守れるのは私だけ。(鈴本美愉誕生記念小説) | mimimimi◢͟│⁴⁶ 小説

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「平手。そこ右曲がったらいるから気をつけて」

「はーい」



ボコッ ドカッ ボコッ


たくさん血が飛び交う、その中に紛れ私達は、拳を振りかざす。


気づいたらこの道を進んでいた。


いつからか抜け出せれなくなっていた。




あれは二年前、中学三年生の頃。
受験のストレス、親のストレス、もしくは生まれてきてから積み重なっていたストレス。何かは知らない。

全てが重なって、この状況が嫌だった。敷かれたレールの上を進む人生が嫌だった。

夜中に家を飛び出し、公園を歩き回り、不良に声をかけられれば男であれ女であれ、拳を振りかざしていた。

もともと運動神経が良かったのか、負けることなんてなかった。だからすごく快感で気持ちがよかった。


負けることのなかった私は調子に乗り、すぐに有名になった。


『調子乗っている強いヤツがいる』と。


その噂を聞いて、勝負を仕掛けてくるやつがたくさんいた。それでも私は負けることがなくてさらに調子に乗った。


そんな時に、この街で一番強いと言われているあの人が勝負を仕掛けてきた。

でも、私はそのとき一番強いと思っていたから、負けないと思っていたから、あの人をたくさんからかった。


「小さいくせに金髪って…調子乗りすぎじゃん」


その言葉が合図となり、戦いは始まった。


あの人がたくさん殴りかかってくるが、全て避ける。

そして、隙が見えた瞬間に右頬に拳を入れる…



ガシッ


隙ありと思い殴ろうとした右手を掴んでその腕をつかみ、私を投げ飛ばす。


「あっ…」


綺麗に倒れ込んだ私の上に跨り、「調子に乗ってんのはどっちだよ」そういい私を殴り続ける。


はぁっ…ぐはっ…頭がクラクラとする…視界がグラグラと歪み始め、あの人が睨みつけてる景色だけが見えてたけれど、もう何もかも見えなくなった。







目を覚ますと、知らない天井が目に入り、思わず上体を起こした。

すると、そこにいたのはさっきまで喧嘩していたあの金髪の人だった。

「あっ…起きたんだ」

「…どうして?」

「さすがにやりすぎたと思って」


なんでこんなに優しいんだ?素直にそう思った。


それから気づいたらずっと一緒にいるようになって、今ではお互いの背中を守り合う存在だ。


鈴本がいなかったら今の私はいないし、鈴本に助けられたからここまで来れている。


そんな私達はよくいろんな人から狙われる。この街の“最強タッグ”と呼ばれているから。


その“最強タッグ”っていう名前が嬉しかったりする。…なんて絶対言わないけど。


そんな今日は、鈴本の誕生日。
誕生日ぐらい、喧嘩をせずに安全に生活したいんだけどなぁ…。
まあそんな簡単にはいかないみたいだ。




喧嘩が終わり、今は鈴本の家に向かっている途中。



「鈴本おめでとう」

「んー?なにが?」

「誕生日じゃん」

「あっー!」


喧嘩をしている時とは打って変わって、日常では感情が豊かで、いつもいろいろな顔を見せてくれる。そんな鈴本が可愛くて見てて飽きない。


「ありがとう」


そう微笑む姿は、本当に喧嘩をしている“最強タッグ”の人なのか疑う。


いつもはなかなか言えない想いを、鈴本が誕生日だから言うことにした。


恥ずかしすぎて、顔が赤くなっている気がしたけれど、そんなことはどうでもいいぐらいに鈴本が大切だ。


言い終わると、鈴本も耳を赤くして、照れながら「ありがとう」と言ってくれた。


これからも鈴本の隣で、戦うのも守るのも私だけだし、鈴本の背中を守れるのも私しかいないでしょう?


いつか喧嘩をしない毎日が訪れるといいな、鈴本と2人でゆっくりした時間を過ごしたい。