みさの小劇場ウオッチ日記

公演 期間 2013/03/20(水) ~ 2013/03/24(日)
会場 「劇」小劇場
脚本 マーティン・マクドナー
演出 小川絵梨子
料金 2,500円 ~ 4,500円
サイト http://www.nato.jp/profile/2013/image/pillowman1303.pdf


むかしあるところにピローマンという男がいました。身長が3メートルくらいで、全身がたくさんのふわふわしたピンクの枕でできていました。腕も足も胴も指も枕でできていて、頭はひとつの円形の枕でした。そこにはボタンの目が二つと、いつも笑っている口が一つ。
笑っている口から覗いている歯は小さな白い枕でした。
ピローマンは優しく無害に見えなければなりませんでした。というのはピローマンの仕事はとても悲しく大変なものだったのです。
誰かがひどく辛い思いばかりしていて、その人生を終らせたくなってしまった時、ピローマンがやってきて、その人の横に座り、やさしく抱きしめて「ちょっと待っててね」と言うのです。するとあら不思議、その人はまだ人生の苦しみや悲しみを知る前、少年少女の頃に戻っていくのです。ピローマンの仕事は、彼らがその後に味わう長年の苦しみを避ける為に、少年や少女のうちに自殺させてあげることでした・・・・


マーティン・マクドナーの代表作であるピローマン。不気味な戦慄感が伝わってくる寓話だ。

ただでさえ可哀想な子どもが、さらに可哀想なことになってしまう童話ばかりを書いている作家カトゥリアンの身辺で、童話を模倣した殺人事件が次々に起きる。作家はものすごく胡散臭い二人の刑事、トゥポルスキとアリエルの取り調べを受けるが、その過程は殆ど漫画である。トゥポルスキは、すぐに拳銃をぶっ放すし、アリエルのほうは徹底して道化ぶりを示す。


この時、作家の過去ばかりか、二人の刑事の素顔、そして知的障害のカトゥリアンの兄ミハイルをめぐる驚愕の秘密が明らかになっていく。2人の刑事の滑稽さに比べ、 クールで批評精神に富んだ、過激なまでのブラック・コメディとして描かれているが、残酷と捉える観客も少なくないかもしれない。しかし現実問題として世界各地で無残なことが起きている以上、案外、この物語は虚構とばかり言っていられない気もする。


真摯な文学者なのか、ただのいっちゃってるやつなのかよくわからない作家カトゥリアン。脳に障害を持ち、天真爛漫なのか邪悪なのかよくわからない兄ミハイル。この二人を取り調べる漫画ちっくな2人の刑事。超過激問題作「ピローマン」。不穏当すぎて笑わずにはいられない現在を映す鏡のような舞台だった。


これほどの重いテーマをアニメチックに仕上げ軽快なパフォーマンスに仕上げたのは良かったと思う。ただ作家カトゥリアン役の役者が花粉症なのか、鼻水を垂らしながらよく噛んでいた。苦笑! そのたびに、ワタクシはその世界と現実を行ったり来たりしなくちゃならなかった。演出面では不気味な電気音や叫び声、カーテンの向こう側の世界、吊り下げられた人形など、見せ方や観客の想像力をかきたてる演出は見事だったと思う。


そして座席だが、入口の反対側2列目の指定席だった。前列との段差がまったくなくて、やたら座高の高い大男が前に座ったものだから見辛いのなんのって。もうちょっと段差をつけて設置して欲しい。次回の課題ですな。