
寺内タケシさん よみがえる幻の音源

「エレキの神様」と呼ばれるギタリスト、寺内タケシさん(81)の全盛期の音源が見つかり、11日にCDとして発売される。かつて寺内さんのバンドボーイだったケーエムミュージック(横浜市中区)の下田等代表取締役(70)が手がけた。寺内さんはここ数年、療養のために活動が難しい状態で、下田さんは「いいものを残せた自信がある。ぜひたくさんの人に聴いてほしい」と語っている。
下田さんは1965年、集団就職で鳥取県から上京し、プレス工場に勤めた。ザ・ベンチャーズの来日や映画「エレキの若大将」(東宝)の公開など空前のエレキブームの中、ギタリストになりたいという夢が膨らみ、18歳で横浜市の寺内さんの事務所に飛び込んだ。
寺内さんは長く第一線で活躍し、全国の高校を回るハイスクールコンサート(2010年10月時点で1500校)や、その「国会報告会」(05年)でも話題になった。後に動員力に陰りが見えたが、それでも下田さんは毎年、寺内さんの公演を企画してきた。だが、体調の問題でここ数年はファンの前に姿を見せられる機会が遠のいている。
今回CD化された音源は「寺内タケシ&ブルージーンズ」が71年、東京都内でレコーディングしたもので、当時は8トラックで発売された。18年に事務所の整理を頼まれた下田さんが大量のオープンリールテープの中から見つけた。マスターテープは3本に分かれていて「業者にチェックしてもらったら奇跡的に3本とも無事だった」という。
当時、実際にスタジオで立ち会った下田さんによると、レコーディングはやり直しのない「一発どり」。「寺内さんが32歳のバリバリのときで、本当のライブという感じだった。すばらしい音源になっている」と振り返る。CD化にあたって曲順を変え、「津軽じょんがら節」など日本民謡と、「運命」「チゴイネルワイゼン」などクラシックの2枚組み(全24曲)にした。「テリー」の愛称からタイトルは「ミスター“エレキ” ザ・テリー・ワールド」とした。
ジャケットは若いころの寺内さんのイラスト。当初、エレキギターのストラップは赤だったが、熱心なファンから「黒のモズライトギターのときはストラップも黒だった」と指摘され、修正したという裏話もある。
「このころは本当にすごい」「ここなんか、実はサイドギターが間違えている」。完成したCDに聴き入る下田さんは半分プロ、半分はファンの目線だ。「いろんな音楽を聴いてきたけど、寺内さんの音には『日本人だなあ』と思わせるものがある。僕の中では(寺内さんに魅了された)15、16歳のころから時が止まっているんですよね」
寺内さんは現在、横浜市内の自宅で療養生活を送る。下田さんはデモCDを届けたが、面会はできなかった。2人の共通の友人は「多くの人がだんだん寺内さんから離れていく中で、こんなことができるのは下田さんだけ」と感心する。
CDは税込み2200円。11日からストリーミングとダウンロード配信も始める。問い合わせはケーエムミュージック(045・212・2611、平日午前11時~午後6時)へ。
【中田卓二】