みさの小劇場ウオッチ日記


公演期間 2013/03/20(水) ~ 2013/03/24(日)
会場 テアトルBONBON
脚演出 内藤裕子
料金 2,000円 ~ 3,500円
サイト http://g-flowers.com/

演劇集団円の演出部に所属する内藤裕子と、女優・さとうゆいが立ち上げ、第24回池袋演劇祭(2012年)大賞受賞したグリーンフラワーズの今回の舞台は、落語家一門の騒動を描いて好評を博した「かっぽれ!」の第2弾で、春の温泉旅館を舞台に繰り広げる人情滑稽芝居。


人間のダメな部分をおもしろおかしく抽出した、ちょっと笑えてちょっと胸にくる芝居で、等身大の人間の感情をじっくりと描いていた。今回のあらすじは、客と揉めて落語家・今今亭一門から失踪してしまった噺家・前座の小吉が客室係で働いていた温泉旅館に、今今亭一門が、やってくることから始まる、人情喜劇。


物語の随所に落語一家の様子や、落語の練習風景が投入されワクワクした。師匠役の山崎健二の師匠らしくトボケタさまが絶妙な演技だった。まさに落語家が乗り移ったような演技。また、今回、出演した全てのキャストの演技力が素晴らしいことと、落語と芝居の繋ぎの部分の演出があまりにも見事だった。またこの演出を助けるように計算された照明の技!更に三味線、かっぽれ踊りまでも披露して充分に芸術を堪能できた舞台だった。


とにかく構成がお見事。また観客を楽しませる技を心得ているかのような台本はひじょうに優秀だと感心した。春の温泉旅館を舞台に、繰り広げられる人情滑稽芝居は、前作を見ていない人でも楽しめる独立したストーリーだったが、これなら前作も見てみたいと思う。終盤で織り成される桜の花の舞い散る中、演じられる復讐劇は、なんとも上手い構成だった。春の温かい空気に包まれての落語家一門の大騒動は実に楽しい舞台でした。観劇後、楽しく幸せになれる舞台。


当日パンフに相関図が載っている心配りは素敵だなぁ。

照明、音響、演出、演技力、スタッフワークとも完璧。






みさの小劇場ウオッチ日記



公演詳細メンバー写真動画観たい!観てきた!チケット期間 2013/03/20(水) ~ 会場 阿佐ヶ谷アルシェ
脚本 米山昂
演出 石坂雷雨
料金 1,800円 ~ 2,000円
サイト https://twitter.com/ha_kuchumu

平安時代に実在した陰陽師・安倍晴明の、奇妙で優雅な伝説の数々を描いた作品。
構成としては奇妙な伝説を散らばらせるだけ散らばらせて終盤で回収させるような舞台ではあったが、何しろ演じるキャストも脚本も若い。またこれらに合わせる様に演出も若い。
若いのが何も悪いとは言ってない。


ただ全体的に演技力も演出も力不足な感じがした。セリフとセリフの間の取り方、発声なども素直に耳に入ってこない。また、怒鳴る場面などは、ただただ煩いだけで、言葉で酔わせる表現力に乏しかった。舞台上で、みんなで遊ぶシーンなどは何がどーなってるのかが解らなかった。ただ役者らは一生懸命に演じてはいたが・・。


「今昔物語集」「古事談」など、当時の説話集を原作に、作り上げた舞台らしいが、観客を気持ちよく寝かせてはいけない。引き込まれる舞台や面白い舞台を観ている観客は寝ないものだ。3人のおじいさんが寝ていたしワタクシの隣に座った白髪のおじいさんは、すっかり気持ちよく寝入っていた。後に声をかけられて知り合いだと判明したが・・笑


学芸会レベルのお芝居。







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公演期間 2013/03/16(土) ~ 2013/03/17(日)
会場 東京芸術劇場 プレイハウス
出演 椿千代、平野進一、ほか
脚演出 栗城宏、安達和平
料金 4,000円 ~ 6,000円
サイト http://www.warabi.jp/tono/top.html


岩手県遠野地方に伝わる民間伝承を題材にした柳田國男の「遠野物語」の世界を新作歌舞劇で描いた舞台。津波に遭い舟を失った福二は仕事を探して故郷を出るが、山の中でもののけ達に次々と襲われる。間一髪のところを助けたのは神隠しにあい山に住んでいるおひで。福二はおひでのお蔭で山を脱出し遠野の里へたどり着くと、座敷わらしや河童、そして彼らと心を通わせて生きている遠野の里人と出会う。この世とあの世が交錯する不思議な光景に少しずつ心を解きほぐしていく福二だったが彼の心には消し去れない心の痛みがあった。それは妻との別れであった 。


