“きつね”だけじゃなか 球場胸熱 知っとう?「よかよかダンス」

 

毎日新聞

 

振り付けをリニューアルした「よかよかダンス」を披露する、ばってん少女隊の上田理子さん(中央左)、蒼井りるあさん(同右)とハニーズのメンバー=みずほペイペイドームで2024年4月29日、吉田航太撮影

 

 プロ野球・北海道日本ハムファイターズの応援パフォーマンスとしてブームを巻き起こした「きつねダンス」。これに負けじと福岡ソフトバンクホークスが燃えている。こちらのパフォーマンスは「よかよかダンス」。2年目の今季はより親しみやすくするため、振り付けを一新した。球団関係者は「もう二番煎じとは言わせない」と意気込む。

 

  【写真でたっぷり】ハニーズ×ばってん少女隊 「よかよかダンス」 

 

 

 

 

 「きつねダンス」はノルウェーの兄弟ユニット「イルビス」の曲「The Fox」に合わせながら、キツネの耳のカチューシャとしっぽを付けたチアリーディングチーム「ファイターズガール」が踊る。2022年シーズンに披露されると全国区の人気に。その年の新語・流行語大賞でトップテン入りも果たした。  対して「よかよかダンス」は、九州を拠点に活動する6人組アイドルグループ「ばってん少女隊」の同名曲に合わせ、球団マスコット「バリカタ君」を模したブタの耳のカチューシャとピンクの手袋をした公式ダンス・パフォーマンスチーム「ハニーズ」が踊る。  初披露は、きつねダンスから遅れること約1年後の23年5月。明るくキャッチーな曲に合わせたダンスで、同じピンクの手袋をつけて一緒に踊る女性ファンの姿も見られるようになるなど、じわじわと広がりを見せている。  仕掛け人は、ソフトバンク球団の稲永大毅・マーケティング企画部長(47)。

同じパ・リーグできつねダンスが「バズる」様子を目の当たりにし「めちゃくちゃ意識」しながら約2カ月かけて生み出した。  使用する曲にもこだわった。キャッチーな楽曲を約20曲選んだ上で、「博多らしさ」を感じられるという観点から

 

①キユーピーのCMソング「たらこ・たらこ・たらこ」

 

②福岡土産の菓子「博多ぽてと」のCMソング

 

③人気アニメのエンディング曲に採用されていた「よかよかダンス」――の3曲に絞った。  

最終的には、九州北部の方言で「良いよ」「大丈夫」という意味がある「よかよか」を歌詞や曲名に含み、試合が劣勢でもファンを笑顔にして応援が一層盛り上がるように、との思いを込めて、よかよかダンスが選ばれた。  稲永さんがこだわるのは、プロ野球のエンターテインメントとしての魅力だ。  ホームゲームのイニング間では、よかよかダンス以外にもさまざまなパフォーマンスが球場の大型スクリーンに映し出される。一方、往年のファンなどからは「ベンチにいる選手の表情が見たい」などという声も寄せられるという。  これらの声をかみしめつつ、稲永さんは「試合で勝つのが一番だが、負けた時でもポジティブな発信ができるのが、エンターテインメントとしてのプロ野球興行だ」と力を込める。  

だからこそ、ファンに愛されるパフォーマンスに向け、工夫を重ねている。  

よかよかダンスを披露するタイミングは当初、五回裏終了後のグラウンド整備中にしていたが、テレビ中継で露出しやすい四回表終了後に程なく移動。ハニーズが登場してから1分強の間で、サビ部分を繰り返すように編曲した。  

今季からは振り付けも変更した。これまでは、ばってん少女隊のオリジナルの振り付けをアレンジして簡単にし、腕を大きく振りながらぴょんぴょんと跳ねるように踊っていたが、「動きが速くてついていけない」との声も多かった。  

「もっとたくさんの人に一緒に踊ってもらいたい」と4月中旬、ハニーズとばってん少女隊のメンバーが集まり、新しい振り付けを共作。客席でも簡単に踊れるよう、今季の球団のスローガン「VIVA(ビバ)」にちなんで親指と人さし指で「V」の字を作り、顎(あご)の下に持ってきて体を左右に動かすようにした。  4月29日にみずほペイペイドーム福岡であったお披露目には、ばってん少女隊のメンバーも登場。メンバーの希山愛さん(24)は「後ろの方の席からもまねして踊ってくれている人が見え、うれしかった」、ハニーズのダンスアカデミーに10年間所属していた蒼井りるあさん(17)は「新しい振り付けはすごく可愛くて、一緒に考えられたのが本当にうれしい。もっともっと広まったら」と目を輝かせた。  ハニーズのキャプテン、SHOKOさんはファンの反応を「最初は踊ってくれる人が少なかったけれど、かなり浸透してきた。子どもや女性が耳や手袋をつけて踊ってくれるのを見つけると、とてもうれしい。新しい振り付けは座った状態でも踊れるので、まねしてほしい」と呼び掛ける。  「選手のプレーや試合内容以外で、プロ野球の話題がこれほど取り上げられることはなかなか無かった。火を付けてくれたことに感謝している」。きつねダンスへの敬意を示しながら、稲永さんは決意を語った。「『二番煎じ』とは言わせないためには続けることが大切だ。(きつねダンスに)追い付き、追い越せ、という気持ちで盛り上げていきたい」

【成松秋穂】