ただ、それだけ。(石森虹花誕生記念小説) | mimimimi◢͟│⁴⁶ 小説

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なんで、あの子なんかに。
私の方が理佐のこと好きなのに。

不登校だったあの子が徳山が殺された日、登校し始め、理佐との距離がどんどん近くなっていった。

放課後にバックハグをしながら、理佐が言った一言。「私が守ってあげる」なんて。私に一度も言ったことがなかった一言。
バックハグだって、壁ドンぐらいの距離だって。私の方が理佐と一緒にいる時間が長いのに、ねるの方が近くにいるんだ。

私よりも浅い関係のくせに、理佐が盗られたみたいで嫌だった。

そんなねるを守る理佐だって嫌だった。
私なんかより怪しいねるを守る理佐が。
なんで、ねるの味方なんかするの?そう言ったらウザイと返ってきて、さらにイライラが溜まってしまった。

それから、理佐は私をハブるようになり、避け始めた。一緒に昼ごはんを食べてるのに、話しかけてるのに、無視されて。

もう限界だった。

ねるさえいなければ。ねるが不登校のままだったら。理佐とこんなふうにならなかったのに。理佐と喧嘩して気まずいふうにならなかったのに。理佐と一緒にいれるだけで、話せるだけで、目が合うだけで。ただ、それだけで幸せだった。そんなことも出来ない今の日常は、楽しくない。

カッターを手にとり、ねるを殺そうとした。それなのに、私が刺したのは私が大好きな理佐だった。…なんで庇うの?


「私が犯人だよ……嘘だけど」
なんて、みんなの前でねるは言うから。
さらにイライラした。なんでこんなやつを理佐は庇うの??

「私はねるが好き。」
理佐はクラス全員の前で告白をした。
この瞬間、何かが崩れ落ちた。
私は理佐のことが好きだと伝えたい。
誰よりも理佐のことが好きだと言いたい。

それと同時に、矢印の方向が一致しないことが分かって、嫌気がさす。
そんな私に向かって、謝り始める理佐に好きが増す。なんで、こんなに優しくしてくるの。

なんで謝るの?謝らないでよ。
どんどん私だけが悪者になっていく。
お願いだから、理佐。

そんな理佐が好き。
冷たくしても謝ってくれる、そんな優しいところ。

想いを伝えずにはいられなかった。
…だけど、この恋は叶わない。

「私だって理佐のこと…」


理佐が目で訴えてくる。
……言わない方がいい。と。
言って傷つくのは私。そんなことを考えて理佐は配慮してくれたのかな。


「怪我させてごめんね。」

「ごめん。」

この理佐の「ごめん」には、私の想いへの謝罪もあるのかな。なんて、妄想だけを膨らませる。


この恋はきっと叶わない。
ねるがいても、いなくても。
ねるが不登校のままでも、叶わない。


ただ、誰よりもそばで、理佐のことを支えれたら。ずっと一緒にいれたなら…ただ、それだけでいい気がする。