震災・原発事故と小説 | 美咲 悠の好きなこと♪

震災・原発事故と小説



震災後から
特に原発の事故からずっと
考えていた事があります

「物を書く」ということの意義

そんなことです



学生の頃物書きになりたいと
それを生業としたいと思いましたが
もう一つの大事なことと天秤に掛け
結局他の道を選んだ私


でも書きたい気持を押さえ込むことは
出来ませんでした


今プロになるには勉強のための時間は持てず
こうして時々この場に書いた物を載せて
こぼれ落ちる想いを記録している私です


いつかたった一本でも良い
納得のいく作品を書きたいとは
切望していますが……




閑話休題




世の中に在る沢山の仕事のなかで
「小説を書く」という仕事は
どんな意味が在るのか


新聞や雑誌の記事を書くそういった
生活に根ざした物ではない「書く」作業

これの意味を私は今考えているのです



福島原発の事故状況が震災直後から
刻一刻と悪化していくなかで
思い出したことがありました



黒沢明監督のオムニバス形式の
「夢」という映画です

↑クリックでウィキに飛びます


1990年の作品でその中の「赤冨士」と「鬼哭」
共に放射能汚染をテーマにしたこの短編は
見た当時暫く夜眠れない程でした


特に赤富士は6機の原発が爆発する事故の話です
私が震災後にこの映画を思い出した訳を
分かっていただけるでしょうか?


この映画を原発推進派の方たちが見てくれていたら

技術を過信せずに市井の人のことを

利便性と共に考えてくれていたら

映画や小説はただの空想と思わないでくれていたら

今回もっと違った結果にならなかったのか

そう思ったのです




次に思い出したのが小松左京さんの
「日本沈没」


特に現在の社会状況などを踏まえて
リメイクされた2006年版の画像が
瞬時に頭の中に広がりました


小説では日本は消滅してしまいますが

この版では再生を誓い日本全体の空撮で

映画は幕を閉じます




共に表現者としてのお二方が
持ちうるご自身の想像力の限りを尽くして
作り上げられたものです



何億年に一度かの天変地異が今起こったら?
安全・当たり前とみんなが疑問に思ってこなかった事が
ある日突然崩壊したら?


お二人とも起こり得ないと世間が認識している
最悪の事態の想定を
また起こって欲しくないことを
作品を通じて描かれたのだと思います






「想定外」
災害後散々このことばを聞きました


でも想定とはこうした表現者の想像力を持って
なし得ることでは無いのでしょうか?

安全であるという無意識の囲いの中で
「想定」された物に意義は有ったのでしょうか?



マグニチュード9以上の地震が
かつて地球上で起こったことがある
だったら想定はそれ以上のM10以上を考えて欲しい


コストを考えて釣り合いのとれることを
そうして設計した結果が
最悪の事態を産みコストの何十倍もの
人的・金銭的損害を産み出した




表現者である小説家・映画監督・漫画家
本当に評価されている方々は
ちゃんと下調べをしてその上に
自分の感性と想像力を被せて作品を作っていらっしゃる


このイメージ力を活かせないものなのか
そう思っているのです



起こってしまったことを分析する
正しい情報を伝える
そうした筆の力に加えて
「想像して書く」
これも大事な仕事なのではないかと……




少し話が逸れますが
現在の日本のロボット工学学者の方たちは
幼少時代に
『鉄腕アトム』 に触れたことが

技術者を志すきっかけとなっている人が多い


日本のロボットが欧米に比べて
「人の形」にこだわるのもその影響と
聞いたことがあります


現在の日本の高水準のロボット技術力は
アトムのお陰だと言っても過言ではないのかも
しれません



1951年に最初の一歩を踏み出したアトムは
原子力で動いています


そして名前も原子ということばである「アトム」
家族にもウラン・コバルトといった
元素の名前が付けられています


手塚治虫さんは原子力の安全な使用を
望んで命名されたのでしょう


残念ながら今回の震災や原発事故に
「アトム」はまだ間に合いませんでした




そしてまだ人間は手塚さんが想像したとおりには
原子力を使いこなせていません




ギリシア神話が書かれた頃
人間に「火」をもたらしたプロメテウスは
刑を受けることになりました


広義に判断すると「火」を人間は制御出来ない
神の中の神ゼウスはそう判断した


それを人に渡したからプロメテウスは
罰を受けさせられたのです


では消せない「原子力」という火を持った
現代の私たちはどうすれば良いのでしょうか?



私の中に結論はありません



でもここから先この地球のこと
人間のことを考えると
「想像する力」がどれだけ大事だろうと
思います



地球に優しくと良く言われますが
放射能が充満しようと
二酸化炭素増のため温暖化で海の水位があがろうと
実際地球は「困らない」のです

困るのは私たち人間なのです



ホモサピエンスが地球上に現れて40?万年
有史時代に入ってはせいぜい数千年


そのしかし人一人の感覚としては

あまりに永き数万年という時間

今回放出された放射能は消えることが無い


これを私たちは確たる制御方法を持たずして
使用を続けて良いのでしょうか?




この先何が起こるか
どういう未来が想定されるか


これは
 過去を紐解く
 現実をある切り口から見つめる
 未来を想像する
こうした力を持った作家さんに託された
重要な仕事ではないかと思います



別に重い小説でなければならないと
私は思っているわけではありません


小説が存在することの意義が
ここにあるのではないかと思ったので
記録として書いてみました



しかし本当に当事者の方たちには

「今」がとても重要なのだと思います


せめてなけなしの想像力を絞り出し

役に立てることは無いものか?

と思案し続けていますが

まだまだ迷走中な私です


情けない……