しかし、里人たちと触れ合いながら彼らの逞しくどこか大らかに、妖怪や神様の存在を借りながら生きる姿勢を見つめて、福二はあらためて思うのだった。思い通りにならなかった事も受け入れて、明日に向かってまた歩み出さなければいけないと・・。福二の心の迷いを解き放つ、成長物語。


序盤で魅せる舞台セットが美しい。また妖艶な女性の美しい舞にも魅了された。元々、民話は好きなので数人の座敷わらしが登場した場面ではワクワクした。また福二を巻き込んで遊ぶ座敷わらしの歌や踊りが可愛らしく、一方でどこか不思議な光景を垣間見たように感じられた。彼女らのリズミカルな踊りや透き通る声で歌う妖歌は山間で開かれる妖怪たちの宴にも似ためくるめく童女世界。とても神秘的な香りが放たれ、オモチロイ。観ているワタクシは心が満たされ一杯になってパチンと弾けそうになった。笑


そして銀杏の葉っぱをさかさにしたような形のオカッパ頭のてっぺんで髪を結んでいる、わらし達はずっと遊びほうけて夜が来ないようにも思われた。
きゃっ、なんて素敵。
思えばこのシーンが一番好きだった。


そして勿論、キャストらの演技力と声量にも魅了される。全体的に衣装、演出、音響、全てにおいて秀逸な舞台だった。スタッフワークも完璧。エネルギー溢れる舞踊詩の舞台


しか~し、第二部 舞踊集「故郷」 は東北の民俗芸能で「海の唄」「花の舞」「念仏踊り」「虎舞」「喜び舞」と中国雑技団のような踊りばかりだったので好みではなかったのが残念。
次回は芝居だけの公演を観たい。






みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2013/03/09(土) ~ 2013/03/17(日)
会場 OFF OFFシアター
脚本 アダチヒロキ、脚本補助石川智海
演出 アダチヒロキ
料金 1,000円 ~ 3,000円
サイト http://tokyobanbi.p2.bindsite.jp/index.html

未だに劇団名が決まらない元・劇団東京バンビ!今回はそのまんま、「元・劇団東京バンビ」として、公演していたから、もう、そのままでいいんじゃね?とか思う。苦笑!
でもって今回の舞台はゆる~いコメディ。アダチが演じるホストがナビ役で、とあるカフェで巻き起こる群像コメディだった。


しか~し、コメディとしてのパンチがちょっと弱かったのが難。序盤の出だしのアダチの喋りは良かったものの、中盤で中だるみし、後半では得意の下ネタというか、エッチなほうの下ネタではなく、臭いほうの下ネタで笑いを取りにいくも、石川の演技力があまりにもリアルで臭いまでPU~ん!!と漂ってきそうで笑うに笑えないというさま。(^^;)


多種多様のキャラクターの立ち上がりは興味深かったけれど、ぶっ飛んだ展開はなかったなぁ。まあ、アダチとはやし大輔を観られただけで嬉しかったから、物語は次回に期待ということで・・。







みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2013/03/14(木) ~ 2013/03/17(日)
会場 王子小劇場
作曲 中島とくあき
脚本 重信臣聡
演出 土井宏晃
料金 1円 ~ 4,000円
サイト http://fuuunkabocha.yokochou.com/


一遍は1239年、伊予国の豪族、別府通広(出家して如仏)の第2子として生まれる。幼名は松寿丸。有力御家人であった本家の河野氏は、後に没落、一遍が生まれた頃にはかつての勢いを失っていた。10歳のとき母が死ぬ(異母兄に殺される)と父の勧めで天台宗継教寺で出家、法名は随縁。 13歳になると大宰府に移り、法然の孫弟子に当たる聖達の下で10年以上にわたり浄土宗西山義を学ぶ。この時の法名は智真。


25歳の時に父の死をきっかけに還俗して伊予に帰るが、一族の所領争いなどが原因で、32歳で再び出家、信濃の善光寺や伊予国の窪寺、同国の岩屋寺で修行して、十一不二の偈を感得する。さらに、各地を行脚するうち、信濃国で踊り念仏を始めた。踊り念仏は尊敬してやまない市聖空也に倣ったものといい、沙弥教信にも傾倒していた。


