのファッション誌副編集長役は、彼女自身が持つカリスマ性とマッチして、ものすごくハマっていました。 

 

大山 『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)での、主人公の音楽プロデューサー・マサに想いを寄せる秘書役も話題になりましたよね。ストーカー並みの執着心で奇行に走るエキセントリックな役が見事にハマりました。 

 

北川 ハマる役は限られているけど、ハマるとものすごく力を発揮しますね。 田幸 ストイックで頑張る人だと思いますが、それで力が入りすぎてしまうところがある。美人すぎるのも難点なんです。そういう意味で、最初は美少女としてブレイクしたけど、最近は地味な女性役として2~3番手で活躍している夏帆(32)はすごい。

『silent』(フジ系)では耳の聞こえない女性役で、川口春奈(29)が演じる主人公の紬と同じ男性に好意を抱くのですが、手話で紬に感情をぶつけるシーンは、勢いのある手話と表情に圧倒されました。そうかと思えば、『ブラッシュアップライフ』(日テレ系)では、主人公の幼馴染役で、どこにでもいそうだけど愛しく思える33歳の女性を好演しました。 

 

◆使い方がもったいない 大山 夏帆は本当に華があって主演もたくさんしてきたけど、そのキラキラを消してここまで″普通の人″になりきれるのがすごいですね。個人的に、もっと活躍してもいいかなと思うのは、富田望生(みう)(24)です。

どうですか? 

 

田幸 彼女は本当に上手い。上手いのに、三枚目役しか与えられないのがかわいそう。『ブギウギ』の小夜役は、お笑い的な極端な芝居が引っかかりました。 大山 トラブルメーカーで引っかき回す役でしたね。確かに賛否がわかれました。彼女を見ていると、『ふぞろいの林檎たち』(TBS系)を思い出します。同作で中島唱子(58)は容姿にコンプレックスを抱える女性を演じて、日本中が知る女優となりました。富田も、いつかこのような作品と巡り合えたらいいですね。同じく作品との巡り合いがイマイチなのが田辺桃子(24)。

4月ドラマではヒロインとして『お迎え渋谷くん』(フジ系)に出ていましたが、主人公を引き立たせるのが主眼のラブストーリーの相手役に起用されるのはもったいなさすぎます。 田幸 田辺は北川景子(37)主演の『リコカツ』(TBS系)での、主人公の夫に惚れて、筑前煮を持って家に押しかける女性役が印象深いです。いい子そうに見えて図々しくて気味が悪い。あの″筑前煮女″役のインパクトが強かったですね。

 

 大山 あの時はまだ21歳でしたが、『恋する母たち』の森田みたいに、世間をざわつかせた。 田幸 杉咲花(26)主演の『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日テレ系)ではヒロインの盲学校の同級生役。弱視で目が見えにくいけど、健気で恋に積極的な子に扮した。あの役もよかったです。 そういえば、すごい大物を忘れていました。三浦透子(27)です。

あれだけ上手いのに、ほとんど主演はやっていない。

『エルピス―希望、あるいは災い―』(フジ系)では主人公を事件の調査に導いたヘアメイクのチェリー役、『ブラッシュアップライフ』では人生をやり直せても同じ人生を選ぶ市役所の職員役と、いろんな作品でキーパーソンを演じてきました。

’23年放送の『大奥』(NHK)で演じた家重は言語・排尿障害があるため下に見られるけど、実はとても賢い女性。彼女が抱える想像し難い苦しみを見事に表現した。あの圧巻の演技は原作ファンからも絶賛されていました。 

 

大山 ノンバーバル(非言語)と言いますか、映画『ドライブ・マイ・カー』では無口な運転手役でしたが、彼女は言葉じゃないところでの表現力が素晴らしい。

 

 北川 三浦は子役出身ですね。「なっちゃん」のCMに出ていたのを覚えています。女優業だけではなく、『六本木クラス』(テレ朝系)の挿入歌や、『何かおかしい』(テレ東系)の主題歌を担当するなど、歌手としての活躍も目覚ましいのですが、彼女がいると確実に作品のレベルが上がるので、今後もドラマに引っ張りだこでしょうね。

 

 『FRIDAY』2024年7月5・12日号より