近大に快勝し春季T決勝に進むも、スクラムに課題

関西大学ラグビー春季トーナメント(6月16日)


春季トーナメント3回戦、対戦するのは春シーズンいまだ負け無しの近大。辻野隼大キャプテンは「全勝の相手にリスペクトをもって戦いたい」と意気込んだ。全勝対決、どちらに軍配が上がるのか、観客は息を呑んで見守った。

【スターティングメンバー】
1.乳井大士(4年=中部大学春日丘)
2.平野叶苑(4年=西陵)
3.川口新太(4年=東海大仰星)
4.日吉健(4年=大産大附属)
5.ソロモネ・フナキ(4年=目黒学院)
6.平野龍(3年=札幌山の手)
7.松永壮太朗(4年=京都工学院)
8.シオネ・ポルテレ(3年=目黒学院)
9.土永旭(4年=光泉カトリック)
10.吉本大悟(3年=東海大仰星)
11.西浩斗(4年=熊本西)
12.小野麟兵(4年=京都工学院)
13.ナブラギ・エロニ(2年=大分東明)
14.堤田京弘(4年=大阪桐蔭)
15.辻野隼大(4年=京都成章)
16. 李淳弘(4年=大阪朝鮮)
17. 猿渡翔眞(3年=京都成章)
18.西崎海人(4年=報徳学園)
19.山口勝大(4年=近大附属)
20.伊藤森心(2年=松山聖陵)
21.西村建哉(4年=京都成章)
22.尾崎恵大(3年=光泉カトリック)
23.藤本凌聖(4年=朝明)
24.ハビリ・ファカタハ(4年=高知中央)
25.小林修市(3年=京都成章)


【スコア】
前半 京産大 33-7 近大
後半 京産大 21-12 近大
結果 京産大 54-19 近大





▲スクラムを組むフロントローの3人
~Aチーム~
吉本のキックオフで試合が始まった。近大が蹴り返した高いボールを辻野がキャッチ。そのまま展開し、右サイドにナブラギと堤田が走り込む。ボールをもらったポルテレがゴールラインまで運び、最後は西がトライ。鮮やかな連携を見せた。続く6分、吉本のキックで陣地を回復し、ポルテレと松永中心にパスを回していく。最後は左サイドを西が走り抜け、14-0。パスを回し、味方の選手を生かすプレーをする場面が目立ったポルテレ。試合後「僕は1年生から試合に出ているので、関西のチームには読まれている部分がある。僕が1人でキャリーしても勝つことはないと思いますし、自分にディフェンスが集まったら横にボールを放るとトライに繋がることが多いのでそうしています」と話した。京産大の主砲とも言える突破力に加えて、周りの選手を生かすという新たな戦い方を見つけた。

前半15分、スクラムでペナルティを奪いチャンスを作る。キックで攻め込むも、ラインアウトで痛恨のミス。しかし、諦めない京産大。敵陣深くでの相手ボールスクラムを押し、走り込んできた堤田にボールを繋げ、そのままトライを奪った。その後はフナキのジャッカルから流れをつかみ、モールで押し込んだ。(28-0)続く前半23分、敵陣でのマイボールスクラムで相手の反則を誘う。ラインアウトモールでゴールラインぎりぎりまで進み、乳井がグラウンディング。敵陣でのチャンスを逃さなかった。前半27分、ゴールラインを背負った状況で相手ボールのラインアウトモール。抑えるが、反則を犯していたため、もう一度ラインアウトから。今度もモールで攻め込まれるが、粘り強いディフェンスでラインは越えさせない。フナキがターンオーバーし、ピンチを回避した。ディフェンスに関して廣瀬佳司監督は「ゴールラインを背負ったところはもう出来上がりつつある。非常にいいプレーをしてくれた」と評価した。

前半30分を過ぎたあたりから、試合の流れが停滞し始める。互いになかなか得点に結びつかず。ディフェンスが機能し、ここまで相手を無失点に抑えている。前半終了まで守り切りたい。しかし、近大もこのままでは終わらない。ゴールライン前で犯した京産大のミスから、ラインアウトモールで攻め込んでくる。この勢いを止められず、京産大は今日初トライを許した。その後は守り切り、33-7で試合を折り返す。