これらをミュージカル化した舞台。意外にも本格的な和製ミュージカルで、歌も抜群だった。特に菅本生の声量は物凄い。劇団四季みたい。またオリジナルの楽曲もテンポが良く何度も導入されていたが、これらのタイミングも抜群だった。ミュージカルとしてはレベルは高いように感じた。


ただ、ワタクシの観た回はキャストらがセリフをよく噛んでいた。生身の人間だから仕方のない事だとは理解しつつも、セリフ噛みが目立つ度に、現実に引き戻され、そこが残念だった。また一遍役の菅本は苦しい表情、特に実母が死んだとの知らせを受けた場面での表情には、特に悲しみが漂っておらず、そこが不満だった。泣き叫ぶとか、絶叫するとかの身体全体の悲しみが感じられず、物語のクライマックスに感情移入が出来なかった。


泣いたけど。苦笑!


観劇者の中には、「こんな小さな箱なのだからマイクは必要ない」と言っていたが、それは違う。ミュージカルを見慣れてない観客はそういうが、ミュージカルの場合、どんな小さな箱でもマイクは付けるのだ。そうしないと小屋全体に声が届かない。なによりも歌ってる本人にデュエットしている相手の声が届かない場合だってある。自分の耳が拾う音は間近から拾っていくからだ。だからマイクは絶対に必要。


また疑問が残ったのが一遍と念仏房の別れの場面だ。なぜここまで、ずっと一緒だった念仏房が一遍と別れなければならなかったのかが、イマイチ、ぴんとこなかった。「もう付いていけない」との言葉を吐いた念仏房だったのだが・・。


今回、特に素晴らしかったのは演出だ。王子小劇場の階段から、トイレに至るまで、灯篭を置き、また小物の演出など見事な心遣いだった。これは小道具さんの担当なのかしら?また音響が素晴らしい。スタッフワークも的確で、気持ちよく観劇できたのは言うまでもない。役者を支えるスタッフが秀逸でした。


次回は4月27~29日までシアター711で「一遍~地演出編~」を公演する。観なきゃでしょ。






公演期間 2013/03/14(木) ~ 2013/03/24(日)
会場 シアターグリーン BIG TREE THEATER
脚本 坪田文
演出 大岩美智子
料金 7,000円 ~ 7,300円
サイト http://www.helloproject.com/event/130130_butai_cute_sakura.html

シアターグリーン史上初の三館同時演劇。 最近、こういった催しが流行りなのか、記憶に新しいのは、下北沢の楽園と劇小劇場、本多劇場での同時演劇が終わったばかり。考えてみたら、チケット代は館ごとに支払うわけだから、商業的に美味しいのだろうか?


今回は ℃-ute主演・劇団ゲキハロ特別公演として、シアターグリーンの大・中・小の3つの劇場が、教室、生徒会室、部室となり、℃-uteの5人(矢島舞美/中島早貴/鈴木愛理/岡井千聖/萩原舞)が行ったり来たりしながら、女子高、卒業式、先生との恋話、悩みなどを組み入れながら桜が見える教室で織りなされるキュンとするストーリーでした。


ワタクシが観たのはBIG TREE THEATER(教室)でメイン出演するのは℃-ute鈴木愛理、岡井千聖、萩原舞でテーマは「友情」!ちなみにBOX in BOX THEATER(生徒会室)のメイン出演者は矢島舞美、こちらは「恋」。そしてBASE THEATER(部室)のメインは中島早貴。ゲキハロヲタの話ではBASE THEATER(部室)バージョンが一番良かったとのこと。流石ヲタ、どれも2回ずつ観たらしい。


それぞれの劇場をベースにしながら、限られた移動時間で3つのステージをダッシュする℃-ute。ちなみに℃-uteの5人は全ての劇場に出演する。そして同じ時間帯の出来事なのに全く違ってみえるストーリー展開とのこと。


℃-uteのようなアイドル路線のギャル系の演技はどうなの?って一般観劇者は疑心暗鬼になるかもしれないけれど、これが中々、いい演技をするのです。アイドルも今や、可愛いだけじゃ、ご飯は食べられない時代なんですね~。


