朝の味噌汁は作りますーー売れに売れても自然体、川口春奈の胸中 #なぜ話題

 

 

Yahoo!ニュース オリジナル 特集

 

撮影:殿村誠士

 

2023年、タレントCM起用社数ランキング1位。押しも押されもせぬCM女王の川口春奈(28)を、このところテレビで見ない日はない。ドラマや映画の出演が続き、肩の力が抜けたYouTubeも大人気だ。まさに時の人だが、旬の芸能人につきまといがちな「つくられたイメージ」とか「やらされている感」といった雰囲気が、まったく感じられないのはなぜだろう。当代ナンバーワン愛されキャラ、川口春奈の素顔に迫った。(取材・文:山野井春絵/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)

歯磨きくらいの感じでエゴサしてます

撮影:殿村誠士

YouTubeオフィシャル「はーちゃんねる」の概要には、「川口春奈が日々のあれやこれやをフワっと配信いたします」とある。内容は、まさにふわっとした川口春奈バラエティーだ。 ひとりラーメン。部屋着でぼっち飲み。ショップで爆買い。サウナでまったり。時にはさまざまなゲストを迎え、自由なトークを繰り広げることも。 ほぼスッピンだったり、変顔だったりを惜しみなく披露するなど、YouTubeでは「トップ女優」らしからぬコミカルな一面をおおらかに見せている。 「自然体にそのまま、自分が好きなこと、やってみたいことをやろうと思って、コロナ禍に(YouTubeを)はじめました。雑誌で見た場所へ行ってみるとか、気になる物を食べるとか、軽い感じで。全面的に私のプライベートを公開してるつもりもないんですけど、本当に素のままやっているのを見て、楽しんでいただけたら嬉しいな、という感じです」

 

撮影:殿村誠士

 

ファンからのコメントにもよく目を通す。特に古くからのファンの名前はしっかり覚えている。さぞかしファンたちは喜んでいるだろう。 「ふだん、ファンの方とは会えないですけど、こうやってコメントでつながれると、近くに感じます。SNSのいいところだなと思いますね。そこが、欲しかった部分でもあるので。よくエゴサしてますよ。歯磨きくらいの感じで、当たり前に(笑)」 作品や、新しい企画動画が世に出たら、すぐにファンの感想を知りたくなるのだという。 「どう見てくれたんだろうって、やっぱり気になるので。純粋に、興味と好奇心というか。そこで一喜一憂はしないですけど、作品のレビューは特に気になりますし。アンチコメントみたいなものは、ありがたいことに、ほとんどないです。私のファンには意地悪な方はいないです。むしろ、たまにヒントになるようなことを書いてくれる方もいる。自分で気づけなかった捉え方を教えてくれたり、勉強になりますし、見てて面白いです」 サラッと、そう言ってのける。このさっぱりした感じが、ユニークな動画を配信しても俳優としての品位を落とさない秘訣なのかもしれない。 「最近ちょっと、YouTubeがサボり気味になっているので、もうちょっと外に出て、アクティビティやら、グルメやら、やりたいですね。何かご当地的な、旅系の企画はぜひ。海外編やりたいんですよ。今年は絶対やりたい!」 YouTubeに迎えたいゲストはと尋ねると、「ロバート秋山さん!」と即答。 「大好きなんです、面識はないんですけど。ぜひご一緒したい。お願いします!」 とラブコールした。

「身代わり」で世に知られた

撮影:殿村誠士

 

今月9日には、出演映画『身代わり忠臣蔵』が公開になった。ムロツヨシが吉良上野介とその弟の2役を演じ、死んだ兄の身代わりになって奮闘するというコメディー時代劇だ。川口はマドンナ役の「桔梗」を演じる。 桔梗。「帰蝶」に似たその役名は、川口の代表作ともなった、大河ドラマ『麒麟がくる』(2020)を思い出させる。織田信長の正室となる斎藤道三の娘、帰蝶(濃姫)役は、突如キャスティング変更となり、川口に白羽の矢が立った。言うなれば「身代わり」だった。 すでに撮影済みだったシーンはすべて撮り直しを余儀なくされ、初回放送日が延期となったのも、よく知られているところだ。『麒麟』はその後新型コロナの流行により、撮影と放送が一時休止に。異例づくしの大河ドラマだったが、突然のオファーにもかかわらず難しい役どころを見事に演じきった川口は、高く評価された。 「(『麒麟』が)時代劇初挑戦でした。本当に余裕がないくらい大変で。こんなに時代劇って難しいのか、大河ドラマはここまで作り込むのか……とか、たくさんのことを勉強した作品です。子ども時代から亡くなる間際まで、こんなに長くひとりの人生を演じたのは、初めての経験。表現の仕方、引き出しを問われるというか、ひとりの俳優が、数カ月で演じることの難しさを感じましたね。でも、あのドラマで、たくさんの方に私のことを知っていただく機会が増えました。一つのターニングポイントだったとは思います」

 

撮影:殿村誠士

 

