シアターグリーン参加作品。


池田屋事件を題材にした花火師の物語でしたが、池田屋事件を扱う劇団が多い為、物語に斬新さはなく、返って荒が見えてしまうという課題が残りました。物語も雑でしたが、キャストが若かった為、重厚性に欠け、その時代の真剣さや、自らの命を懸けても日本の夜明けを夢見る獅子の震えが感じられませんでした。

また無理に笑いを誘おうとした為か、池田屋事件が薄っぺらに感じてしまったのも難点でした。そうはいっても、阿部首相の被り物には笑いましたし、所作も面白かったです。この舞台でディスコルームにする必要性も感じられず、むしろ、シリアスな展開を狙ってストレートな舞台にした方が真っ直ぐに観客の心に響いたかもしれません。

終盤でみせたアサヒが、もうこの世の人ではないという設定でありながら、カンダがアサヒに代わって花火を打ち上げたシーンは、アサヒの執念を彷彿させる場面で素敵でした。
一方で人切りモガミを演じた田中しげ美の演技力が群を抜いて素晴らしかったです。また殺陣シーンでも他を圧倒させる雰囲気があり、独特のオーラを醸し出していました。役者の中には殺陣シーンで、いかにもヘタそうな刀使いだった為に、一気に現実世界に戻された事もありました。

こういった時代劇、特に新撰組が絡む芝居はやはり、もっと殺陣を練習して欲しいと思います。キャストでは田中しげ美は勿論ですが、アサヒを演じた板倉光隆が役のキャラクターを身にまとい、きっちりと演じていました。

新撰組の要であるオキツの剣が弱々しかったのがひじょうに残念でした。また、あそこまで太刀廻りの素晴らしいモガミが、あっけなく切られるのが、なんとも納得出来ず、もやもやしたものが残りました。
照明、音響、美術、衣装等は良かったと思います。接客スタッフも気持ちの良い対応でしたが、終演後、狭いロビーで役者さんたちと知り合いの観客がおしゃべりに昂じて他の観客が通れない情景は頂けませんでした。劇場内でやって欲しかったです。制作さんが配慮がなかったように感じました。