とある私立女子高の卒業式が終わり、謝恩会までの時間を過ごしている生徒たち。どの教室でも話題になっているのは卒業目前に退学した一人の女生徒の後藤あかりのことだった。彼女の退学には噂があった、A組担任の美術教師・井上との交際。あかりはりか、みちる、びび、えみ、めい達のグループだったにも関わらず彼女らに黙って学校に来なくなった。あかりを気にかけながらも心にその思いを閉じ込めたまま、残された5人が描くストーリー。


あかりの居ない教室でめいがあかりに語りかける場面で号泣!本人も鼻水垂らして泣いてた。苦笑! しかし、この迫真の演技でまたまたもらい泣き。更に友情に亀裂が走る場面の後、和解するシーンでも号泣。ワタクシの高校時代を思い起こしてシーンがダブり、またまた号泣。そんな場面を懐かしくもあり、ほのかな回想に心が揺れて、また泣けた。校歌を歌う場面でも泣き、とにかくよく涙が出た舞台だった。友達って何?というシンプルな疑問に悩みながらも成長していく少女たちのストーリー。


いやはや、℃ -ute、素晴らしい!!
次回も学園ドラマをやるようなら観たいなぁ。心が洗われる。






公演期間 2013/03/13(水) ~ 2013/03/17(日)
会場 全労済ホール/スペース・ゼロ
出演 姫崎愛未、太田基裕、ほか
脚演出 穴吹一朗
料金 5,800円 ~ 6,300円
サイト http://www.decca-pj.com/shinigamihime/


小野上明作、岸田メル画による人気ライトノベルの舞台化。「死神姫」という不吉なアダ名を持つ没落貴族の一人娘アリシアと、ツンデレな若き暴君カシュヴァーン、そして愉快な仲間たちが繰り広げる、おかしくも切ないラブコメディを、なんでもあり!の超エンタメコメディにしたもの。


メガネっ娘で平凡な少女・アリシア役を演じるのはアイドルユニット・LinQの姫崎愛未。次第にアリシアに心惹かれていく美貌の暴君・カシュヴァーン役には、テニミュや恋するブロードウェイ、BLEACH等数々の舞台で活躍の太田基裕。超イケメンで超カックイイ。


そして、おなじくテニミュに出演していた吉田大輝&福山聖二。阿部直生(翠組公演や聖闘士星矢)、新選組リアンの関義哉、NAKED BOYZの久保慶太、アキバ&池袋系超イケメン男装ユニット・AIZENNや、この舞台のために結成されたアイドルグループ sonrisa、ベテラン飛志津ゆかり&そのべ博之らががっちりと脇を固め、高木万平さんの特別出演も決定!さらにゲストで関智一(16・17日)も出演。


脚本・演出を手がけるのは「ドリームジャンボ宝ぶね」(脚本)や「ラ・カヌビエール 奇跡のディナー」(作・演出)等でもお馴染みの穴吹一朗。おもしろキャラクターによる「なんでもあり!」なお遊びにも大いに笑えた。


物語は農民たちが反乱を起こし貴族がその地位を追われる、そんな下克上の戦乱もようやく落ち着いてきた時代のシルディーン王国に始まる。没落貴族の娘アリシア・フェイトリンは叔父の口利きで家名目当ての貴族へ嫁ぐが、新郎は結婚式の最中に謎の死を遂げてしまう。それから1年、いつしか「死神姫」と呼ばれるようになってしまった彼女のもとに叔父が再び縁談を持ち込んできた。


相手は暴君と噂される振興貴族の公爵カシュヴァーン・ライセンだった。招かれるままにライセンの領地アズベルグにやってきたアリシアを待っていたのは、不気味な屋敷とカシュヴァーンの愛人を公言してはばからないメイド・ノーラ。そしてカシュヴァーンは初対面の自分の花嫁に対し「アナタの名を金で買った」と言い放ってしまうような男だった。しかしアリシアは周囲の予想を裏切り満面の笑みでこう返したのだ。


「お買い上げ、ありがとうございます!」


こうして夫婦の波乱と陰謀に満ちた夫婦生活が始まったのだったが、アリシアの純真爛漫な天然さに次第に惹かれていくカシュヴァーン。



舞台はこうした筋どおりに描かれていくも、ノーラこと滝川綾の暴れっぷりが凄い!まるでアニメを観ているようでもう、可笑しくて可笑しくて・・、結局薬局、このシーンが一番面白かった!笑
中盤頃にもショー的な催しがあって、全体的にアドリブ満載、キャストらに何かをやらせるという遊び心満点の超エンタメコメディでした。








みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2013/03/14(木) ~ 2013/03/20(水)
会場 座・高円寺1
脚演出 中津留章仁
料金 3,000円 ~ 4,000円
サイト http://www.lcp.jp/trash/next.html


東日本大震災、そして原発問題を扱った作品「背水の孤島」で2011年の演劇賞を総ナメにし、昨年の「狂おしき怠惰」「水無月の云々」で2年連続の読売演劇大賞優秀演出家賞受賞となった新進気鋭の劇作家・中津留章仁が率いる劇団トラッシュマスターズが[尖閣諸島問題]に切り込んだ新作舞台。


「来訪者」とは土地からみた人間どもってことなのだろうと思う。こういった考え方が中津留マジックの面白いところでもある。そして誰もが認識しながらも積極的にかかわることを躊躇してしまうような社会問題にメスを入れ、すばりと切り込むスタイルで具現化して舞台を作ってしまうところは流石。だから観ているこっちも、ノンフィクションを観ているような気になってくる。笑


小劇場の密な空間で展開する3時間、飽きることなく観られたのはやはり、映画的な演出スタイルと、キャストらの熱演、そしてがっつりと蠢く濃い世界観だからだ。物語はいつものように骨太な世界を描写する。


1幕目、在中国日本大使館での外交官、細貝大使、中国人大使秘書、中国人家政婦の情景から。ここで中国人家政婦・姜を演じた林田麻里の演技力が特に秀逸。まったくもって、中国人にしか見えない。一方で反日デモに参加する姜。中国人の反日感情が悪化する中(中国政府もそのように仕向ける)、大使館では中国人スパイ名簿の取引交渉を聞いた大使秘書が、スパイ名簿の漏えいは中国人の危機だと感じて、この秘密を中国側に売る。これを受けて細貝大使の妻が拘束され、細貝は日本に助けを求めるも、政府はこれを見捨て細貝は自害する。


2幕目への繋ぎ、場面転換(セットの入れ替え)、舞台前の白幕に状況説明として膨大な内容の骨太な物語が語られる。東シナ海の南西部にある無主の地をめぐって論争が起き、中国と日本は戦争に突入する。しかし諸外国がこれを仲裁し、この土地に両国人が住むことを許可される。実はこの部分が重要な部分で、観る者の魂を揺さぶる重厚な人間ドラマへの引き水な箇所だ。できたら、この説明をパンフレットで加筆して欲しいくらいだ。


2幕目、セットが入れ替わり、1幕目と反してのどかな海辺の島の風景。東シナ海の南西部にある無主の地だ。領土問題で再び争いが起きないようにと、そして中国人に占領されないようにと、かつての外交官たちが日本の国益を守るために、この島に居住する。そして日本人の数以上の中国人も居住する。ここで起こる恋愛沙汰を巻き込んだ人間臭いドラマを展開させる。終盤でみせる、岸元外交官と姜の結婚は、この土地での最初の中国人と日本人の結婚だが、いつか誕生する二世は、まさに領土の中和剤になるかもしれない。


土地を主軸にした壮大なドラマのように感じた。劇中、「武器も扱えない国家に平和を語る資格はない」といったセリフが放たれるが、印象深い言葉だ。

面白い。中津留作品はいつみても面白い。






みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2013/03/13(水) ~ 2013/03/17(日)
会場 上野ストアハウス
脚本 佐藤秀一(演劇ユニット3LDK)
演出 奥村拓
料金 4,200円 ~ 5,000円
サイト http://sorarine.com

同じ脚本を3人の演出家で上演!その第一弾として「typeA」を観劇。「3年B組金八先生」でデビュー、映像や舞台で活躍の永井友加里がたちあげた演劇ユニット「ソラリネ」。
そのソラリネの第六回公演は、1つの脚本を3人の演出家がそれぞれの解釈と演出で創り上げるというもの(TypeA,B,C)。


実はこういった同じ脚本を数人の演出家で上演するという企画を個人的にあまり好きではない。脚本が同じ物語を演出家が違えども、何度も観たい気がしないのだ。だから、ワタクシはこれ一回きりなので、投票による男女各一名ずつのMVP、最優秀ちーむ賞決定(結果発表はUstream配信!)には参加しない。


同窓会の案内が届き、彼らは久しぶりに母校へと訪れる。木下に埋めたタイムカプセルを掘り返すために僕らは再び集まったのだ。しかしその案内ハガキには差出人がなかった。そして教室に一番乗りした千夏。千夏は亡くなった大樹の妹だったが、どうにもこうにも行動や言動が18歳に見えない。まるで幼稚園児のようだ。知恵遅れなのだろうか?