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▲土永の左足からのキック
後半開始2分、日本代表合宿で一回り成長を遂げた土永のキックで一気に敵陣に攻め込んだ。ラインアウトモールから左に展開していくも、スローフォワード。アドバンテージをもらっていた場所から、再度ラインアウトモールで進む。平野龍が持ち出し、インゴールまで運ぶも、グラウンディングを阻まれゴールラインドロップアウトとなった。

後半はスクラムで反則を犯し続け、テンポに乗れず苦しんだ。2番で1年ぶりのスタメンとなった、平野叶苑は「今日はスクラムがすごく落ちていて、どちらのペナルティなのかレフリーとの兼ね合いができていなかった。レフリーの判断に上手くシフトして組めるように」と振り返る。京産大のアイデンティティであるスクラム。過去負けた試合のほとんどが、スクラムで相手に優勢に立たれている。日本一になるために絶対に必要な条件はどんな相手でもスクラムで優勢に立つことだと言えるだろう。田倉コーチがフルタイムで練習に参加するようになった今年こそ、覚醒の時だ。

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▲藤本の力強いトライ
後半、先に試合を動かしたのは京産大だった。相手のボールを日吉が奪い、小野がキックで陣地を回復。そのままボールが転がっていったところを小林がキャッチし、ゴール目前まで運ぶ。最後は日吉がトライを決め、40-7とした。後半29分、苦しみ続けたスクラムでペナルティを奪う。そこからラインアウトでモールは組まずに持ち出し、堤田が相手ディフェンスの隙を突き、独走で22mラインまで持ち込む。そこからパスを繋いでいき、交代で入った藤本が力強い走りでインゴールへ。立て続けに得点を挙げた。
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▲成功率の高い辻野のキック
その後、相手の攻撃を止めきれず得点を許し、47-14となる。後半38分、猿渡がインターセプト。パスをもらった日吉が、今日2本目のトライを取り切った。辻野のキックも成功し、54-14。今日は7/8という成功率の高さを見せ、キャプテンとしてプレーでも引っ張った。ロスタイムで相手に粘りを見せられ、トライを許すも54-19でノーサイド。春季トーナメント決勝にコマを進めた。

次の春季トーナメント決勝は、関学大との対戦が決定した。オープン戦では勝利したが、昨季のU20日本代表選手なども多く、油断ならない相手だ。「目標は日本一。まずは関西を優勝に向けて一戦一戦成長していき、自分たちのラグビーが出来れば自ずと優勝が見えると思う」と話す辻野。廣瀬監督も「今年は本当に日本一を狙える位置にいると思う。どこのチームにも負けない、全勝で行くぞっていう気持ち。関学だからっていうのは気にしていない」と口にした。監督とキャプテン、2人が繰り返し口にした『日本一』。試合経験豊富な4年生が多い今年のチーム。4年生が体を張る姿を見て、BCチームにもその空気感は伝播している。今年こそ悲願の日本一へ。チーム京産一丸となって、国立で笑顔の花を咲かせたい。

~Bチーム~
【スコア】
前半 京産大 14-21 近大
後半 京産大 28-22 近大
結果 京産大 42-43 近大


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▲林のトライ
先制点を奪ったのは京産大だった。試合開始すぐに倉田渉(3年)がインゴールへボールを運ぶ。前半14分には同点に追いつかれるが、その直後キックされこぼれたボールを、毎試合活躍を見せているルーキー林総大がトライ。この日も存在感をアピールした。BチームもAチーム同様、スクラムで反則を何度も犯してしまい、流れに乗れない。前半39分には、スクラムで相手にチャンスを与えてしまい、右隅にボールを押し込まれた。14-21で前半終了。後半はスクラムを修正し、流れを取り戻したい。

後半は京産大のキックオフから。グラウンド中央で、相手がラックでペナルティ。攻守交代し、ラインアウトから攻撃を展開していく。ターンオーバーされるが、アドバンテージでもう一度ラインアウト。ここではモールを組まずにHOの猿渡からLOの近藤亮太(3年)にパスし、そのままインゴールへ飛び込んだ。馬田琳平(2年)のキックも成功し、21-21で同点に追いついた。

