とうとう 蝉が鳴き始めましたね
がむしゃらな蝉の鳴き声で目覚める 朝
夏の到来を知らせる 合図
その渾身の鳴き声は
小さな切なさを 胸のなかに広げていきます
自分たちの生態を知りながら
与えられたその僅かな時間を
がむしゃらに ひたむきに 生きる儚さ
『空蝉(うつせみ)』
美しいとは言い難い 鼈甲色の蝉の抜け殻
それを こんな美しい言葉で呼ぶそうです
何年もを土のなかで過ごし
脱皮してようやく鳴けるようになっても
生きられる時間はたった数日……
長ければいい というものではないけれど
それでも その鳴き方ががむしゃらであればあるほど
やりきれない儚さを 感じてしまいます
蝉を見ていると
生き物は 死 に向かって生きているんだな
正しく死ぬために生きてるんだな
とても生々しく そう思わせられます
だからこそ がむしゃらになることは必要 だと思います
僅かな時間であったとしても
一生のなかの たった一瞬 であったとしても
与えられた人生を正しく生き抜こうとする姿に
その幕が閉じる瞬間まで
全身全霊 その身を懸けて鳴く潔さに
そんなことを思ってしまいます
今日もまた 渾身の力で蝉が鳴くことでしょうね
その身を 少しずつ 削りながら……
死への道程を また少し 縮めながら……
儚さを 強さに 変えて
【出典/「美人の日本語」山下景子 著】