そして大樹は彼らが高校生だった頃、大人たちに任せておけないとダム建設に抗議し、教室に立て篭もった最中に病気が悪化して亡くなったのだった。寂れた校舎の中で、全校生徒12人のうち11人は再会を果たす。一人足りない、同窓会だったが、ダム建設と闘ったあの頃の思い出と現在の彼らを交錯させながら、描いていく舞台だった。


埋めたはずのタイムカプセルの中身が不思議な手紙と摩り替えられている展開が気になる要素いっぱいの物語で、TypeAの演出は、テキスト重視を貫きながらの清新な解釈と空間を生かす演出には定評がある奥村拓。役者の着替えのシーンを舞台の隅っこで着替える演出は意外に新しくない。こういった演出の場面を最初に観たのは2~3年ほど前だろうか?その後、舞台上の着替えシーンは何度となく観ている。また、舞台上でキャストらが次の出待ちをするのはアゴラ劇場の得意技だ。


一方で、死んだ大樹がナビ役を勤めたが、意外にこれが説明を加筆する意味で良い効果を生んでいた。役者では恭介役の演技力がイマイチ。反対に田中悟役の寺山武志と高橋里菜/能條由宇の演技力が光ってた。個々の心に後悔の念と重荷を背負いながらも悲しくも狂おしい少年時代を描いた秀作だった。


そして導入音楽が絶妙!井上陽水の少年時代「夏が過ぎ 風あざみ・・・・」。










みさの小劇場ウオッチ日記

公演期間 2013/03/07(木) ~ 2013/03/12(火)
会場 サイスタジオコモネAスタジオ
脚本 山谷典子
演出 小笠原響
料金 2,500円 ~ 3,500円
サイト http://www.canonkikaku.com/blog/information/post-234.html

歴史博物館に毎日現れる初老の男・静雄を主軸に、少年時代(昭和21年、20年頃)の自分と現在を交錯させながら両親との関係を描いた物語。当時の少年の母・ふみは父の妾であり、複雑な環境にあった。静雄の父である隆は放送局に勤務し、京子という妻がいながら、その一方でふみとの間に静雄を作っていたのである。やがて空襲の最中、静雄を庇い泡沫のように消えた母・ふみ。


その後、ふみは父の妾だったことを知る静雄。そして父が話す放送の内容は戦争に加担したものだった。時代とはいえ、そんな父に反感を抱いた静雄は父のように生きたくないと切に思い、静雄は化学者となる。しかし原子力発電に関わる化学者も、市議会や国という大きな壁にぶつかり翻弄されるのであった。


現在、静雄はあの頃の父と同じ年齢になって、父と同じ道を歩いてきたのではないか。 核の平和利用を信じ、原始力学を学んだものの、見えない巨大なものの思惑に誘引されているのではないか・・。と思うのである。


こうして、静雄はあの頃の爪跡を知りたくて毎日、歴史博物館にやってくるのであった。

戦争と原発、親と子、妻と愛人、生と死を当時から現代に絡ませながら美しくも儚い物語として映し出していた。海辺で過ごした親子の風景、赤海ガメの産卵のようす、竜宮城のくだり、そして亡くなった後も、見守るかのように時折、現れるふみの存在。失ったものは時として美しくなりながら、優しさに満たされていた。


戦後に生きる人々の暮らしや、動向も描きながらも全体的に繊細に表現していたと思う。舞台は完成度が高く、役者陣の演技力も秀逸だった。文学座の藤堂陽子がカミながらも老婆役をきっちりと。いつも思う事だがそれなりに加齢した役者が役柄に近い年齢で演じるのは違和感がなく、まっすぐに心に入ってくる。


今でも静雄の中に生き続ける泡沫(うたかた)のように消えた母を思う気持ちや、自分の人生を噛みしめるような、しっとりした物語だった。素晴らしい。9人の演者でこれだけの時代風景を映し出していたのには脚本の力とキャストの力、演出の力が大きいと思う。感動に値する作品でした。満足!