グリーンフェスが終了したので制限されてUP出来なかった公演をUPします。

前評判に劣らず、活気に溢れ、スピード感のある作品でした。テーマをマラソンに絞り、走ることを中心に話が展開するので、ブレがなく、筋が通っていると思いました。また、箱根駅伝を思い出して、爽やかな空気を感じました。

舞台装置が幻想的で、死後の世界や病院という設定によく合っていました。段差を降りるときに足音がしないようにしているのが良かったです。また登場するキャラクターの立ち上がりも見事で、疾走する太郎役に、昨年末にイケメン俳優ユニット・ネイキッドボーイズを卒業したばかりの与那嶺圭太を起用したのは見応えがあったと感じました。特にイケメンというのは、それだけで爽やかな風が吹いているように感じました。

また、死神や悪魔、閻魔様や神様、巫女ちゃんなどの登場により、あの世の世界の賑やかさも、この世と変わらず、親近感を感じました。特にくまちゃん(悪魔こと鈴木眞実)の髪形には笑えました。鈴木眞実のメリハリのある演技力も秀逸でした。物語の構成も輪廻レースで命の取引をする場面は、まさに死神と取引する人間の描写で解りやすく、かつ、結果も想定内でしたが、そこまで行く道のりに、転生や、輪廻の輪っかなどを盛り込み、加味したのは楽しかったです。

終盤にかけて、くまちゃんが太郎とめがねくんを乗せたバイクでぶっちぎる様子は爽快でなんとも楽しい時間でした。このハイテンションな場面と反転して、太郎が愛する花子のアリアの説明(愛しい人よ信じてください。私は貴方なしでは生きられません)では落涙し、更に、花子の儚げな余韻に酔いしれました。なんとも言えない切ない苦しさや胸を衝く想いで、太郎は花子に自分の命を譲り、残りの人生をも差し出すことを決意する場面では、真実の愛に触れたような気がして、今まで以上に感動しました。

一方で心臓の弱い花子が「太郎の走っている姿を見ているのが幸せだ、自分も走っているような気持ちになれる。」と言うのを聞いた太郎は生き返って現世に戻りランナーとして走り続ける事にした展開は、生死と向き合う人間賛歌のような場面で、死という重いテーマに対して暗くならず生きることを目的にした意欲作だと感じました。

人生と言う名のレース、そのゴールを迎えた後もなお走ることを選んだ男の物語は、ちょっとコミカルに描写され、そして悲しい場面も存分にみせ、相反する想いのバランスが絶妙でした。

脚本と演出はお見事。特に演出ではダンス&アクションシーンがてんこ盛りで泣き笑いの多い楽しいエンタメステージでした。一方で、演技力ですが、上手い役者と硬い表情の役者の差が目立ちました。照明、音響、美術、衣装等は抜群でした。しかしながら、接客スタッフの一部に横柄な方がいらして、それが残念でした。