以来、久しぶりの時代劇。 着物やかつらを着け、所作にも気を配っての演技には、やはり緊張もしたという。 「ふだん現代劇のほうが圧倒的に多い中で、『大丈夫かな……』と不安はあったんですけど、ムロさんが現場を和ませてくださったので、不安もすぐ吹き飛びました」 今クールは民放でドラマ『大奥』が放送されているが、以前に比べると、時代劇ドラマはずいぶん減っている。川口自身も、子どもの頃から時代劇をあまり見ないで育ったというが。 「若い世代は、時代劇を見たことがないという方がさらに多いと思います。でも、今回の映画は、まったく時代劇に触れてこなかった方や、『忠臣蔵』、歴史に詳しくないという方にも、気軽に見ていただけるような作品になっていると思います。私自身も楽しく演じることができたので、それがきっと伝わるんじゃないかな」 京都の撮影では、日中に出番が終わることが多く、グルメ巡りも楽しめたそう。 「タクシーの運転手さんに『何かおすすめありますか?』って聞いて、ラーメン屋さんとか連れていってもらいました。あとは、自分で気になるお店を調べて行ってみたり。おいしかったです!」

何歳までに結婚、出産とか、そういう人生設計を考えたこともない

撮影:殿村誠士

映画、ドラマ、CMと、引く手あまたの川口だが、将来についてはどう考えているのだろうか。年齢を重ねることで仕事が変化していくことに、不安を感じることはある? 「あります。ずっと不安でいるわけでもないですけど、ふとしたときに、『今後、これからどうなっていくんだろう?』とか『私の人生どうなる? 何年後、何してる?』みたいな、本当に漠然とした感じなんですけど、それはある程度、あります」 女性ならではのライフステージの変化については、どうだろう。 恋愛に生き、突然俳優をやめてしまう……そんなドラマチックな未来を、想像したりすることはあるだろうか。 「好きな人についてどこかへ行くとかは、そのときに、自分にやりたいことがあったら、行かないかな。ひょっとして、勢いで行っちゃうかもしれない(笑)。そこは本当に、流れに身を任せて。特に、何歳までに結婚、出産とか、そういう人生設計を考えたこともないし。どんな気持ちになるか、そのときにならないとわからないですけど、どっちもあり得るかな、と思っていて。何よりも、『その人のため』というよりは、自分がどうしたいか、自分のために選択できる人でありたいな、と思います」

 

撮影:殿村誠士

 

母と、姉2人の女性4人家族で育った川口。こうした家庭環境は、自身の性格にどう影響していると思う? 「けっこう、波乱万丈だったので、我慢強い子になったかなとは思います。だからこそ、大人になってからですけど、家族に対する思いの強さがあると思います。自分が作る理想の家族像のようなものは、特にないです。ひとりじゃなければ、くらい。寂しがり屋ではあるので」 今は愛犬、フレンチブルドッグの「アム」を溺愛している、と破顔した。 「いやもう、本当に、時間もお金も手間も、すべてを注いでいるので、何か溺愛というよりは、もう分身に近い。犬ファースト。それこそ『お犬様』として大事にしています(笑)。ご飯も、好き嫌いがあるから大変で『これ作っても食べなかったか~』とか、よくあって。ご飯は完全に手作りしてますね。時間もかかるんですけど、とにかく、常にアムのことを考えてます」 自身へのご飯作りは、「味噌汁」が中心。 「料理はあまりしないんですけど、もっとできるようになりたいですね。今は、体が冷えてしまうから、前日に野菜をたくさん入れたお味噌汁を作って、朝食べるようにしています。とにかく健康でありたい。ちゃんと食べられることがありがたくて、こういう日常がずっと続いてほしい、と思っているんです。自分の体やメンタルと、きちんと向き合って、バランスが保てたらいいな、と」

小さい頃から、ずっと神頼みはしてきました

撮影:殿村誠士

 

自身の性格を分析すると、「不器用で、慎重派」だそう。難しい仕事には飛び込んでみることのほうが多いが、「その過程でネガティブになることもある」と正直だ。 「ビビりな部分もあるのかな、とは思います。ネガティブになったときは、それでも結局、やるしかないんですよね。やってみたら意外と楽しいんじゃない?とか、『どんな仕事も、いつかは終わる』と自分に言い聞かせたり。でも実際は、不安なんていらなかったくらい楽しかったり、うまくいったり。そんなことの繰り返しです」 「CM女王」のタイトルを得るのは、並大抵のことではない。 これまでの仕事の流れを見ていても、川口には「強運」のイメージがあるが、本人はどう考えているのだろうか。

 

撮影:殿村誠士

 

「運は、確かに強運だと思います。なぜか……それはわからないけど(笑)。ギフトかもしれないですね。でも、小さい頃から、ずっと神頼みはしてきました。ご先祖様だったり、けっこう神社が好きで、よく行きます。神社では何か、希望をお願いするというよりは、日常的にご挨拶に行って、感謝をしています。撮影に入る前とか、よく行く神社が3つあります。運を大切に、何かに流されることなく自分軸で、人生も、大切なものも、人づきあいも、考えていけたらいいかなと。とにかく自分の気持ちに正直に、素直に生きたいなと思っています」 

 

___ 川口春奈(かわぐち・はるな) 1995年、長崎県生まれ。俳優。2007年、雑誌『ニコラ』のオーディションでグランプリを獲得。その後、ドラマ『東京DOGS』で俳優デビュー。

 

2012年には映画『桜蘭高校ホスト部』で映画初主演を果たす。以降、ドラマや映画のみならずYouTubeなど活躍の場は多岐にわたる。

2022年、エランドール賞新人賞を受賞。近年の主な出演作には、映画『九月の恋と出会うまで』、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』、映画『極主夫道 ザ・シネマ』、ドラマ『silent』、映画『マイ・エレメント』(声の出演)など。

最新作、映画『身代わり忠臣蔵』は2月9日公開。