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▲ゴールラインに向かって走る村田
後半もスクラムでの反則が止まらない。そこから攻め込まれ得点を許す。その後19分はキック合戦で陣地を取り合うが、攻め込まれディフェンスを躱しながらトライされた。(21-33)。しかし、劣勢の中4年次生の貫禄を見せた村田佳翼(4年)が得点を奪った。その流れのまま後半31分、敵陣深くでターンオーバーに成功。一気にゲインし、パスを回す。バックフリップパスでテンポの速いままゴール前まで進み、最後は曽根隆慎(4年)がトライ。太田陸斗(1年)のキックで逆転に成功。残り約10分、守り切れるか。

しかし、逆転してすぐに近大のトライを許し再逆転。後半39分、京産大のキックオフボールを佐名木風雅(1年)がキャッチ。敵陣でのスクラムで相手のペナルティを誘い、チャンスを生かして攻めていく。左サイドへのキックパスはオーバーだったが、アドバンテージでタップからスタート。ミスなくゴール前まで運び、最後は谷村穣太郎(2年)がトライ。再び逆転し、42-40の2点差。ラストワンプレーはディフェンスの時間。しかし、グラウンド中央付近で反則を犯してしまう。ここで近大が選択したのはショット。外れれば勝利、決まれば逆転負けの場面。観客も静まり返り、楕円球の行く末を見守った。白柱の下、旗が2本あがり、京産大はサヨナラ負けを喫した。42-43大接戦を制したのは近大B。悔しさの残る一戦だった。

~Cチーム~
【スコア】
結果 京産大 19-19 近大

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▲モールで進むメンバーたち
先制点は近大に許す。敵陣深くでのラインアウトから、縦に攻めこみゴールライン直前まで進み、チャンスを作るがターンオーバーされてトライならず。前半20分には、ゴール前でのラインアウトモール。ここはしっかり押し込みトライし、金侑雅(1年)のキックで同点となった。

均衡を破ったのは近大。前半30分、ゴール前での攻撃中にボールが近大にわたってしまい、ゴールラインまで一瞬で運び込まれてしまう。(7-14)しかし、シーソーゲームはまだ終わらない。サイドでボールをもらった山田颯世(4年)がキックで前へ転がし、相手がキャッチし用としたところを、山田が相手を押し倒してボールを掴み、インゴールに抑え込んだ。12-14となった。

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▲金のキック
前半36分には近大が再びトライし、点差を離される。このまま負けるわけにはいかないと、ロスタイムに執念を見せた。前半42分に平山尚樹(3年)がサイドにトライ。17-19となる。負けか同点か、その決定権を握るのは、1年生金のキックだ。角度のある所から蹴り出し、見事成功。プレッシャーのなか、しっかり決めた。19-19で試合終了。収穫と課題、両方が見つかった試合だった。

【記事:藤田芽生、写真:伊藤揺梨、藤田芽生、佐藤そよな】



≪監督・選手インタビュー≫
廣瀬監督
-今日の試合勝ってどうでしたか
「やっぱフィジカル強いですね。近大は戦いぶりを見ていると、天理、関学、 立命館に快勝していて強いチームだろうなと思っていました。特にスクラムが強そうに見えていたので、今の京産大のスクラムがどれだけ通用するのか見ていました。4、5回スクラムで反則してしまってリズムに乗れないっていう場面がありました。レフリーの見方もあるんですけど、スクラム自体は良いスクラムを組めていたんじゃないかなと思います。どういうレフリーに当たるかも分からないので、どのチームにもうちのスクラムが組めるようになるっていうのが課題なのかなと思います。近大にこの時期にこれだけできたので、まあまあ良かったかなと」

-「これだけできた」というのはどういう部分か
「得点ですね。ディフェンスに関しても、ゴールライン背負ったところでのディフェンスっていうのはもう出来上がりつつあります。非常にいいプレイしてくれたなと思ってます」

-これからどういうところを伸ばしていきたいか
「引き続きセットプレーのところと、さゲームのあやのところは、上位校と当たってきた時に非常に重要になってきます。夏合宿とかで関東のチームとやって、そういうところを修正していけたらいいなと思います」

-代表合宿から帰ってきた土永選手の存在は大きいか
「めちゃめちゃ大きいですね。やっぱりら代表でいい経験して帰ってきてますね。U20の子たち含めて成長を感じます。土永は判断力も良くなったし、エディーさんの『超速ラグビー』を体現できる選手だと思っています。クイックにボールを動かして、京産大の新たな強みにしていきたいです」

-次の関学戦、春をとるっていうのにどういう意味があると考えていますか
「今年は日本一目指してます。毎年そうなんですけど、今年は本当に狙える位置にいると思います。もうどこのチームに対して負けずに全勝で行くぞっていう感じ。特に関学だからって言うのは気にしてないです。うちのラグビーをしっかりやろうという感じです」

辻野キャプテン
- 今日の試合振り返って         
「結果は良かったんですけど、課題が明確になって特にペナルティーの部分が今年のチームの課題点だと思うので、また来週の練習試合や決勝に向けて調整していきたいです」

- 近大の印象                 
「勢いのあるチームで前半から自分たちからアクションして封じ込めようと挑んだんですけど、前半の終わりの部分と後半の終わりの部分が勢いに乗られてしまって、そこがペナルティーが原因でした。なので、ミーティングで話し合ってペナルティーを減らしていこうと思います」

- 次の決勝の関学戦への意気込み        
「目標は日本一なんですけど、まずは関西を優勝に向けて一戦一戦成長して、自分たちのラグビーが出来れば自ずと優勝が見えると思うので頑張りたいと思います」

フナキキャプテン
-今日の試合をふりかえって
「タフな試合で、勝てて本当に嬉しかったです」

-近大の印象
「本当に強い相手でしたが、集中して、自分たちのラグビーをしようと思ってできました」

-今日の試合の課題点
「スクラムのところ、セットプレーのところなど僕たちのディフェンスの部分を上手く出来なかった
のでこれから頑張っていきたいです」

-次の決勝の関学戦への意気込み
「京産らしくがんばっていきたいと思います」

平野叶苑選手
-試合を振り返って
「スクラムでペナルティが多くて、1試合を通して修正できなかったことが課題ですかね」

-スクラムの中でどのようなことが起こっていたか言える範囲で教えてください。
「今日はスクラムがすごく落ちてて、落ちた時にどちらのペナルティなのかをレフェリーとの兼ね合いがあまりできてなくて、それ言ったら言い訳みたいになるんですけど、レフェリーの判断にうまくシフトして、上手くスクラム組むことができなかったですね」

-先発出場について
「スタートが1年ぶりでなかなか去年出られてなかったので、チャンスがたまたまあって今回出られたんで、次もスタートで出られるようにがんばりたいです」

-決勝戦の意気込み
「関西一位になれるようにがんばります」

ポルテレ選手
-試合を振り返って
「前半のように良いところもあるし、後半のように悪いところもあるし、それがラグビーだと思いますね。悪いところを来週、さ来週と、(決勝までの)残り3週間で直して決勝へ臨みたいと思います」

-前半での良いところ
「みんないつも通り練習でやったことを集中してフィジカル使ってできたところです」

-後半上手くいかなかった部分
「スクラム。京産大は強いと言われるけれど、ペナルティが多くて、自分たちが下がってトライを取られてしまった。やはり京産大はいつ組んでもペナルティを減らして、目の前にいる人に集中すると良かったと思います」

-今日は自身でキャリーするよりもパスを出すシーンが見られましたが、意識して取り組んでいるのでしょうか。
「僕は1年生から試合に出ているので、関西のチームには読まれている部分がある。僕が1人でキャリーしても勝つことはないと思いますし、元木コーチらのアドバイスをもらったように、自分にディフェンスが集まったら横にボールを放るとトライに繋がることが多いのでそうしています。ディフェンスが逸れたときは僕がフィジカルで行きますし、ディフェンスが余ったら僕が行って、3〜4人集まったらパスを放ります」

-決勝戦への意気込み
「春3連覇の望みを叶えたいと思います。最高の先輩・フナキソロモネに3連覇させてあげたい。そして関西リーグでもまた優勝し、日本一になって先輩にいい思いをさせていですけど、まずは目の前の決勝を頑張りたいと思います」